ぼく勉 問142 感想「泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ①」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
うるかが積年の想いを成幸くんに打ち明けた前回の『ぼく勉』。
今回はその余韻のまま「うるかの長編」へとストーリーが移っていき、今まで深堀されずにきていた「成幸くんの気持ち」にも焦点が当てられていくという流れでお話が展開されていました。
まぁ順当に「うるかエンド」でオーケーってことなんでしょうし、正直アニメの最終話を視聴する前からそうなんだろうと思っていたので個人的には驚きも何もなかったのですが、しかし、視聴者目線でアニメに対する率直な意見を述べるのなら「過程をすっ飛ばして結末だけを描くことに何の意味があったのかな」とは思ってしまいますよね。
今まさに佳境にある原作の展開を頭またぎで飛び越えるようなエンディングを用意してまでアニメで伝えたかったことは一体何だったのか。
もちろん、原作と違ってアニメには尺の都合がありますし、最後まで描けないならせめて「アニメなりの答え」を刻んでおきたかった...という作り手側の意図もあったのかもしれません。生み出され世に出たものが"全て"で、そこからどう楽しむのかがエンタメだという意見も全くもってその通りでしょう。
とはいえ、やっぱり物語である以上「奥行き」だけはしっかり描いてくれないときっと僕は本心から祝福したいとは思えない。『誰と結ばれるか』も重要なことですが、何よりも一番は『どう結ばれるか』にかかっていると思っていますから。
奥行きを探り、彼と彼女らの気持ちを追いかけてこそ最高の結末にたどりつける。
積み上げてきた時間も、歩いてきた軌跡も。最後まで大事に抱えたまま、ちゃんと卒業してちゃんとゴールテープを切っていきたい。そんな展開が描かれてくれることを切に願いつつ、紛うことなき「原典」としてのストーリーを今日も今日とて楽しんでいきたいと思います。
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ぼく勉 142話:泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ①
さて。そんなわけで今回から「うるかの長編」がスタートです。
例によって気になるのが、
泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ
というサブタイトル。人魚姫はそのままうるかを指しているとして、「泡沫」と「約束」と「濡つ」の3点がポイントと考えて良さそうでしょうか。
はかなく消えやすいもののたとえである「泡沫」、ある一定の期間を隔てた"誓い"がなされるのではないかとも読み取れる「約束」、そして"涙"を連想させる「濡つ」。
そんな意味深なキーワードが並列的に機能し、いよいよ恋愛軸のお話が盛り上がっていくのだろうと思えた長編の幕開けだったわけですが、
返事とかしなくていいから
まさかまさか、告白者であるうるかの口からもたらされたのは「返事とかしなくていい」「卒業式の後(あとほんの数日後)に日本を発つ」という2つの宣言でした。
この時点でアニメの展開(アニメでは空港のシーンが「翌年6月某日」とかになっていましたよね)とはやや異なる状況になっていそうとも解釈できますが、一方、前者の「返事とかしなくていいから」という台詞の方はその"本心"が気になるところですよね。
もうすぐ離れ離れになることが最初からわかっていて、それでも「告白」をしようと心に決めていたうるか。
真冬先生の親戚が営むペンションで卒業旅行を満喫するその姿は、今までの慌てふためく乙女なうるかちゃんとは違ってどことなく「吹っ切れている」ようにも見えます。
返事を聞くのが怖いから保留にしている...というわけでもなさそうですが、ならどうして彼女は成幸くんからの返事を聞こうとしないのか。
スキーにカラオケにお風呂。いつも通りの賑やかなドタバタコメディが描かれながらも、手渡されたバトン(=5年分の想い)をしっかり受け止めようとする主人公・唯我成幸くんの姿がそこには描かれていました。
2人の告白
全員が「夢」のスタートラインに立ち、「告白できない」うるかがついに告白を達成することもできたこの状況。
しかし、2人が手を繋ぎ合うために必要なピースはまだ揃ってはいません。唯我成幸にとって武元うるかとはどういう存在なのか、その認識が未だ明確なものになっていないから。
「教育係と生徒の関係」であり「同級生」であり「自慢の友達」でもある武元うるか。そんな彼女からの告白を受け唯我成幸は考える。
目の前にいる女の子に自分は一体何を話したかったのか。
5年もの間ずっと自分のことを想い続けてくれていた女の子。そんな彼女の気持ちに対して、「付き合う」「付き合わない」の二者択一で返事をすることが果たして本当に誠実と言えるのか。
5年間自分が彼女のことをどう見てきて、そして今どう思っているのか。様々な思い出が去来してくる中で成幸くんの胸に芽生えていく感情。その答え。
きっとその問いに対するアンサーを成幸くんが自覚した時、『ぼく勉』の恋物語は真の終着駅へとたどり着くことができるはずです。
水泳を頑張るうるかの姿が中学時代の成幸くんに勇気を与え、成幸くんの言葉がうるかの原動力になっていた。今回のサブタイトルが示唆する「約束」というワードは、そんな2人の関係を象徴するものになっているのかもしれませんね。
離れていても通じ合いお互いの存在に勇気を貰って前を向く。唯我成幸にとって武元うるかはそういう存在であり、その逆もまた然りのはずなんですから。
「今は死ぬ気で水泳がんばるから…っ。だからずっと…ちゃんと見ててねっ!(問91)」と誓ったあの日の決意を胸にきっとうるかは成幸くんの一番になる。留学はお別れではなく夢を叶える為の一歩。だから「今」は返事を聞かずに走り切る。やれることをやり切った末に、今一度手を取り合ってゴールにたどり着いていく2人。
筒井先生が目指しているのはそんな完結なんじゃないかなと、そう感じた問142のエピソードでありました。
....というわけで今回の感想をまとめると、
文乃さんは永遠のメインヒロイン
今週の文乃さんが最高に可愛かった!ってことですよ。
全ての道がローマに通じているように、全ての「可愛い」は文乃さんに通じているまでありますからね。
「手」を取り合うならそこはもう「文乃さんエンドしかないのでは...?」と残留思念が浄化されぬまま残り続けてもおりますが、たとえ恋物語にどのような決着が待っていたとしても、時間を超えて光を届ける星のごとく、文乃さんは永遠に僕の中ではメインヒロインなので問題はありません。
文乃さんのおかげで僕がこの作品を楽しめた事実だけは何があっても揺らぐことはないし、そういう意味でも完結まで確りと文乃さんの感情を追い続けていけたらいいなと。そんなわけで次回も可愛い文乃さんのお姿を期待しております!
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。