ふわふわな日記

『アオのハコ』第1巻(+第8話~第21話)感想:人生で一番、青い日々が始まる。

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『アオのハコ』  感想

『アオのハコ』最新話 感想 ネタバレ注意

読み切りの頃から強い輝きを放っていたジャンプの新作青春ラブコメ『アオのハコ』がここにきて更に1段面白さのギアを上げてきました。

 

正直ラブコメに関してはジャンプよりもマガジンの方が読みやすいことが多いなと感じていた僕なのですが、作者の三浦糀先生は元々マガジンで連載されていた作家さんということもあり、ここ最近の『アオのハコ』は僕好みのテイストで毎週とても楽しめています。

 

以前『先生、好きです。』(三浦先生の前作)のレビュー記事でも書いたとおり、三浦先生の作風ってとてもピュアなんですよね。

 

特に今回の『アオのハコ』は恋愛モノとしての"ナチュラルさ"が良い意味でジャンプらしくなくて、今のところ明確に漫画っぽい部分があるとすれば"同居設定"くらいのもの。

 

ゆえに、連載当初は「"ジャンプの読者層的にこの手の作風ってどうなんだろう......?」と思ったりもしたものですが、蓋を開けてみたら完全に期待以上でした。単行本の1巻が発売される前から本誌で巻頭カラーを飾ったり単行本が速攻で売り切れたりと勢いが凄い。

 

というわけで今回は、個人的に感じた『アオのハコ』ワールドの魅力と期待している部分について書いていきたいと思います。

 

 

(※先日発売された第1巻の内容をベースに、ジャンプ最新話の内容にも少し触れておりますので、単行本派の方は十分にお気をつけください。)

 

 

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『アオのハコ』第1巻:青春ラブストーリー爆誕

 

冒頭でも触れたとおり、本作『アオのハコ』は最近のジャンプではわりと珍しい正統派青春ラブストーリー漫画です。

主人公であるバド部の猪股大喜が、朝練で毎朝一緒になる女バスの先輩・鹿野千夏に恋をする。

 

その理由がまた実に"アオハル"で、作中時間より遡ること1年半前、全国大会出場を逃した悔しさで一人涙ながらにシュート練習をしていた千夏先輩の姿に当時中学3年生だった大喜は思わず心を奪われてしまう...というもの。

 

 

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恋に落ちる瞬間(第1話より)

 

あくまでも、自分も先輩のように努力ができる人になりたいという"人としての尊敬"が入り口で、その憧れが気付いたら恋心に発展し、その結果として「尊敬する千夏先輩に見合う男になりたい」という想いに繋がっている。

 

尊敬する人がいて、その人と肩を並べられるだけの存在になりたい。この思いが昂じると、異性間では恋愛感情が、同性間では強い友情や絆が芽生えたりするものです。要するに千夏先輩の存在が主人公の大喜を成長させる大きな原動力になっているわけですね。

 

ここに、部活と恋愛を絡める明確なシナジーがあります。

 

 

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こんなシチュエーションに遭遇したい人生だった(第2話より)

 

漫画チックな同居設定は物理的な接点や距離を縮めるための装置としては非常に良いスパイスですが、本質はそこにはありません。

 

バドミントンにかける情熱と千夏先輩への恋。この両輪が並列的に動いている。スポーツを通してお互いの魅力を知り、恋心を糧に人として成長していく。それこそが『アオのハコ』ワールドを支える骨組みの部分だと思うのです。

 

近くにいるからこそ今はまだ遠くに感じられるし、それゆえに前に進みたいと頑張れる。一介の新人選手である大喜が、シード校の千夏先輩を目指して一回戦から二回戦、そして三回戦からその先に繋がる階段をいかにして駆け上っていくのか。その展開をどう読者に読ませるのか。

 

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「1 on 1」(第1話より)

 

きっと本作は、大喜と千夏先輩が対等に「1 on 1」で向かい合うまでを描いた物語です。

 

まさかジャンプでここまで爽やかな恋愛部活モノを読めるとは思ってもいませんでしたが、余計な雑味がなく、真っすぐで好感溢れる主人公の大喜の頑張りに一読者として期待したいと思わされた導入でした。

 

先輩ヒロイン:鹿野千夏

 

一方で、先輩ヒロインである千夏先輩にとっても、大喜の存在が日に日に大きくなっているだろうことが作品の節々から感じ取れる点も本作における胸キュンポイントの一つだと思います。

 

 

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千夏先輩にとっての大喜(第7話/第21話より)

 

例えばこのシーンとか。このシーンとか。

 

『アオのハコ』は基本的に主人公の大喜視点で描かれることが多く、近年のジャンプラブコメとしては珍しいくらい主人公の感情がストレートに表現されている作風なだけに、千夏先輩側の心情が"必要以上に"描かれたり.....ということはありません。その方が今の段階では読みやすくて良いと僕も思います。

 

しかし、そうは言っても千夏先輩だって一人の女子高生。年の近い男の子と一つ屋根の下で共に暮らす状況ともなれば、まったく気にしないなんて土台無理なお話です。ましてや、部活絡みで少なからず関りのあった後輩くんですからね。

 

その後輩くんの原動力が自分にあるとまで気付いてはいなくとも、大喜の言葉や姿勢によって千夏先輩自身も実際に影響を受け、自身の進路を定める決心をつけたりもしているわけですし。

 

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千夏先輩の口パク表現かわいすぎ....(第8話より)

 

そう、やっぱり自分に足りないものを持っている人には少なからず関心が生まれるし、それがプラスのものであれば自然と好意を抱くものです。

 

それが思春期のアオハル時代であればなおのことで、更に踏み込んで言ってしまうのなら、一方が尊敬するだけの状況ではその関係が長く続くことはないのかもしれません。

 

片一方の尊敬だけでは、いつか相手を追い抜かしてしまうか、はたまた追いつけずに途中で挫けてしまうか、しかないから。お互いがお互いを高め合える関係があって初めて、本当の意味で長く対等な相手として付き合っていける。

 

第3話で友人の笠原が大喜と千夏先輩を見てお似合いと評していた(水族館の一件といい、この友人はきっと恋愛作品の主人公にとって必要なタイプの鋭い友人くんですよね....)シーンもありましたけれど、大喜と千夏先輩を見ていると、そういう関係を築ける人との出会いは素敵だなと改めて思わされます。

 

優しさ、悔しさ、向上心、負けず嫌い、etc......。単純に一つで括れるものでもないのかもしれませんが、大喜から見る千夏先輩はもちろん、千夏先輩から見る大喜も、きっと自分にないものを持っている人。

 

 

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憧れの先輩もまた等身大の女の子(第11話より)

 

ゆえに、後輩の大喜を見て自分も頑張ろうと勇気が湧いてくるし、そんな先輩の隣に立てる人になるべく主人公・大喜の挑戦は続いていく。

 

この理想的な永久機関の中で、千夏先輩から恋の波動が検知されるようになった時こそ、物語が動く瞬間ということになるのでしょうね。

 

 

 

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恋心の波動....?(第21話より)

 

既に種まきは行われているものの、何かと千夏先輩は気遣いの多いタイプなので、居候として同じ家に住んでいる状況やもう一つの外的要因の影響で少し恋愛方面の進展には時間がかかりそうですが、大喜はやるときはやってくれそうなタイプの主人公ですから、その点は楽しみながら読み進めたいと思っています。

 

 

幼なじみヒロイン:蝶野雛

 

というわけで、ここまで年上お姉さんスキーとしての感想をつらつらと書いてきたのですが、本作にはどうやらもう一人とても魅力的なヒロインがいらっしゃるようなんですよ。

 

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もう一人のヒロイン(第4話より)

 

そう、大喜とは中学の頃からの付き合いで新体操部期待の星である蝶野雛さんです。

 

なるほど、幼なじみですか。うん、しんどい!いや、もうこの時点でどう考えてもしんどい.....。ここにきて、しんどい星出身のヒロインを描いてしまうとは三浦先生もなかなかどうして憎いですよね。

 

スタートから主人公に好きな人がいる状況下で、もう一人別のヒロインが三角関係的に恋模様に参入してくる。

 

今までは意識することも気付くこともなかった。他愛もないことで、じゃれ合ってからかいあう。そんな当たり前の日常がずっとそこにあったから。でも、日常は変わる。大喜は千夏先輩に出会って変わった。いや、今まさに変わろうと頑張っている。

 

そしてその姿を見るたびに、制御できない感情が込み上げてくる。2人が水族館デートをすると知ってムカムカしたことも、同居していると知って動揺したことも。理由は一つだった。

 

出会いに順番は関係ない。されど、なぜ今なんだろう。どうして今、気づいてしまったんだろう。そんな彼女の心の声がついに第16話で涙となって溢れ出る。

 

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溢れる涙(第16話より)

 

あぁ......。本当に青春ですよ。眩しすぎて直視できないくらいに青春。

 

無論、『アオのハコ』の作風から推測するに、雛の恋が最終的に成就する展開は読者目線でもあまり想像できるものではないと思います。

 

可能性がゼロとは言わないまでも、恋と部活の両軸をコンセプトと見た場合に、最も大喜とのエンディングが似合うのはさすがに千夏先輩だと思いますから。そういう意味で雛は失恋することが前提のしんどい系ヒロインと言えるのかもしれません。

 

 

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雛の恋に無駄はない(第18話より)

 

とはいえ、結果を知りたくて漫画を読んでいるわけでは当然ありませんから、大喜に恋をした雛がどういう青春を見せてくれるのかが僕は楽しみです。

 

一人で闘わなくていい。そう教えてくれた大喜の存在が雛を前進させる大きなピースになった。大喜が応援してくれて見てくれている。だから自分も頑張れる。この時点で雛の青春は多くの読者の心を動かせるくらいに光り輝いています。

 

きっとここから雛の存在が更に千夏先輩と大喜の恋模様に影響を及ぼしていくのでしょう。それを当て馬と読む人もいるかもしれませんが、僕はそうは思いません。

 

結ばれるヒロインがいれば、失恋するヒロインもいる。この大原則の中で大切なことは、その青春を通して登場人物たちが何を手に入れどう成長をしたのかということ。恋が成就しなければすべて無意味だなんて、そんな一側面的なお話で終わってしまってはやはりもったいないですから。

 

まだまだ始まったばかりの彼・彼女たちの青春ラブストーリー『アオのハコ』。千夏先輩推しではありますが、心揺れる三角関係の末に生まれるモノにも期待しつつ、ここからの展開を楽しんでいきたいと思います。

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『アオのハコ』/三浦糀/週刊少年ジャンプ」より引用しております。

『カッコウの許嫁』第79話 感想:揺れるヒロインたちの恋模様!あいちゃんの告白で物語は次のステージに?

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カッコウの許嫁』79羽目 感想

カッコウの許嫁』 最新話 感想 ネタバレ注意`se

マガジン本誌で連載中の『カッコウの許嫁』が今なかなかに面白い展開になってきました。

 

長期連載のラブコメ が中盤以降ストーリー的に停滞しがちなのはもう構造上致し方ない(そういう意味で『五等分の花嫁』は本当に毎話猛烈な勢いで駆け抜けていった作品でしたね.....)と思っているのでそういう"タメの期間"も込みで僕はラブコメが好きなのですが、ここにきてついにカッコウの許嫁』ラブコメワールドにも大きな波が押し寄せようとしています。

 

許嫁の「エリカ」、想い人である「ひろ」、妹の「幸」、そして.....。運命に振り回され続けている主人公の凪がここからどんな選択をするのか、誰と共に未来を歩いていく決断をするのか。

 

複数人ヒロインがいる1対多のラブコメストーリーにおいて最も大切な「どうしてそのヒロインでなくてはいけなかったのか」の部分を物語を通して示してくれる作品になってくれたら個人的に嬉しいなと。

 

そんな期待感を込めつつ、結末に至る第一の口火が放たれたここ最近の物語について簡単にレビューを書いていきたいと思います。

 

 

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カッコウの許嫁』ラブコメワールド

 

本作の読者は既にご存じの通り、これまでの『カッコウの許嫁』ラブコメワールドは、主人公の凪と3人のヒロインたちによってお話が展開されてきました。

 

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カッコウの許嫁』ラブコメワールド

 

許嫁として同居生活を共に営んでいるセンターヒロインの「天野エリカ」・学年一位を争うライバルであり凪の想い人でもある「瀬川ひろ」・血の繋がりがないと判明している最強妹の「海野幸」。

 

3人のヒロインたちがそれぞれの関係性から凪と接点を持ち、個別エピソードによってラブがコメる展開を描きつつも明確に均衡は崩れない。そんな体操選手顔負けのバランス感覚で1年半近くもの間ラブコメワールドの調和を保ってきた。それが『カッコウの許嫁』の現状でありました。

 

とはいえ、本作の前提として主人公の凪が瀬川さんを好きだと明言している...けれど瀬川さんにも家の跡継ぎ問題があって凪からの告白を"今はまだ"そのまま受け入れることができない状況が背景にあり、加えてヒロイン同士の関係性がある程度近しいこと、ヒロイン同士がお互いの事情をある程度察している関係性にあること、....等々の状況を考えればかなり妥当なストーリー展開ではあったと個人的には思っていたんですよね。

 

たとえば、僕はがっつり瀬川さん派の人間なので、瀬川さん軸でラブコメワールドに若干の進展を感じた第62話~第65話のお家騒動編のお話が結構好きだったりもしていますし。

 

 

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運命とは自ら切り開くものだ!!(第62話より)

 

かつて瀬川さんが凪に向けて言った「私の運命 変えてみせてよ」という叫びにも近い本音。そこに対するアンサーとして、ついに凪は第62話で「運命とは自ら切り開くものだ!!」と瀬川さんの手を引いて見せる。

 

それが先走りの行動であったとしても、言葉だけではなく行動で示してくれたこと、凪があの日のようにまた助けにきてくれたこと、それが瀬川さんにとってとても嬉しいことだったわけですよ。

 

2年前、他人を寄せ付けずに独りぼっちだった自分の前に現れた男の子。でも、その出会いによって瀬川さんの生き方は変わった。おしゃれも運動も人付き合いも意識するようになって、その結果学校が楽しくなった。

 

そして気付く。海野凪という男の子との出会いによって自分の"運命"は変わっていたのだと。運命という言葉は「人間の意志を超えて、幸福や不幸、喜びや悲しみをもたらす超越的な力」という意味で一般的に使われているけれど、実際のところそんなものじゃないんだ。

 

ある事象を当事者がどう感じるかで悲しみや喜びの感情が確定する以上人の意思を考慮せずに定義付けなんて出来るわけないのだから。ゆえに運命という言葉は魔法のワードであり、たとえ何の変哲もない一つの出会いだったとしても、そこに人が意味を見出した時、つまり人がそれを運命だと感じた時、初めてそれは本当の意味で"運命"になる。

 

 

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あの日からすでに私の運命変わってたのかもね(第64話より)

 

凪が瀬川さんの運命を変える覚悟を示し、その結果として瀬川さんにとって凪は運命の相手になった。

 

凪が瀬川さんに惹かれ、彼女のことを想って行動を起こした結果、こうして今がある。だからこそ人の行動や選択によって未来は変えることができるし、どうしても通したい想いがあるのなら背負った運命さえも自分の気持ち一つで切り開いて行ける。それが本気を示すことであり、逃げずに向き合うということなんだから。

 

 

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運命から逃げない(第65話より)

 

そして、そんな瀬川さんエピソードの顛末をエリカが自身の境遇と照らし合わせて総括していた点も物語を前進させていた要素の一つ。

 

エリカもまた凪との出会いによって自分の知らなかった世界に触れることができた。それを楽しいと思う自分がいて、自分の置かれている状況から逃げ続けていたら「ずっとこんな日が続けばいいのに」と思えるような今の日常が訪れることはなかったんだよね。

 

凪には瀬川さんという明確な想い人がいるわけではあるんだけれど、本当に少しずつ凪の隣にいることを意識し始めているエリカの心情変化は今後も非常に楽しみだなと思います。

 

第4のヒロイン"望月あい"の存在

 

.....という流れで一歩ずつヒロイン毎のエピソードを積み上げ着実に進んできた『カッコウの許嫁』ワールド。

 

しかし、ここでついに「ネクストステージ」と言わんばかりに激震が走ります。そう、第4の矢にして小学生の頃に凪が告白をしたこともある幼なじみヒロイン"あいちゃん"の登場です。

 

しかも、

 

 

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あいちゃんの電撃告白(第73話より)

「結婚するために帰ってきた」⇒「でもごめん 俺には今好きな人がいるんだ」と直接断られる⇒「想定外ですが 問題ありません」「今度は必ず手に入れてみせます」と宣言⇒「あいは凪ちゃんのことが大好きです」と再告白⇒あいちゃんが大人気アーティストであると発覚する⇒凪との熱愛発覚報道がTVで流れる

 

という破天荒っぷり。

 

細かいツッコミどころはまぁコメディとしての範疇だと思いますが、あいちゃんの存在が凪の置かれている現状認識をまた一歩前進させる展開に繋がっていくのでしょうか。

 

生まれて初めて自分に告白をしてくれた思い出の女の子。されど、今の自分には好きな人が他にいる。

 

 

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物語は第二ステージへ?(第73話より)

 

自分には親同士が決めた"許嫁"がいて、自分の意中の相手にも家の事情で"許嫁"がいて、そして血の繋がらない"妹"にも「アタシは結婚しないもん!!だからお兄も結婚しないで!!」と言わている。

 

あいちゃんがどこまで深く事情を把握しているかはともかく、凪の置かれている状況は普通の恋愛と比較すれば中々に複雑で、家の事情も込みで考えると障害や困難が少なくないことはこれまでにも凪自身が痛感してきたところでもある。

 

けれど、そんな運命に立ち向かってでも瀬川さんの運命を変えると凪は一歩踏み出したわけで、凪の気持ちは既にもう固まっている。だから大丈夫!good-byeあいちゃん!また逢う日まで

 

.....そう思っていた時期が僕にもありました。

79羽目:この夏休みどうだった?

 

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瀬川さん激おこ(第79話より)

 

あいちゃんとの熱愛報道(誤解)を受けて激おこ状態の瀬川さん。マジで目が笑ってないし、控えめに言っても怖い。これがヤキモチの威力か....。男性の皆様には効果抜群である。


もちろん完全に濡れ衣なので凪としては弁解のチャンスを探るわけですが、あいちゃんの歌う漏電が凪のことを思って作られたラブソングであっただろうこと、そして瀬川さん自身もその曲に強く共感しいつしか憧れていったこと.....等々が彼女の気持ちをより混沌とさせてしまった。

張り詰める空気感の中、「私 ムカついてるんだよね」の言葉と共に瀬川さんは凪の胸倉をぐいっと掴み、

 

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瀬川さんの胸中やいかに...?(第79話より)

 

そのまま、ほっぺにキスをするのであった...。

 

なるほどなるほど。うーん、なるほど?いや、瀬川さん難しすぎる...。

 

個人的にはこれまでの凪の行動や言動を踏まえてもう少し信じてあげても...とも思いましたけれど、誤解やすれ違いが引き金になって恋模様が進展していくのは"ラブコメ"の王道文法なので、むしろこの後の展開こそが重要ということなのでしょうね。

 

凪に出会う前、運命が変わり出す2年前の彼女は他者を寄せ付けず常に独りぼっちだった。そんな頃の彼女から言われた「あの言葉」が2年という年月を経て再び凪の心に突き刺さる。

 

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二度と話しかけないでもらっていいかな(第79話より)

 

二度と話しかけないでもらっていいかな

 

きっと誤解を解くこと自体はそんなに難しくはないはず。でも、あの時と全く同じ拒絶の言葉がリフレインされているということは瀬川さん軸のストーリーとして非常に大きな意味を持つお話になるのでしょう。

 

いずれにしても、今回のあいちゃん旋風が瀬川さんと凪の関係を進展させるお話になってくれたら面白そうだなと。

 

 

あともう一つ気になる点としてはエリカの心情変化が挙げられるでしょうか。

 

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エリカの変化にも注目(第79話より)

 

あいちゃんに告白されたことを知っているエリカは、今回の熱愛報道を受けて凪が告白を承諾したと勘違いしているのでしょうね。

 

形式上の許嫁関係でしかないのであれば、本人の自覚の有無はともかく、さすがにこういう感情的な反応が湧き上がってくることはないと思いますし。

 

いつになるかはわかりませんが、エリカが自分の気持ちを認識してからどういうスタンスを取るのかによって作品の雰囲気が結構変わりそうな気も。

 

凪と瀬川さんがほぼ両思いであることを知ったうえで自分の気持ちに気付くのはまぁ難儀ですよね....。もちろん読者としてはそこが楽しみではあるのですが。

 

というわけで、あいちゃんの告白を起爆剤に妹の幸も含めてここからストーリーが動くことを期待しております。

 


※本記事にて掲載されている情報物は「『カッコウの許嫁』/古河美希/週刊少年マガジン」より引用しております。

『咲-Saki-』第236局「執念」感想

 咲-Saki- 236局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)

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咲-Saki- 第236局 感想

 

第222局から始まった決勝次鋒戦もいよいよ大詰め。

 

強敵を相手に今一歩届かず前半戦を最下位で終えたまこだったが、自身の親番で迎えた後半戦の東4局、全員聴牌の一触即発盤面でも臆さず立ち回り、巧みな打ち回しで1600オールをツモってみせた。

 

最高の後輩たちと最高の先輩、そして決勝戦という最高の舞台。緊張や焦燥が渦を巻く中で、それでも諦めず奮起し続けるまこの姿は、かつて部長が教えてくれた「染谷さんも(麻雀)好きでしょ?」という台詞への回答にもなっているんだろうね。

 

これまでは何かと描写の少なかった次鋒戦だけれど、今回の決勝戦はまこの表情を捉えたカットも多くて立先生としてもまこの見せ場をどう描くかずっと考えてはいたんだろうなと。個人戦に出場しない部長とまこは団体戦の決勝が終わった後どこまで対局描写を描けるかわからないわけですし。

 

ということで、今回はそんな次鋒戦の締め括りとなる第236局の闘牌を振り返っていきたい。

 

 

<前回の感想>


 

第236局「執念」

 

1600オールをツモり、親の連荘で何とか追い上げを狙っていきたいまこ。だが、続く1本場は浮き出た西:麻雀王国で菫さんから狙い撃ちを食らい、倍満手16300点に放銃してしまう。

 

その後も南1局に親の菫さんが宥姉から9600点を直撃、南1局1本場では郝に跳満をツモられ、次鋒戦も残り3局で持ち点47600点(次鋒戦収支-18900点)という何とも苦しい状況に。

 

しかし、長野県予選決勝から脈々と受け継がれてきた「もし神がいるのなら、前に向かう者を好きでいてくれるはず!」のスピリッツは今なお生き続けており、当然ここで終わらないのが『咲-Saki-』ドリームのすばらなところ。

 

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勝負の南2局

まさか、ここでくるんか………

 

なるほど。全ての『咲-Saki-』読者が心のどこかでは既に予想をしていたかもしれない。

 

染め手の好きなまこの一番得意な役満"あったかくない牌"を除いて構成される「あの役」であると示唆されていたこと。そして、「赤い牌」を集める宥姉が次鋒戦でまこと対決すること。

 

2009年12月に掲載された「第58局」の四校合同合宿で描かれた頃から数えて約12年。すべての要素が繋がり、全国の頂点を決する大舞台でついに染谷まこが"あの役満"聴牌する。

 

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長い年月を経て、伏線が回収される瞬間(第236局)

 

緑一色テンパイ...ッ!!

 

 

なんなんだこの熱い展開は.......(震え)。

 

「天和」「四槓子」「九連宝燈」に続くレア役満四天王の一角でもある「緑一色」。あくまでも事実ベースだけで俯瞰して読み進めると「決勝戦役満出過ぎ」って言いたくなる気持ちはよーくわかるんだけど、でも『咲-Saki-』の最新話を毎話読み続けている読者ほどきっと感じ入る描写でもあると思うんだ。

 

緑一色の出現確率は「0.0011%」と言われていて、菫さんの想定通り、いくら宥姉に「赤い牌」が集まりやすいと言っても確率論で言えば間違いなく切っていい確率である。

 

でも、かつて「たった一回の人生も論理と計算ずくで生きていくの?」と言っていた人がいたように"それだけじゃない"んだよね。正しいかどうかだけじゃない。人の「意思」や「執念」が期待値を超えた結果を生むこともある。振聴?五索:麻雀王国?そんなの要らんわ...ッ!!

 

 

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染谷まこ(第236局)

發:麻雀王国發:麻雀王国三索:麻雀王国四索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国六索:麻雀王国 チー二索横:麻雀王国三索:麻雀王国四索:麻雀王国 ポン八索横:麻雀王国八索横:麻雀王国八索横:麻雀王国 ツモ二索:麻雀王国

 

役・満・炸・裂!!

 

五索:麻雀王国ツモ2000点をノータイムで切っての二索:麻雀王国ツモ。ここまで苦しい闘いを強いられ続けてきたまこだったけれど、最後の最後で執念が花を咲かせる展開になっていて個人的にはとても良い締め方だったのかなと思います。

 

次鋒戦決着、そして部長出陣...!

 

ちなみに残る南3局と南4局については詳細こそ描かれていないものの、卓上に描かれている点数を参照すると、次鋒戦の収支結果はおそらく下記の通り。

 

〇次鋒戦終了時点の点数状況

1位 白糸台高校:151100点(-13200点)

前半戦:-22300点 / 後半戦:+9100点

2位 臨海女子高校:103300点(+8600点)

(前半戦:+3900点 / 後半戦:+4700点)

3位 阿知賀女子学院: 79000点(+4500点)

前半戦:+26800点 / 後半戦:-22400点)

4位 清澄高校: 66600点(+100点)

(前半戦:-8400点 / 後半戦:+8500点) 

 

半荘2回の結果としては目立って大きな開きはないけれど、結果だけを見ると前後半共にプラス収支だった郝がトップか。臨海はどこの区間も崩れそうな選手がいなくて安定感あるのがやっぱり強いよね。

 

対する宥姉は後半戦南2局での役満親被りが大きかった感。あれがなければ実質トップみたいなものではあったし。まぁ、麻雀でそれを言っても仕方ない面はありますが、それでもプラスで終えているのは流石と言ったところかな。

 

トップを走る白糸台は後半戦での菫さんの健闘により、まだまだ単独での圧倒的首位を維持。白糸台に関しては続く中堅戦でたかみーのハーベストタイムがどう転ぶかによって点数状況が決まりそう。あと、亦野さんにも頑張ってほしい。

 

そして、我らが清澄高校は4位のポジションから未だ変わらずではあるものの、まこの緑一色和了で何とか繋がったという感じでしょうか。まぁ、次はいよいよ部長の出番ですからね。色々波乱もあるかとは思いますが、この決勝戦で清澄の部長「竹井久」の集大成が見られたら嬉しいなと。

 

 

 

 

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部長ついに出陣(第236局)

 

いずれにしても、僕個人としては決勝戦における最注目プレイヤーの1人であることは間違いないので、部長がどんな闘牌を見せてくれるのかに全力で期待していく所存。

 

咲-Saki-』世界で最も可愛いのはロンオブモチで咲さん(※個人の見解です)ではあるんだけれど、改めて振り返ると清澄高校自体を好きになれたのは部長の存在が一番大きいかもしれない。

 

決勝中堅戦を終えた後の部長は一体どんな表情をしているんだろう。一片の悔いもなくすべてを出し切って最高の表情を見せてくれるだろうか....。

 

もう待ち遠しすぎて楽しみとしか言葉が出てこない状況ではありますが、次回から単行本22巻発売準備のため4号分休載なので気長に待ちたいと思います。

 

次回は11/19発売号で掲載予定。

 


 ※本記事にて掲載されている画像は「『咲-Saki-』/小林立ヤングガンガン」より引用しております。

『咲-Saki-』第218局~第235局 感想(決勝先鋒戦終盤~次鋒前半戦振り返り/点数まとめ)

 咲-Saki- 218局~235局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)

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咲-Saki-218局~第235局 感想

 

「CMあけたぞおまえらーッ!!」ということで、皆様お久しぶりです。片岡優希です!.....じゃなかった、ふわふわです。

 

ここ1年近くかなりバタバタした生活を送っていた関係でブログの更新が出来ずじまいの日々が続いていたのですが、ようやく一段落ついて落ち着きを取り戻してきましたので、9月から『咲-Saki-』の最新話感想記事を再開していきたいと思います。

 

ブログのコメント欄やTwitter等で頂いている通知に返信が出来ていない状況で大変心苦しい限り(コメントありがとうございます...)ではありますが、体調面が原因で更新が止まっていたとかそういう理由ではないので、今後もよろしければお付き合いいただけると幸いです。

 

 

<前回の感想>

 

 

咲-Saki-218局~第235局 感想まとめ

 

....というわけで前回の更新から1年近く期間が空いてしまったので、更新できていなかった「第218局~第235局」の内容と個人的に気になった部分について今回は簡単に書いていきたいなと。

 

自分の備忘録も含めて、下記3点構成で内容を振り返っていきたいと思います。

 

 

決勝先鋒戦決着(~第219局)

 

決勝先鋒後半戦の最終局。

 

怒涛の八連荘で大量リードを獲得した照の強さが際立つ中、最後まで自分の為すべきことを全うしようとする優希、玄ちゃん、ガイドさん、三者それぞれの姿がきっちり描かれていた点も決勝戦における見どころの一つになっていました。

 

下家の優希が度重なる鳴きで照のツモ番を飛ばし、玄ちゃんの"ドラ送り"で照の和了り牌ツモを完全ブロック。そして詰めの展開として、最後の最後にガイトさんがギリギリの捲り合いを制し照に倍満の親被りを浴びせる。

 

 

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ドラ送り(第219局)

 

亡き母との思い出の象徴であり、麻雀を通して見る「彼女の生き方」そのものでもあり、さらに言えば待ち続けてきた彼女を縛るものでさえあった「ドラ」。

 

そんな、彼女とドラの関係性を印象的に阿知賀編で描き切り、準決勝で見せた前に向かうための「お別れ」を経て、ずっと手放すことのできなかった『ドラ』というファクターを最強のチャンピオンに一矢報いるための布石(=ドラマ)として演出する。

 

王道ながらも非常に熱い気持ちにさせてくれたことは間違いないし、(長い間ファンとして読み続けている目線や期待感が入っているにせよ)、こういう描写こそが単なる能力バトル漫画に留まらない『咲-Saki-』という作品の魅力で、ここから続いていく闘牌に対してもこの熱量を期待する読者がいる。だから今なお読み続けていられる。そんなことを感じた展開でもあって。

 

照が妹の咲さんを彷彿とさせる嶺上開花和了る場面もありましたし、先鋒戦は宮永姉妹スキー的にも見どころアリな対局でしたので、いずれ描かれる大将戦への伏線としても良い先鋒戦だったのかなと。そう思えた内容でした。

 

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そして、そんな白熱の決勝先鋒戦の収支結果については下記の通り。

 

〇決勝先鋒戦結果

1位 白糸台高校(西東京):164300点

前半戦:+54500点 / 後半戦:+9800点)

2位 臨海女子高校(東東京): 94700点

(前半戦:-37500点 / 後半戦:+32200点

3位 阿知賀女子学院(奈良):74500点

(前半戦:-34100点 / 後半戦:+8600点)

4位 清澄高校(長野): 66500点

(前半戦:+17100点 / 後半戦:-50600点)

 

いや、マジで照さん半端ないって強すぎ...................。

 

まぁ想定の範囲内ではありましたが、結果だけを見ると決勝先鋒戦は照の圧倒的一人浮きで終幕。

 

後半戦単体で見れば最後のオーラスに倍満をツモったガイトさんが大きくプラスになってはいるものの、総合するとマイナス収支になっちゃうのが何ともエグい。そりゃ、流石のネリーさんもツッコミたくなっちゃいますよねぇ.......。

 

 

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火力の嵐(第220局)

 

ワハハ.....。半荘2回でこんだけ和了ってもきちんとマイナスという圧倒的恐怖。

 

しかも玄ちゃん以外はドラを絡めた手作りが基本出来ない条件下でこの火力なわけですから痺れますよね。

 

前後半で2回天和を和了ったはずの優希も後半に大きく後退し、気付けば1位の白糸台に対して10万点近いビハインドを追う形になってしまいましたので、我らが清澄高校がここからどう追い上げていくのかも要注目です。

 

 

部長の負傷と中堅戦の展望(第220局/第221局)

 

....という感じの雰囲気で先鋒戦が終了した流れから一転、「部長の負傷」というまさかまさかの展開が描かれてしまうことに。

 

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部長の右腕(第221局)

 

 

えっ......。(困惑)

 

いや、まぁ部長自身も言っている通り、腕の負傷が実際ダイレクトに闘牌へ影響するかと言えばさすがに微妙だとは思うのですけれど、しかしわざわざこの展開を描いたということはロンオブモチで「試合の展開に強く影響が出ますよ」と言っているようなものなわけですよね.....?

 

となると、果たしてこの状況が部長にとってプラスに働くのかマイナスに働くのか。

 

ベタな展開予想をしてしまうのなら、負傷によって序盤は思うように闘えず、中後半で盛り返していく....みたいな流れになりそうな感じもあるのですが、正直それだと安易すぎるのではないかといいますか、何と言ってもこれから描かれるのは"決勝戦"なわけですよ。

 

清澄高校を代表する一人として、チームの指揮官であり部長として、そして「竹井久」として。どれを取って考えても、極めて大切な試合と言えるのがこの決勝戦という大舞台。

 

家庭の事情で私立の風越に通うことが出来ず、幽霊部員すら辞めてしまった部室でたった一人牌を握りながら「全国優勝の夢」を見ていた二年前があって。その翌年にまこが入部して2人になり、そのまた一年後ようやく全国を共に目指していける後輩たちと巡り合うことができた。

 

多くのライバルと協力者を得た長野県予選を経てインターハイの切符を手に入れ、迎えた全国大会2回戦では緊張とプレッシャーのあまり持てる力を十分に発揮することが出来ない場面が描かれるなど、部長が「全国優勝」に対してとても強い思い入れを抱いていることはもう繰り返し語るまでもなく周知の事実なわけじゃないですか。

 

そんな背景を考えると、やっぱりこの決勝中堅戦は清澄の部長・竹井久にとって一つの到着点であり集大成でもあると思うんですよね。ゆえに、中堅戦で部長がどういう闘いを見せてくれるのか期待に胸を膨らませ過ぎて巨乳になってしまった人も決して少なくはないと思うわけです。

 

 

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竹井久のルーツを辿る(第234局)

 

現に第234局のお話の中でも部長にまつわる回想シーンがまこを通して小出しに描かれてもいましたし、2年生時点の部長はまこの実家の雀荘「roof-top」へ頻繁に通っていて、

 

ここを追い出されてしまっては....

わたくし行く場所がないのでございます

 

と言っていたことから、作中初期から示唆されている「家庭の事情」とやらが結構複雑なのだろうということが読み取れたりもしている。加えて、

 

①:「上埜」から「竹井」に性が変わっていること

②:3年前のインターミドルで突如姿を消した理由

③:風越のような私立に通える金銭的余裕がないこと

 

上記3点を踏まえても、インターハイ勝戦の対局の中で「竹井久」という人の過去とルーツを辿る展開が描かれるだろうことは想像に難くないし、きっとそれは、おそらくこの世に多数存在する部長ファン待望の瞬間でもあるわけですよ。

 

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過去の部長(第234局)

 

だからこそ、決勝中堅戦は今まで描かれてきた部長の対局と比べても文句なしに一番の展開だったと思わせてくれるものを見せてほしいなって。

 

何だかんだで今回の決勝中堅戦は毎度一番楽しみにしている大将戦と同じくらいの温度感で期待している自分がいてハードル爆上がり中なんですが、近年の僕の涙腺の緩さからして部長関連のエピソードは普通に泣く自信しかありませんから。

 

部長のダイナミックツモ演出が(マナーの是非はともかく)彼女の調子の良し悪しを図るバロメーターとしても彼女のルーツを辿るという意味でもわりと無関係ではない気がしますし、「右腕の負傷」に絡めてどう部長の過去が明かされるのか楽しみにしております。

 

決勝次鋒戦開幕(第222局~第235局)

 

はい。最後に現在進行形で描かれている次鋒戦の展開について。

 

大火力の応酬と宮永照を止めるという一大ミッションが命題として掲げられていた先鋒戦からのバトンタッチとしては比較的クレバーな展開にも思える次鋒戦ですが、さすがに全国最上位校同士の激突というだけあって火力のエグさはやはり健在。

 

 

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一筋縄ではない次鋒戦(第235局)

 

〇次鋒前半戦終了時点の点数状況

1位 白糸台高校:142000点(-22300点)

(次鋒前半戦:-22300点 / 後半戦:点)

2位 阿知賀女子学院: 101300点(+26800点)

前半戦:+26800点 / 後半戦:点)

3位 臨海女子高校:98600点(+3900点)

(前半戦:+3900点 / 後半戦:点)

4位 清澄高校: 58100点(-8400点)

(前半戦:-8400点 / 後半戦:点) 

 

中でも宥姉の安定感は抜群で前半戦の攻防で阿知賀女子が2位に浮上し、トップ白糸台との点差を大きく詰める結果に。

 

あくまでも描写から受ける印象だけで言うならそこまでの力量さがあるイメージはなかったと思うのですが、こうも点差として浮き出てくると、防御面でも攻撃面でも立ち回りの上手い宥姉の活躍には確かに目を見張るものがあります。

 

玄ちゃんほどではないにしても「赤い牌」が集まる能力はやはり打点も高くなりやすいですし、そのうえ赤土先生が信頼を寄せるほど「押し引きのセンス」に優れているのなら、収支が安定するのも納得ではありますからね。

 

阿知賀編としては非常に頼もしい存在であった宥姉も、清澄サイドから見るとこの壁を超えていかないといけないのか...と思わされる中々にハードルが高い相手。

 

応用力と柔軟性に優れた能力であることは阿知賀編でも指摘されていましたが、その能力を使いこなす駆け引きのバランスも赤土先生お墨付きときているので、宥姉の安定感はさすがの決勝メンツでも崩していくのが困難なのかもしれません。

 

 

 

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宥姉強し(第230局)

 

このまま宥姉が安定した打牌を貫くのか、それとも他3校が切り返しを図るのか。

 

照が圧勝した以上ある程度仕方がないことではあるにせよ、後続の白糸台メンバーにも活躍してほしいし、当然まこの奮闘にも期待したい所存。臨海の郝さんはお団子髪がとても似合っていてちょー好みです。

 

あと、和はちょいちょい出るのに咲さんの霊圧が最近消えすぎている気がするので、そろそろ出番をお願いします立先生!

 

ということで、9/3発売号で掲載予定の第236局に期待しております。


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『咲-Saki-』/小林立ヤングガンガン」より引用しております。

『彼女、お借りします』164話 感想:家族じゃなくても分け合える......和也の告白とちづるの涙

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彼女、お借りします 164話 感想

彼女、お借りします 164話(最新話)感想 ネタバレ注意

 

千鶴と和也の一日デートもついに大詰めです。

 

服屋で洋服をプレゼントしたところから始まり、「千鶴の好きな映画」「オシャレなお店でのランチ」「ハイタッチを交わしたボルダリング「大盤振る舞いの蟹ディナー」....等々、千鶴に楽しんでもらうためのプランを不器用ながらも考え和也は今日という一日を盛り上げようとしてきました。

 

そして、一方の千鶴もまたそんな和也の"気遣い"を無下にしないために純粋にこのデートを楽しんできたわけですよね。

 

誰もが羨む「理想の彼女」とその「お客」として、お互いに想うことはあれど「核心」には触れず、進みつつも踏み込まない距離感が2人の間には存在していた。

 

その根底には「客の自分にできる事はここまで」という和也の躊躇いと「人に頼ることが苦手」な千鶴の性格が織り交ざっていて、2人とも「レンタル」という繋がりを必要以上に意識してしまっている現状が読み取れる。事の良し悪しはともかく、ラブコメ物語としてはそんな2人の微妙な関係性に若干以上の「もどかしさ」を感じていた....というのが正直な本音ではあったわけです。

 

 

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震える肩(第163話より)

 

しかし、そんな枠組みの中にあって、ついに和也の"想い"ちづるの"弱さ"が溢れ出す展開が今回描かれることに。

 

借り物としてではない彼女の本当の「夢」を知り、その一部に関わる形で共に一本の映画を作るまでの間柄になって。「水原千鶴」という一側面の彼女ではなく「一ノ瀬ちづる」として彼女の幸せを心から願うようになった。

 

だからこそ、肩を震わせて俯く彼女の姿を見て、思わず理屈で考えるよりも先に想いが溢れ出してくる。

 

 

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和也の想い(第164話より)

 

誰よりも強くて、しっかり者で、いつだって精一杯に生きている「憧れの彼女」。

 

情けない自分をちゃんと叱ってくれて、そばにいるだけで勇気が貰えて、キレイで優しい「理想の彼女」。

 

そして、周囲に迷惑を掛けないよういつも笑顔で、本当に悲しい時だけはほんのちょっとだけ泣いてしまう「等身大の彼女」。

 

その全てが「一ノ瀬ちづる」であり、そんな彼女こそが"理想の彼女"なんだと。だからこそ、辛い時にまで我慢をして「理想の彼女」を演じようとしなくていい。泣きたい時には泣いたっていい。

 

自分の憧れた「理想の彼女」はそういう女の子だから。そういう部分も引っ括めて「一ノ瀬ちづる」に惹かれたのだから。それが和也が伝えたかったこと。思わず溢れ出た胸の内にある本心。

 

 

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ちづるの涙(第164話より)

 

そんな和也の"告白"を描いた流れから、全6ページ12コマを豪快に使って「ちづるの涙」を表現していた一連のシーンがもう今週の全てではないでしょうか。

 

強い自分であろうと「鉄の鎧」を身に纏ってきた彼女がようやく他者に心を開き、頼れる存在として和也の胸の中で涙を流す。

 

 

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思い出と想いは生き続けていく(第163話/第164話より)

 

小百合さんが勝人とちづるの存在に支えられて生きていたように、「幸せ」も「喜び」も「悲しみ」も「困難」も.....その全てを分かち合って生きていける「大切な誰か」が傍にいてくれること。

 

そして、大切な家族を失ってしまったちづるにも「彼女の力になってくれる人」「頼りにしていい人」がいるんだということ。

 

「夢は必ず叶う」という勝人の想いと「女優として生きた」小百合さんの背中はちづるの胸の中でいつまでも生き続けていくし、その灯火(人生の比喩でもある線香花火の描写がとても秀逸でした....)を受け継いだちづるがこれからの人生を「大切な誰か」と共に歩もうとしている。

 

3年という連載期間を経て紡いできた千鶴と和也の物語が今ここでようやく「一つの到達点」にたどり着いたのだと。そんなことを強く感じた第164話のお話でした。

 

 

 

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集大成(第164話より)

 

 

 

家族じゃなくても分け合える

 

さて。そんな感慨深い展開であった今回のお話ですが、一方で和也が抱き締め返さなかった点は正直賛否が分かれそうではありますよね。

 

 

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今はまだ抱き締め返せない(第164話より)

 

順当に考えてここまできて「それはないよなぁ....」と思ってしまうのが男目線の実情ではあるんですが、2人の関係が停滞している原因は決してちづる側だけにあったわけではないので、今後は自己肯定感の低い和也側の意識(自分は「彼氏」ではなく「お客」でしかないという意識)に焦点が当たっていくのかなとは思います。

 

初めての彼女が麻美ちゃんだったり、次に出会ったヒロインが千鶴だったり、比較的「芯の強い」ヒロインとの交流から始まった経緯が関係しているためか、和也って自分の不甲斐なさみたいなものを人一倍意識している節もありますから……。

 

 

 

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家族じゃなくても分け合える(第98話より)

 

まぁ、瑠夏ちゃんや墨ちゃんのように和也のことを優しく肯定してくれるヒロインのおかげで少しずつ前に進んでいるのが『かのかり』ワールドの良いところだと思っているので、他ヒロインとの関係も含めてここからのお話を楽しみにしていきたいなと。

 

「家族じゃなくても分け合える」という本作の根底にある極めて重要なテーマを和也に気づかせてくれたのも墨ちゃんなので、「墨ちゃん=キューピット=天使」という説を唱えつつ、来週の展開に期待しております。

 

 

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『彼女、お借りします』/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。

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