五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
『五等分の花嫁』の第11巻が本日9月17日に発売されました。
今巻の表紙を飾るのは、純白のドレスに身を包んだ花嫁姿の五月。色っぽい表情も相まって「小指の約束」を連想させる装いになっている点がまた趣深いですよね。
「約束は"小指"から"薬指"へ――」
という具合に、五つ子ゲームにおける「小指」担当の五月、あるいは「薬指」担当の四葉ちゃんが"永遠の約束"を誓うヒロインとなるのか、はたまた、一花さん・二乃・三玖の誰かが風太郎のハートを射止めることになるのか。
「花嫁衣装」の表紙絵が5人分一周して次の「第12巻の表紙」も俄然気になるところですし、物語のラストに向けてここから益々作品全体が盛り上がってくれたら嬉しいなと。
そんな人気の一端を担う「過去編」収録の第11巻、簡単にエピソードを振り返っていきましょう。
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第11巻:明かされる"過去"と運命の"出会い"
第11巻は第87話「私と姉妹①」から第95話「分枝の時②」までを収録。
細かいポイントに関しては、マガジン掲載時に各話の感想記事を書いておりますので、よろしければそちらもご参照頂ければと思います。
第87話:私と姉妹①
京都での修学旅行編が幕を閉じ、物語は一度五つ子たちが小学生だった頃の時代(6年前)まで遡ることに。
5人みな一緒であり、5人みな同じであること。他の姉妹たちが疑問を持たずにいたその認識に対して、四葉ちゃんはひとり微かな「違和感」を覚え始めていました。
「瓜は五つに切っても同じなのかな」
「お手本かぁ...」
そんな彼女の心情は上記の台詞でも表現されている通り。
一人一人違ってはいけないのか。全員が同じである必要はないんじゃないのか。「みんなのお手本になれる」というサッカー監督からの肯定評価に嬉しさを感じ、姉妹たちと自分との間にある「違い」に気付き始める四葉ちゃんの姿がそこには描かれていたのでありました。
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第88話:私とある男子①
「必要とされる人間になりたい。」「自分がいることの意味を見つけたい。」
そんな想いを抱いてきた四葉ちゃんが6年前の京都で出会ったのは、同じ境遇にいた男の子・上杉風太郎君でした。
お互いがお互いの存在に励まされ、
「私はお母さんのために」
「風太郎君は妹さんのために」
「一生懸命勉強しよう!」
と未来に向かって笑顔で「約束」を交わす2人。
共に目指すべき目標を共有できる存在がいてくれること。自身のアイデンティティを求める過程で不安や迷いを抱えていた四葉ちゃんからすると、そんな風太郎の存在はまさに「希望」そのものだったのでしょうね。
風太郎が「写真の子(=四葉ちゃん)」に出会って勉強を頑張り始めたように、四葉ちゃんもまた風太郎に出会って自分の道を進む決心をする。そんな2人の関係性には溢れんばかりの「特別さ」を感じさせるものがありました。
第89話:私と姉妹②
しかし、徐々に運命の歯車は狂い出す。
風太郎君に自分と一花さんの違いを見分けてもらえなかったこと、大切な母を喪ってしまったこと。そうした様々な"亀裂"が四葉ちゃんの目標を少しずつ変容させていくことに繋がってしまいました。
お母さんのために。その目標を実現させることも叶わず行き場のなくなった想いたちが、姉妹たちとは違う自分になりたい(見分けてもらうためにはそうならなくてはいけない)という「自我の暴走」に変わっていく。
一番にならずとも
あなたたちは一人一人特別です
と語る母・零奈さんの真意──「個」としての中野四葉を愛し大切に想う気持ち──に気付くこともなく、姉妹たちよりも「特別であろう」ともがく四葉ちゃんの姿。
そこに中野四葉が辿った迷走の痕、「過去の失敗」がある。
中学に進学し、容姿や性格や能力に少しずつ違いが生まれてきた彼女たちの様子には、それぞれが「特別」な存在であるという客観的事実を見て取ることができたというのに...。
「特別」であるために姉妹よりも何かができる自分を目指して奮闘し、その果てに待っていたものは「追々試不合格による落第」──つまりは「転校の宣告」──というあまりにも悲惨な現実でした。
その後の流れについては第56話の四葉ちゃん回でも語られていた通り。
姉妹たちが四葉ちゃんを独りにさせないためにみんなで「転校」することを選び、そんな姉妹たちに対して彼女はずっと負い目を抱き続けている....と。
そういった経緯を経てついに、「運命の再会」へとお話がつながっていくことと相成るわけであります。
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第90話:私とある男子②
5年前に京都で出会い、同じ目標を分かち合った思い出の男の子。
目の前にいる風太郎とその思い出の子を瞬時に結び付けられるあたりに彼女が抱き続けてきた想いの深さが表れてもいるわけですが、しかし同時に「変われていない自分」を見せるのが恥ずかしくて言えないという想いも拭えなくて....。
今の自分を見せたくないという感情と、自分のことを認識してもらいたいという欲求のギャップ。そこから転じて、
もしこのまま勉強を頑張れたら
風太郎くんに私のこと言ってもいいのかな
と思い至り勉強を頑張る決心をするも、次第に他の姉妹たちも風太郎に惹かれていくという葛藤の日々は続き...。
姉妹たちの幸せを第一に優先するために、五月に協力を仰いで「写真の子」としての自分にさよならを告げ、
「好きだったよずっと」と自身の恋心を過去のモノにしようとしている四葉ちゃんの在り方。
これまでの伏線を四葉ちゃん視点で回収していく流れがあまりにも切なくて泣ける、『五等分の花嫁』史上屈指のベストエピソードと言っていい神回だったように思います。
「上杉さん」という呼称が「風太郎君」へと変わるとき......。そんな日が訪れてくれることを心から願うばかりですね。
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第91話:偶然のない夏休み
そんな切ない流れから一転、夏休みに入って五つ子たちと会うキッカケがなくなった風太郎が彼女たちをプールに誘うことになるという中々に感慨深い展開が第91話では描かれることに。
同時に、アパートの取り壊しを理由に五つ子達が元の家へと戻ることにもなる回でしたが、
えぇ私はもういなくなるので
これからは妹たち4人でということになります
と電話で(マルオと?)話していた一花さんの様子が何とも意味深に描かれており、後に続く「分枝の時」編の取っ掛かりとなるエピソードでもありました。
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第92話:秘密の痕
風太郎からの誘いを受け、海水プールへと遊びにくることになった五つ子たち。
えぇ、満を持して描かれる「水着回」というわけですね。お風呂場でひと悶着...みたいな展開こそあれど、プールや水着回らしきお話は何だかんだでこれまでありませんでしたし。
冷静に考えて美少女5人を男1人で誘う風太郎の胆力は中々のものだと思いますが、そんな中でもとりわけ際立っていたと言えるのは、やはり五月と風太郎の名コンビっぷりでしょうか。
風太郎に「手握れば平気か?」と言われ、思わず「ドキン」と頬を赤く染めて意識してしまう五月。
後々の描写からも、結局五月が風太郎の手を握っていた事は明白なわけですけれど、さて彼女が風太郎に寄せている感情は一体どんなものなんでしょうね。
そこにあるのは、単なる「信頼の気持ち」なのか、あるいは「無自覚な恋心」なのか。
男の人はもっと見極めて選ばないといけません
という零奈さんの言葉に五月が捉われ続けてきたことも踏まえると、このまま五月が恋愛感情を発露させることなく作品が完結するとは正直思い難い面もありますので、ここからの展開を見守っていきたいなと個人的には思っています。
第93話:ツンデレツン
風太郎との仲を進展させるため「押してダメなら引いてみろ」作戦に出た二乃。
戦略自体は見抜かれていたものの、あまりにもツンが強過ぎて演技に見えずに誤解されてしまう展開になっていたところは斬新で面白かったですよね。
自身の思い上がりを恥じる風太郎と「やりすぎたーっ!!」と焦る二乃の行き違いが何とも微笑ましく、
最終的に、破壊力満点のデレで風太郎の本音(=「ビビらせやがって」)を引き出す流れに落ち着いていた点も凄く印象的でした。
零奈さんのお墓参りやマルオとの心理的溝などの家族エピソードを描きながら、「ツン」も「デレ」も全力100%の二乃の想いを浮かび上がらせる構成になっていたところが凄く上手いストーリー運びだったなと思います。
第94話:分枝の時①
お母さんのお墓参りに来ていた二乃たちは、一花さんから「私 二学期からは学校行かないから 学校辞めるんだ」と告げられることに。
お仕事に専念するために学校を辞める。その言葉に偽りこそないものの、当然それが彼女の「本心」であるわけもなく、
私にはこの道しかない
覚悟が決まった気がするよ
と語りながら「偽りの笑顔」で表情を作る彼女の姿には、今しかできないことに対する未練、「みんなと一緒に卒業したいよ」という飾らない本心が隠されていました。
第95話:分枝の時②
そんな一花さんに対し、風太郎が自分の「飾らない本心」を伝えていたシーンもまた最高に映える構図になっていましたよね。
クリスマスのあの日、新しいアパートを借りてまで6人でいられる場所を守ってくれたこと。試験勉強との両立をこなしながら、女優の仕事を頑張り自分を雇い直してくれたこと。そんな一花さんへの「感謝」を風太郎はずっと返したいと考えていました。
だからこそ、全ての判断を彼女に委ねた上で、
もし学校に未練があるなら
この金で俺に雇われてくれ
と、風太郎自身が「自分の気持ち」を言葉にすることに物語における意義があったのでしょう。
今しかできないことを楽しみ、みんなで卒業していくこと。自分と同じようにそんな未来を迎えたいと思うならこの提案に乗って欲しい。「家庭教師」という立場からではなく、他でもない「上杉風太郎自身」が一花さんと共にそうありたいと思っていることを伝える。
それこそが一花さんの「本心」を引き出す鍵となっていました。
それぞれの道、異なる方向へとその枝を伸ばしながらも、元となる「幹」は同じ。
「分枝の時」編は、まさしくそんな「絆」や「繋がり」を感じさせてくるエピソードでした。いち早く「夢」のスタートを切った長女・一花さんの姿が、他の姉妹たち──特に四葉ちゃん──にどのような影響を与えていくのか。
そういったところにも注目をしつつ、今後のお話を読み進めていきたいなと。表紙絵の公開も含め、次の第12巻のリリースも今から楽しにしております!
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※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。