ふわふわな日記

『彼女、お借りします』161話 感想:千鶴は一体何に葛藤し、その壁をどう乗り越えていくのか

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彼女、お借りします 161話 感想

彼女、お借りします 161話(最新話)感想 ネタバレ注意

 

千鶴と和也の一日デートを主題とした「彼女と彼氏」編も今回でついに5話目。

 

前回はオシャレなお店でランチを食べてから食後の運動に「ボルダリングへ....という流れでお話が進んでいましたが、(和也のアレな妄想描写はともかく...)肝心の千鶴も思った以上に今日という日を楽しむことができていたようで、序盤は凄く良い雰囲気の2人が描かれていました。

 

千鶴から2人で柔軟をしないかと誘い、和也の助言によって今までクリアできなかった高さの壁(このやり取りも2人の未来を考えれば非常にメッセージ性を感じますね)を千鶴が乗り越えていく。そして極めつけのハイタッチ。誰がどう見ても実に良好な関係が見て取れたことでしょう。

 

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壁を乗り越え、笑顔でハイタッチ(第161話より)

 

 

......が、そんな楽しい時間の裏側には未だ表面化していない「千鶴の葛藤」がある。

 

レンタル彼女・水原千鶴として、そして一人の少女・一ノ瀬ちづるとして...。彼女が一体何に思い悩み、その壁をどう乗り越えていくのか。今回はそのあたりを軸にした感想となります。

 

 

 

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『彼女、お借りします』161話 :彼女と彼氏⑤

 

さて。前回の感想でも書きましたが、今回の長編デートではいつも以上に千鶴に対する和也の気持ちが前面に押し出された形でお話が描かれています。

 

和也の目的はあくまでも彼女を励ますことであり、彼女の力になること。レンタルをして千鶴を呼び出すという方法の是非はさておき、和也の純粋な気持ちに偽りはありません。

 

 

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和也の気持ち(第161話より)

 

そんな和也の想いは既に千鶴も感じ取っている通り。

 

いつものデートとは明らかに違う状況である以上、気を遣われているだろうことは嫌でも察しがつく。.......と同時におそらく千鶴は和也から寄せられている"好意"に半ば気付いてもいる。

 

人の気持ちはそんな簡単なものではない。「嘘」だからと「レンタル」だからと頭で割り切って全てに線を引くことなんてできない。人と人の関係.......そこにある本当の気持ちは「演技」とか「役」とかそういう物差しだけで定義付けして縛り付けられるものではないから。

 

女優としての「水原千鶴」の生き方に憧れて、小百合おばあちゃんのため....そして千鶴の夢のために和也が頑張ってきたことは疑いようもない。けれど、こと「恋愛」においては別のところにも本質がある。なぜそこまでして和也は頑張ってくれたのか。どうして...?何のために....?それを考えれば自ずと答えが出てくる。

 

「好き」だから。彼女の幸せを心から願いそのためならどんな行動も惜しまない。今はまだ「家族」でもないただの隣人の彼が彼女のためにそこまで頑張れるのは本当の意味で一ノ瀬ちづるに惹かれてしまったからだよ。

 

 

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本当の彼女/本当の彼氏(第122話より)

 

そして、それはやはり千鶴自身も半ば気が付いているはずなんだ。

 

第122話で八重森さんとその話を交わした時から、あるいはもっと前から「彼女と彼氏」という関係を意識しないわけにはいかなかった。

 

それでも彼女が和也との間に「一定の距離」を置こうとしてしまう一因としては、彼女の目指すところが「女優」だからという部分がやはり大きいのかもしれない。

 

「弱い自分」を覆い隠すために「強い自分」という鉄の鎧を身に纏う。幼いころに両親を失い、大好きだった祖父さえも他界してしまった。そんな境遇にいた千鶴が現実に負けず前向きに生きていくには「鉄の鎧」が必要だったのだと思う。

 

 

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弱い自分(第58話より)

 

そう考えると、「寂しくない人なんていないのよ  隠せる人が多いだけ  皆 心に空いた穴を"仕事"とか"恋人”とかで埋めてるのよ」という台詞を千鶴自身に言わせていることには間違いなく意味があるはず。

 

大好きだったおじいちゃんとの「約束」を守り、女優という「夢」を叶えることがちづるの生きる原動力だった。これまでの彼女はあらゆる寂しさをその強い目標意識(=要するに"仕事")を糧にして覆い隠してきた。

 

でも、小百合おばあさんはそんなちづるの脆さ(内側にある弱さ)をひどく心配していたし、それゆえに自身の不甲斐なさを自覚して他者に寄り添える和也のことを人としてもちづるのパートナーとしても信頼していた。

 

人は誰しも完璧ではなく、時に迷い失敗もする。けれど、その「不完全さ」こそが人間らしさなんだよね。意思や感情を持っているからこそ人は無駄に空回りをしたり、不要な衝突を繰り返したりする。人間というのはどうしようもなくそういう生き物で、だからこそ自分の弱さを受け入れてそれでも幸せになりたいと立ち上がれることが強さなんだよ。そういう積み重ねを人は「人生」と呼ぶのだから。

 

最近の千鶴と和也の関係性を見ていると、初期に受けていた印象とは違い、『かのかり』は泥臭くも人間らしい恋愛物語を描こうとしているのかなと感じました。

 

 

「弱さ」も「強さ」も受け止めて支え合う関係

 

....という状況整理はここまでにして今週のお話の続きです。

 

ボルダリングで楽しい時間を共有し、そのまま良い雰囲気で夕食を迎えることになろうかというこのタイミングで、偶然にもおばあちゃんに連れられた孫娘の姿が千鶴の目に飛び込んでくる。

 

 

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心に残る寂しさ(第161話より)


なるほど。確かに千鶴にとってもこのデートは心から楽しいと思える時間ではあった。そうでなければ、仮にも体が密着するような柔軟体操を一緒にしようなんて千鶴の方から言い出すわけがないし、千鶴としても和也からの"気遣い"を受け入れる形で全力で楽しんでいたはずだった。

 

けれど、心の奥底にはやはり未だ拭えない「寂しさ」が当然ある。だからこそ、通りかかった祖母と孫娘の姿に自分の過去と境遇が重なってしまったんだよね。

 

小百合おばあちゃんのような「立派な女優になる」という夢。約束。原点。未だ果たせていないその遠い目標と、憧れの女優でありたった一人の肉親でもあった祖母を亡くした寂寥感が千鶴の心にどう影響をもたらすのか。

 

先々週から今週にかけて千鶴の心情についてはあれこれ書いてきたつもりだけれど、もしかしたら今の千鶴は、強い自分であるために和也の優しさに甘えることを良しとできないのかもしれない。

 

和也の優しさに触れれば触れるほど、彼に寄りかかってしまいたくなる自分(の弱さと千鶴は思っている)が嫌になる。だから、また「鉄の鎧」を身に纏おうとしている。和也の存在が彼女の中で日に日に大きくなってしまっているからこそ「距離」を取らないといけない。そんな千鶴の心理状態が今回の描写から読み取れるのかもしれない。

 

 

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千鶴の葛藤と2人の距離....(第161話より)

 

「強い自分」であるために。

 

また少し空いてしまった2人の「距離」はそんな彼女の想いの表れなのか。いずれにしても、千鶴が弱い自分を受け入れて支え合って生きていく関係を肯定していけるかどうかが今後のお話を左右する鍵となるのでしょうね。
 

恋愛感情というままならない気持ちに正面から向き合い、人と人との関係をきちんと育むこと。そんな人生経験を経て、和也というパートナーと共に歩む未来を掴んだその時こそ、ちづるは小百合おばあちゃんのような「立派な女優」になっていけるのではないかと、そんなことを感じた第161話のお話でした。次週も楽しみにしております。

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『彼女、お借りします』/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。

『彼女、お借りします』160話 感想:不器用な僕×強がりな君。運命だって信じたい今数センチ近づいてもいいかな

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彼女、お借りします 160話 感想

『彼女、お借りします』 最新話 感想 ネタバレ注意

水原さんを励ます目的で和也が企画したバイト代全額投資の一日デート。

 

服屋での洋服プレゼントから始まり、彼女の好みを下調べしたうえで映画館デートをプランニングしてみせるなど、ここまでのデートでは和也の彼女に対する想いや真っすぐな姿勢が"ありのまま"に描かれてきました。

 

水原にはいつだって笑顔でいてほしいし、幸せでいてほしい。どうしたら彼女が楽しんでくれて、どうしたら元気になってくれるのか。そんな一途な想いが巡るデートの中で

 

 

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気付いた気持ち(第159話より)

でも水原が楽しそうにしてると 俺がめちゃくちゃ幸せで

純粋に君だけを楽しませるなんて

無理なんじゃないかって思えてきたよ

 

という感情に和也は気が付いた。

 

一つのロウソクの火がもう一つのロウソクに触れて2つの灯りを共有できるように、心から大切だと思える人の幸せが自分の心にも幸せの火を灯していく。この感情の芽生えこそが、ひとりの人間として....そしてひとりの女性を幸せにする男としての和也の成長だと感じられる。先週のお話はそんな印象を受けた内容だったように思います。

 

 

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『彼女、お借りします』160話 :彼女と彼氏④

 

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水原千鶴の気持ちは?(第160話より)

 

一方、じゃあ肝心の千鶴の気持ちはどうなのか。

 

ここまでのお話を真っ当に読むと、千鶴が和也のことを(恋愛対象として)気にかけているだろうことはさすがに疑う余地もないでしょう。

 

もし仮に何にも思うところがないなら127話で海くんに気持ちを問われて「好きじゃなくもない」なんて答えるはずもないでしょうし、そもそも読者の声を代弁する存在としての八重森さんに「"好き"に決まってるじゃないですか 水原さんも師匠のこと」なんて台詞を言わせる物語的意義がどこにもない。

 

確かに始まりは「借り物」の関係だった2人。でも、和也がいなければ千鶴は自身の原点でもある「約束」「夢」を諦めてしまっていた可能性が高く、和也もまた千鶴と出会わなければ誰かのためにこれほど一生懸命頑張れる人には多分なれなかった。

 

そういう意味でも、もうお互いがお互いにとって代わりなんていないほど"特別"な存在になっているわけですよ。

 

なのに、「嘘」と「真実」の境界(小百合おばあちゃんの病室で泣きながら言っていた「私もうっ わからないの…!何が正しくて何が間違ってるのか…」という台詞が今の彼女の本心だと思います)で戸惑う千鶴は、和也からの"好意"を恋愛的ニュアンスで受け取らないよう振る舞っている。

 

どうしてそうしてしまうのかを千鶴の心情ベースで考えると、

 

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素直になれない気持ち(第139話より)

①:瑠夏ちゃんや麻美ちゃんの存在(外的要因)

②:レンタル関係を越えた「自分の気持ち」を素直に容認できていない(内的要因)

 

おそらくはこの2点が要因。

 

千鶴からすれば、状況的な問題があったとはいえ瑠夏ちゃんと付き合うよう勧めてしまった張本人でもあるし、そもそも和也が自分を「レンタル」するきっかけとなった元カノ・麻美ちゃんとの問題も完全に解消されたわけではない。

 

もちろんこれらの外的要因は「②:自分の気持ちに素直になること(内的要因)」さえ出来れば当人同士の気持ち次第でどうとでもなる問題ではあるんだけれど、根が真面目な千鶴としては、こうしたことを一つ一つ整理していかないと納得することができないのかもしれない。

 

入口が「嘘」から始まっているからこそ、自身の気持ちが「本物」であることを認めるのは千鶴の性格からするとそう容易くはないだろうから。

 

 

 

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あと数センチの距離(第160話より)

 

そしてもう一点、親を早くに亡くして祖父母に育てられた……という生い立ちの影響もあるのか、「誰かを頼りにすること」に慣れていなくてとりあえず人と距離を置こうとしてしまうきらいが千鶴にはある。

 

千鶴と和也が共に作った映画(タイトル:「群青の星座」)のワンシーンに「星座の魅力は孤独の集合体である所」という台詞が挿まれていたけれど、あれはまさしく今の千鶴の境遇(と和也との関係)を示唆したものでもあったわけですからね。

 

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星座は孤独の集合体(第149話より)

 

大切な「家族」を失い、寄り添う者がいなくなってしまった千鶴。

 

けれど、そんな「孤独な星」に寄り添って一緒に「星座」を作ってくれる人が彼女の傍にはいる。

 

独りで抱え込む強がりな千鶴の性格を小百合さんはずっと心配していたけれど、千鶴のことを「一生支えていきたい」と言ってくれた人が現れてくれた。

 

だからこそ、小百合さんは千鶴のことを和也に託して亡くなっていったわけですし、やっぱり個人的にはこれからの和也がその期待に応えられるだけの男になっていくのかどうかをきちんと作品の中で表現してほしいなとも思っています。

 

 

あと数センチの距離を埋める不器用な僕と強がりな君のデート

 

さて。そんな物語の文脈を紐解くと、やっぱりこの長編デート回は2人の間にある「あと数センチ」の距離を埋めるとても重要なお話が展開されていくのでしょうか。

 

 

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あと何センチ近づけば....(第160話より)

 

たった一人の大切な「家族」を失った千鶴の悲しみ。

 

覚悟はしていたと気丈に振る舞ってはいても、辛くないなんてことは当然ながらありえない。

 

「変に気を遣わなくていい」「あなたには十分してもらった」「これ以上は悪い」とあくまでも一線を引こうとしてきた千鶴だけれど、『だとしても!俺がそうしたいんだ......っ!』という偽りのないストレートな気持ちを和也から伝えられて、彼女の「本心」は一体どう感じたのか。

 

 

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千鶴の内なる気持ち(第160話より)

 

「彼女」と「彼氏」。

 

水原千鶴の鎧をまとった〈一ノ瀬ちづる〉が、レンタル彼女としてではない自身の気持ちを認めることができるのか。

 

そして、このデートの末に「不器用な僕」と「強がりな君」の関係がどう変わっているのか。来週のお話にも期待しております。

 

 

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『彼女、お借りします』/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。

『彼女、お借りします』 感想:その"嘘"はたった一つの"真実"を表現するために。なぜ和也は千鶴に相応しいのか

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彼女、お借りします 159話 感想

 

 

久しぶりに『かのかり』最新話の感想です。

 

最近は色々と忙しくてブログの更新も出来ずじまいの状況が続いていましたが、ここ数週に渡る『かのかり』の展開にはちょっと思うところがあり、作品的にも中々に佳境と言えそうなお話を描いているように感じたので、個人的な振り返りも兼ねて一度感想をまとめておこうかと思います。

 

例によって原作最新話までのネタバレが多分に含まれた感想になるため、未読の方は十分にお気をつけください。

 

 

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『彼女、お借りします』感想:一ノ瀬ちづるの過去と夢

 

というわけで、まずは最初におさらいから。

 

これまでのお話を簡単に整理してみると、物語の重要なポイントとして描かれていたのは、

 

①:一ノ瀬ちづるの生い立ちと夢について

②:映画制作と小百合おばあさんの想いについて

 

の2点です。

 

幼いころに両親と別れ、祖父母の元で育てられてきたちづる。そんな彼女が中学3年生のとある日、天才的な女優であった小百合おばあちゃんの若かりし頃の演技を見たことで、自分も「おばあちゃんのような凄い女優になりたい」と強く思うようになる。

 

 

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ちづるの夢(第100話より)

 

心からの"憧れ"と初めて見つけた将来の"夢"

 

当然、女優になることが簡単な道でないことは中学生ながらに理解している。掛かるお金も努力も並大抵のものではないし、つらいことだってたくさんある。

 

でも、かつてのおばあちゃんがそうであったように、銀幕の中で立派に演技をしている自分の姿をおじいちゃんとおばあちゃんに見てほしいと思った。

 

「願えば夢は必ず叶う」。おじいちゃんのその言葉が彼女の道しるべとなり、絶対に立派な映画女優になってみせると誓って、ちづるはおじいちゃんと『約束』を交わすことに.....。

 

 

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おじいちゃんの死 /「願えば夢は必ず叶う」(第101話より)

 

が、そんな折に訪れたのがあまりにも突然すぎるおじいちゃんの死。

 

正直に言って、とても心を抉られる重い展開になったなと思ったんですよね。孫との約束を守れぬままに亡くなっていったおじいちゃんの計り知れない無念はもちろんだけれど、夢を叶えるために懸命に走り出していたちづるの心情を思うと、この「突然のお別れ」はいくらなんでも辛すぎる。

 

以前の感想で、「水原さんは演者としてのペルソナを被っているように見えて人となりが追いづらい」という趣旨の文章を書いていたのですが、このお話を読んで凄く納得したというか、彼女に対する印象が180度変わったのはこの瞬間からでした。

 

彼女の原点と軸はこの過去の出来事にあって、「願えば夢は必ず叶う」という祖父の教えを"嘘"にしないために、そして、祖母の小百合さんに立派な女優になった姿を見せるために、ちづるはずっと夢に向かって走り続けていた。

 

レンタル彼女をやっている理由もすべては「女優になる」という夢を叶えるためで、そこには金銭的な割の良さだけではない、自身の"演技"向上という明確な目的(リアリティラインの追求は人それぞれですが僕は物語としてちづるの考えは一貫していると思っています)があった。

 

100話目付近にしてようやく「レンタル彼女・水原千鶴」ではない「一ノ瀬ちづる」というヒロインのパーソナリティがきちんと描かれたことで、この作品のコンセプトや目指しているゴールが少しずつ見えてきたのではないかなと、そんなことを思えたエピソードでした。

 

 

映画制作と小百合おばあさんの想い

 

そんなちづるの過去編に連なって描かれた次なる展開。それがクラウドファンディングを活用した映画制作編です。

 

「願えば夢は必ず叶う」というおじいちゃんの言葉を胸に刻み、いつか必ず思いは届くと信じて努力を続けてきた一ノ瀬ちづるのこれまで。

 

しかし、度重なるオーディションの落選を経験し、実力だけが全てではない「役を掴む」ということの現実的な難しさが彼女の心に迷いを生じさせる。

 

 

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現実と夢(第102話より)

 

どれだけ強く願い続けても叶わない夢はある。

 

きっと小百合おばあさんの容態があまり芳しくないことも、彼女の心を挫く大きな要因になっていたはずです。

 

たった一人の家族であり、目標とする憧れの存在であり、心の支えでもあった大好きなおばあちゃん。ちづるの境遇を考えれば、この世界には「夢」も「希望」もありはしないのだと悲観的に考えてしまうのも無理からぬこと。齢20歳の女の子がその身一つで受け止め切るには、彼女の人生はあまりにも不幸な出来事が多すぎたのだから。

 

 

 

 

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君をステージに立たせる(第103話より)

 

しかし、そんな残酷すぎる現実の中にあって、残された時間の短い小百合おばあさんに「水原」の演技を見せるのだと、彼女を主演にした映画を俺がプロデュースする!と言ってみせた和也は素直にカッコよかったなと思うのですよ。

 

無論、主人公としての和也には甘いところがたくさんあるうえに、いい加減で見栄っ張りで男目線で読んでもどうしようもないな…って思うような行動や言動をすることもいっぱいある。

 

それは連載初期から散々言われてきたことでもあると思うし、終盤まであまり感情を表に出さないタイプのラブコメ主人公が増えてきた昨今の風潮では、場当たり的な和也の行動がより悪目立ちしてしまう側面もあるのかもしれません。かく言う僕も、最初の頃は「もうちょっと共感させて欲しい……」と思わずにはいられませんでしたし。

 

でも、そんなダメで不完全で夢見がちな和也だからこそ、絶望の淵に沈んでいたちづるにもう一度「夢」と「希望」を差しのべることができた。宮島先生が本作で表現したい和也とちづるの関係性はそういうものであるように思えたわけです。

 

 

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小百合おばあさんの言葉(第112話より)

 

第112話で小百合おばあさんが印象的に語っていたように、自分の孫という目線を抜きにしても真面目で努力家なちづるは本当にとても良くできた子で、そんな彼女と比べれば、頼りない面も学生らしい甘さも和也にはたくさんある。

 

しかし、それでもなお小百合おばあさんが「(ちづるの)連れてきた人が和也君でよかった」と言い切った理由は、和也の姿にちづるのおじいちゃんである勝人の面影を重ねていたからなわけじゃないですか。

 

女優という人気商売で生きていくことは博打そのもので、応援してくれる存在がいるからこそ女優は舞台の上で輝ける。

 

その事実を誰よりも理解しているのが小百合おばあさんであり、そんな天才的大女優と崇められた自分の人生を傍で支えてくれたのが、ごくごく平凡なタクシー運転手の、しかし<人の「夢」と「想い」を誰よりも大切に考えて応援してくれる>勝人だった。

 

だからこそ、

 

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小百合おばあちゃんの想い(第112話より)

 

でも彼ほど 貴方に相応しい人はいないわ

 

という台詞を小百合さんは笑顔で語っていたんだよね。

 

自身が大女優であったことがちづるの人生を縛ってしまったんじゃないか、無用な責任感を働かせて無理をさせてしまっているんじゃないか、小百合さんはずっと心配をしてきたけれど、ちづるの傍に「夢は必ず叶う」と手を差し伸べてくれる和也という存在が現れたこと、そしてその男の子と共にちづるが現実を乗り越え「夢見ること」を楽しめる子に育ってくれたこと、それが小百合さんとしては何よりも嬉しいことだったから。

 

人に頼ろうとせず、優等生として振る舞う孫娘のちづる。けれど、人は一人では生きていけない。誰にだって不完全で足りない部分がある。女優を目指して「理想」を演じ、他者に「弱さ」を見せようとしないるちづるにそのことをわかってほしかった。

 

勝人が亡くなって以降、舞台の上に立つ側の人間だった小百合おばあさんには、ちづるをどう「自由」にしてあげればいいのかおそらくわからなかったんだと思う。そもそもちづるにとって小百合さんは「目標(=夢)」そのものになってしまっているし、小百合さんは勝人と違って「応援する」側の立場ではなかったのだから。

 

 

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小百合おばあさんの想い(第145話より)

 

だからこそ、観客席から高嶺の花に手を伸ばしてちづるの想いに寄り添ってくれるバカで夢見がちな和也こそがちづるにはお似合いだと小百合さんは感じていたのだろうし、かつての自分と勝人がそうであったような、「弱さ」も「強さ」も補い合って歩いて行ける夫婦の姿を2人に見出したんじゃないかな。

 

そんな風に考えてみると、この物語は「レンタル彼女・水原千鶴」としての彼女ではなく、「一ノ瀬ちづる」という一人の女の子と向き合っていくことが一つのゴール地点になっていくのかなと個人的には思います。

 

 

嘘と彼女

 

そしてもう一つ、物語を通して「嘘」というワードがキーになっている点もやはり興味深いポイントと言えそうでしょうか。

 

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嘘と彼女(第150話より)

 

仮初の「嘘」から始まった和也と千鶴のレンタル関係。

 

しかし、ちづるは最後の最後まで2人の関係が「嘘」であることをおばあちゃんに打ち明けることができなかった。

 

どうして言えなかったのかと言えば、それはやはりちづる自身が言葉にしていたように「言いたくなかったから」であり、無自覚であれちづるの中に「嘘」ではない感情が含まれてしまっているからであろうことはさすがに疑いようもない。

 

 

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ちづるの気持ち(第90話-第91話より)

 

けれど、潔癖で真面目なちづるにとっては、一度引いた「嘘」という境界線を飛び越えることはそう簡単な問題ではなくて。。。

 

だからこそ、小百合おばあちゃんの語る「たった1つの"真実"を表現するためにたくさんの"嘘"がある」という含蓄のある台詞が、まさしくこの作品の本質を貫く重要なテーマになってくるんだろうなと思えるわけですよね。

 

 

 

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たった1つの真実(第150話より)

 

「嘘」から始まった関係がやがてオーセンティックな恋に変わっていく。

 

2人が本当の気持ち(=「真実の恋」)を見つけていくまでの過程を表現することがこの作品の本意であるとするならば、やっぱり物語のメインヒロインは瑠夏ちゃんでも水原千鶴でもない。一ノ瀬ちづるなんですよ。

 

そして、小百合おばあさんが亡くなってしまう流れ自体は演出も含めて純粋に心に響いた一方で、物語的なお話、ちづるの方から和也と「嘘」の関係を繋ぐ理由はこれでもう完全に無くなってしまったと言える状況でもある。

 

であれば、小百合おばあちゃんとのお別れが2人の関係に決定的な変化をもたらすことはやはり間違いないのではないかなと、個人的にはそんなことを感じる展開だったわけでございます。

 

 

第159話 :彼女と彼氏③

 

.....からーの、この最新話ですよ。

 

和也と「水原さん」のデート回。いや、普通に水原さん可愛いのでそれはそれでいいのですけど、しかしまぁここで和也が「水原千鶴」としての彼女をレンタルする展開というのは正直何が狙い何だろうなと最初は思っていたんですよね。

 

映画制作であれだけ互いに協力をし合う仲になってチームとしての友人にもなって。それなのに今更レンタルして呼び出す主人公ってどうなんだろうかと。この期に及んでそんなフレームにこだわらなきゃいけなかったのかと。ぶっちゃけ疑問だったんです。

 

 

 

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君が楽しんでくれると自分も楽しい(第159話より)

 

でも、デートの導入はともかく実際に描かれている内容的にはやっぱり彼女の素の表情を引き出すようなデートになっていて、その流れから「彼女が楽しそうにしていると 自分も幸せな気持ちになれる」と和也が気づく構図は、初期の頃の和也と比べると人としての成長が見えたような気もして好感が持てた面もありました。

 

始まりは「嘘」だったけれど、和也が他の誰でもなく「君がいいっ!」と心から思えた理由は、彼女の生き方そのものに惹かれて一生応援したいと思ったから。自分に彼女が出来るよう真剣に考えてくれたことが嬉しくて、夢のために真っ直ぐ頑張り続ける彼女が誰よりもカッコ良くて。だからこそ彼女が幸せそうにしてくれると自分も幸せになれる。それはもう「愛」に近い感情だとも思うし、自己評価の低い和也の今後の課題は「幸せになって欲しい」ではなく「幸せにしたい」と言えるようになることなんじゃないかな。

 

まぁ、「レンカノ」という関係が2人の原点である以上そこを入り口にしてお話を広げていきたいと考えての展開なのかもしれませんし、一方の水原さん側にしても、映画制作や小百合おばあちゃんの件で親身になってくれた和也の行動に改めて自分の感謝を伝えようとしているようでもありますので、今回の「彼女と彼氏」編は2人の距離が心理的に近づくお話になるのではないかと、そんな視点で顛末を楽しみにしております。

 

 

.....というわけで、何が言いたいのかを一言でまとめると、

 

 

 

 

 

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誰かのために(第156話より)

 

やっぱり「墨ちゃんは凄く良い子!」ってことですよ。

 

和也が気づいた「相手が喜んでくれると自分も嬉しい」という感情はそのまんま墨ちゃんが和也に対して抱いている感情でもあるし、水原さんを笑顔にするためのデートをする決心がついたのも墨ちゃんに後押しをもらったからなので、墨ちゃんが実質MVPみたいなところはあるんじゃないでしょうか。

 

今後、和也と水原さんがレンカノ関係を越えていくお話になるならなおのこと、物語の出発点であり和也が水原千鶴と出会うキッカケとなった麻美ちゃんとの決着はきちんと付けて欲しいなとは思いますが、最カワヒロインの瑠夏ちゃんとスーパー大天使の墨ちゃんにもうまいこと見せ場を作っていただけると大変助かりますので、宮島先生の手腕に全力で期待しております!

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『彼女、お借りします』/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。

永遠のメインヒロインとラブコメの原点ーー『冴えない彼女の育てかた Fine』Blu-ray 感想

『冴えカノFine』 感想考察 ネタバレ注意

劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』のBlu-rayが本日9月23日に正式リリースとなりました。

 

映画本編の感想や結末に対する思いの丈は既に劇場公開中に書いておりますが、今日は作品の顔とも言えるメインヒロインの加藤恵さんが誕生した記念すべき日ということで、『冴えカノ』という作品に対する今の感情をこの場に書き残しておきたいと思い、こうして久しぶりにブログの更新をしています。

 

そのため、今回の記事は明確な目的を持った文章ではなく、フリートークのように極めて感覚的なことを書いていますので、「きっちり推敲されてない文章は苦手!」という方におかれましては、何卒ご容赦いただければ.......幸いです。

 

 

 

 

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ブコメの原点を思い出させてくれた『冴えない彼女の育てかた

 

……というわけで、今回は本作のメインヒロインである加藤さん(+Blu-rayを見返していて改めて感じたこと)について。

 

作品に対する思い入れや好きなエピソードこそ人それぞれ違うかと思いますが、劇場版で晴れてメインヒロインとなった加藤さんは本作の人気を象徴する存在となりました。

 

以前、原作者の丸戸先生がインタビューの中で、

 

自分がゲームシナリオライター時代に培ってきた、キャラクター造形(特にヒロインについて)のノウハウを全て詰め込んだ“サブヒロイン”を作り、更にそれらを否定するようなアンチヒロイン的なメインヒロインを作ることによって、ユーザーさんの経験や趣味嗜好にかかわらず、ラブコメにさえ耐性があれば、多分、ヒロインの誰かには引っかかるという間口の広さを持った作品にできたのではと……

 

という趣旨のコメントをされていたのが印象的だったのですが、初期の頃の加藤さんの立ち位置を振り返ると、やっぱり物語を動かすセンターヒロインというよりかは、動く物語の中で倫也の隣にいる光景が少しずつ自然になっていったヒロインという印象の方がしっくりくるんですよね。

 

主人公の倫也との間にとても強いドラマを抱えていた「幼なじみヒロインの英梨々」「年上ヒロインの詩羽先輩」がそれぞれの関係性の中で物語を動かし、停滞と葛藤にぶつかる倫也の傍に加藤さんがいる。

 

もちろん物語を俯瞰的な視点で見た場合、Blu-rayと一緒に同封されていた対談レポートの中でも丸戸先生が仰られていたように、倫也と最も強いつながりを持っていたヒロインは間違いなく幼なじみの英梨々だと思います。

 

今回の劇場版では「7年」という時間の流れが表現されていましたけれど、倫也と英梨々の間には「10年」という長い時間をかけて積み上げられてきた様々な感情があったわけですから。

 

子供の頃の10年と大人になってからの10年(※念のため書いておくと、大人になってからの年月を軽んじているわけでは決してありません....)では、「密度」も違えば「見えている世界の広さ」も当然違う。

 

そんな中で倫也と英梨々の2人は出会い、すれ違って疎遠になりながらも"初恋"に似た意識を互いに抱いたまま人生の多くの時間を近い場所で過ごしてきた過去がある。

 

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前に進むための涙

 

そういった背景があるからこそ、計り知れないほどの想いと重みが詰まったあの英梨々の涙に僕らは胸を打たれ、恋物語の集大成を感じ取ったわけですよね。

 

もっと早く「素直な思い」を言葉にできていたなら...。10年前にからライバルとして同じ歩幅で歩く関係を築くことができていたなら...。そんな「もしも」を胸にしまって、きちんと前に進むために彼女はその坂道を登っていく。

 

とても切ないシーンだけれど、倫也に見てもらいたくて頑張ってきた日々があったからこそ「これから」の彼女があって、「倫也にとっての一番のイラストレーター」になるという積年の夢を「これから」の彼女が叶えていくのだろうと思うと、改めてよく出来た物語だなぁと、ラブコメの面白さを再確認させてくれる本当に素晴らしい結末だったように感じています。

 

 

永遠のメインヒロイン

 

そんな魅力的なヒロインが他にいる中で、物語と共に成長を遂げてきた加藤さんの存在感はやはり"作品の象徴"であり"メインヒロイン"そのものでしょう。

 

先程、英梨々との関係性の中であえて「世界の広さ」という表現を使いましたが、まさに倫也の世界を広げたきっかけは加藤さんとの出会いなんですよね。

 

加藤さんと出会うことで倫也はクリエイターとしての第一歩を踏み出すことになり、そんな倫也の情熱を傍で見てきた加藤さんも『創作』の楽しさを知っていく。何も持っていなかった2人が、受動的な立場からではなく、能動的に何かを成し遂げていくクリエイターの世界に足を踏み入れることでその喜びや大変さを実感し、手を取り合いながらその登り坂を進んでいく。

 

そんな物語の軌跡が僕はたまらなく大好きです。

 

深崎先生のイラストの力はもちろんのこと、ゼロから始まった2人が物語とともに同じ歩幅で成長し、それに比例する形で、ファンをも含めた関係者たち全員が加藤恵というヒロインの魅力を個々に見出していった結果、この最終章をもって彼女は誰もが認める「最高のメインヒロイン」になりました。

 

今日9月23日は、「たくさんのユーザーのためじゃない、たった一人の、あなただけのメインヒロイン」の誕生日。この記念すべき日にお祝いの念を込めつつ、最後にこの一言で締めくくりたいと思います。

 

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永遠のメインヒロイン

 

永遠のメインヒロイン加藤恵さん、誕生日おめでとうございます!

 

 


 ※本記事にて掲載されている情報媒体は「丸戸史明深崎暮人KADOKAWA ファンタジア文庫刊/映画も冴えない製作委員会」より引用しております。

 

『咲-Saki-』第217局「戮力」感想

 咲-Saki- 217局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)

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咲-Saki- 第217局「戮力」 感想

 

 

照の連荘が止まらない先鋒後半戦の最終局。

 

7本場の親倍ツモで更にリードは広がり、トップの照と2着の玄ちゃんとの点差は今や9万点以上。誰かが照に役満を直撃させても照のトップは揺るがず、先鋒区間での逆転はもう事実上ありえない。

 

大過ぎる支配と和了るたびに上昇していく打点。計り知れない程のプレッシャーと絶望が他家を包み込む中で、それでも照の連荘を阻止すべく奮闘する優希たちの姿に団体戦ならではの闘いぶりが見て取れるのだと思う。

 

 

 

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諦めない意志

 

個人としては完全な負け試合であっても、チームとしての勝負はいまだ続いている。

 

「チームに必要とされること」の嬉しさについてすばら先輩が阿知賀編で述べていたように、最強のチャンピオンである照を先鋒に配置することで結果的に団体戦らしい対局が成立しているのかもしれない。

 

準決勝で阿知賀女子が白糸台に勝利できた理由もこういう団体戦としての枠組みによる部分がとても大きいように感じたので、今回の決勝戦はチーム虎姫の背景にも目を向けて物語が展開されてくれたら嬉しいなと。

 

そんな妄想という名の願望を書き残しつつ、早速今回のお話を見ていきたいと思います。

 

 

 

<前回の感想>

 

 

 

 

第217局「戮力」

 

南4局 7本場  親:宮永照 ドラ:八筒:麻雀王国

 

さて。前局の倍満ツモで8連続まで和了りを伸ばした照は、この局もまた当然のように連荘を選択。

 

次にくる「9回目」和了りに前半戦の九蓮を思い出しつつも、照のギギギーにまつわる条件考察に関して優希は既に部長から"とある助言"を授かっていたようで。

 

 

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部長の考察

8回目までが全部ツモのときは

9回目はほとんど阻止できてないけど

もしロンがまざってるなら......とめることができるかも

 

なるほど。

読者視点では前半戦の段階で透けていた要素だけれど、咲さんから「9回目=止められない」という話だけしか聞かされていなかった優希の立場としてはこれ以上ない程にありがたい情報と言える。

 

和了りでつないでいる時の「9回目」が通常の打点上昇に則しているとすれば、この局で照が狙うのはほぼ間違いなく三倍満。

 

そしてドラなしの三倍満は概ね染め手系統に限られるため手も読まれやすく、さしもの宮永照とて容易には和了れない。

 

 

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攻めに出る

 

だからこそ、この局で必ずチャンピオンを止める。

 

そんな共通認識がガイトさんと優希の間で繋がったのか、ここで照の下家に座る優希が和了度外視の鳴きで照のツモ番を飛ばす役目を担うことに。

 

バラバラの配牌から臆さずに選んだ「一索:麻雀王国ポン⇒中:麻雀王国ポン」の攻め攻めムーブ。結果として照のツモ順は5巡目にして2度も減っており、玄ちゃんのドラ縛りも含めて照のスピードは確実に抑えられている。

 

 

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照の捨て牌と狙い

 

しかし、そんな状況にあってなお「三倍満以上の条件をクリアする」方向で手を進めている照はやっぱり規格外そのもの。

 

手牌が4枚しか描かれていないあたりに作為的な演出を感じますが、染め手系統で三倍満を狙っているのなら筒子染め以外はまず条件としてありえない。

 

そして、リーチを掛けた描写から役満狙いの可能性も作劇的にほぼ否定できるし、玄ちゃんが占有しているドラの「八筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国」の線を嫌っての「六筒:麻雀王国七筒:麻雀王国切り」かつ「九筒:麻雀王国暗刻残し」を見るに、「一通・平和・七対・二盃口」あたりの役が付いていないだろうことも盤面から推察ができる。

 

 

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照のリーチ

 

となると、やはり「一筒:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国」と「九筒:麻雀王国九筒:麻雀王国九筒:麻雀王国」を利用してチャンタに寄せていると解釈する方が自然なのかもしれないね。

 

 

一筒:麻雀王国一筒:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国九筒:麻雀王国九筒:麻雀王国九筒:麻雀王国東:麻雀王国東:麻雀王国東:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国發:麻雀王国 ツモ一筒:麻雀王国

 

上記のような組み合わせだとすれば「立直(1)+ツモ(1)+混一色(3)+チャンタ(2)+三暗刻(2)+東(1)+發(1)」でツモ条件だけど11翻で三倍満。

 

すこやんの言うように、「今回のドラが八筒:麻雀王国であること」や「照自身が六筒:麻雀王国七筒:麻雀王国切り」していることを踏まえると筒子染めの線は他家視点で見辛いし、文脈的にも「宮永照恐るべしです」という台詞と符合する。

 

まぁいずれにせよ、リーチが入った時点で照がドラなし三倍満を聴牌していることは確定なわけなので、次回どんな手牌になっているのかも楽しみにしたいと思います。

 

 

ガイトさんが最後に魅せてくれるのか

 

一方、照の高速三倍満リーチの裏側で、ガイトさんも少し遅れながら大物手を一向聴

 

 

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ガイトさん一向聴

一萬:麻雀王国二萬:麻雀王国二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国五萬:麻雀王国六萬:麻雀王国六萬:麻雀王国八萬:麻雀王国八萬:麻雀王国九萬:麻雀王国西:麻雀王国西:麻雀王国 ツモ七萬:麻雀王国

 

ここから「八萬:麻雀王国六萬:麻雀王国」を落として「四萬:麻雀王国一萬:麻雀王国」が入れば「平和(1)+混一色(3)+一通(2)+一盃口(1)」で7翻が確定しているこの牌姿。

 

追っかけリーチで照に倍満をぶつける展開になるのか、あるいは清一色まで手を伸ばしギリギリの間合いまで踏み込んで最高打点のロンを取るのか。

 

照が三倍満を和了る可能性まで考えるとまだどうなるか読めませんが、優希との連携プレイも重なっている状況なのでここはガイトさんの活躍に期待したいというのが素直な感想かなと。

 

 

 

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最終ミッション:宮永照を止めろ!

 

すばら先輩を彷彿とさせる優希の立ち回りがガイトさんとのラインを生み、照のツモを飛ばすことが結果としてガイトさんの和了りを援護することに繋がっていく。

 

能力相性の良い全国2位の荒川さんでさえ他家との協力なしには止められないと言われている照の支配をガイトさんたちがいかにして打ち破るのか。2年に渡って描かれてきた先鋒戦のクライマックスを心より期待しております。

 

 

〇現在の点数状況(後半戦南4局6本場終了時点)

1位 白糸台       :174000点

2位 阿知賀女子  :  79200点

3位 臨海女子       : 75600点

4位 清澄    : 71200点

 

 

次回は6/19発売号で掲載予定。

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『咲-Saki-』/小林立ヤングガンガン」より引用しております。

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