五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『五等分の花嫁』を読了。
前回に引き続き、...というより前回以上に心躍る「日常回」の開幕です。率直に申し上げて、ひたすらに「水着姿」の五つ子さん達が魅力的な回でしたね。地球上で初めて「水着」を考案してみせた人にノーベル賞を贈りたい。そんな事を思わされる程度には、人類のH...もとい叡智が詰まっていたお話でもありました。
しかし、そんな「日常」物語の中でも「五月の立ち位置」が意識的に強調されている点はやはり気になるところでしょうか。
クラスメイト達との「海」を経て、五つ子達を「プール」へと誘うことにした風太郎。そんな彼の"前向きな変化"(=能動的歩み寄り)が印象的な展開として物語に"動き"を与えているわけですが、一方で、じゃあ五月の方にはどんな変化が訪れていくの...?という視点が一つポイントでもありますよね。
夏休みに突入し、零奈さんの命日(=8月14日)が徐々に近付いてきているタイミングであることを考えても、おそらく五月視点でお話が構成されているのは偶然ではないのでしょうし、今回はそういった事情も踏まえながらお話を振り返っていきたいと思います。
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第92話:秘密の痕
さて、そんなこんなで今週は、五月視点で描かれる「五つ子達+風太郎」のプール回であります。
少しオマセになった中学生らいはさんが同伴することもなく、完全に6人だけで過ごす日常の一幕。
らいはの水着姿は既に前回の「海」で描かれておりましたので、きっとプール回は6人のお話になるのだろうとは思っていましたが、らいはの手引きや助言を介さずに風太郎が自分から五つ子達と休日を過ごすべく動き出した点に前回との明確な対比が伺えますね。
「せっかくの休日だ 勉強せずして何をするっていうんだ(第36話)」と言っていた頃を思うと、感慨深いものが込み上げてくるのも必然というものでしょう。
うぅ...
上杉君と皆が会うことはもう避けられないのでしょうか...
しかし、そんな流れの中で、五月が「上杉君と皆が会うことはもう避けられないのでしょうか...」なんて言っているのは何とも面白い構図ではないでしょうか。
以前、「あなたは...私たちに必要です(第34話)」と語っていた張本人が、風太郎と姉妹達の接触を避けようと奮闘する。混線中の恋愛事情を知ってしまったが故の行動なわけですが、「見ていてくださいお母さん!」という台詞にも表れている通り、「母親代わり」としての意識が彼女の中にはまだ確かに眠っているのですよね。
お母さんが遺した言葉。お母さんが願っていた事(=5人仲良く助け合って生きていく事)。そういったものに未だ強く影響を受けているからこそ、5人の「平和」の輪を乱し始めている風太郎の存在に思う所がある。
「家庭教師」「友達」という存在としての上杉風太郎に好意を持ちながら、男女関係としてのそれに度々否定的な言葉(「どうかしてます...」)を持ち出していたのも、こういった背景が関係しているのかもしれません。
そして、そんな事情をベースに、風太郎の視線が自分に集まるようアプローチを掛けていたはずが、逆に一花さんや四葉ちゃんから冷ややかな視線を向けられてしまっている(ように見える)あたりも、最高に五月らしくて面白かったなと。
最近、こういう五月の天然空回りポジションがとても愛おしく感じられるのですが、これがいわゆる「五月病」の兆候というやつなのでしょうか。五月が『五等分の花嫁』のマスコット的存在と言われるのもわかるような気がしてきますね...笑。
無自覚な意識と似たもの同士な2人
とは言え、そんな五月ちゃんの中にも「男子としての上杉風太郎」を肯定する意識が眠っているのかな.......と思わせてくれる様子が描かれてもいました。
それもそのはず。なにせ、「こんな俺を選ぶなんてどうかしてる」と自身の至らなさに言及し、寄せられている恋心に対して恋愛本を頼りに向き合おうと努力している風太郎の姿は、姉妹達の気持ちを知ろうと色々不器用に考えて回っていた五月の姿と重なる部分があったわけですから。
不器用なのは五月だけではなく風太郎も同じ。
「恋愛感情」の理解という面でまだまだ発展途上な様子を見せている2人ですが、それゆえに2人の関係は未だに「似たもの同士」そのものなんですよね。
だからこそ、五月もまた彼にシンパシーを感じ、「あなたの思うがままにしたらいいのではないでしょうか」と語っている。
要するに、風太郎と姉妹たちの接触を避けようと動いていた五月が彼の行動を肯定しているわけです。そしてこれは、「上杉君であれば姉妹たちを不幸にはしないはず...」という信頼の念があってこそ言える言葉でもある。自分が姉妹たちのことを思って行動を起こしていたように、上杉君もきちんと姉妹たちの事を考えて行動していることが理解できた。五月の心情変化の流れを追うのなら、そういった解釈も可能でしょう。
ただ、そういった流れの中でも、五月が風太郎を(おそらく無自覚に)意識するシーンが描かれているのはやはり気に掛かるところではあるわけで...。
もちろん、現状の五月が風太郎に対して抱いている好意は「友情」や「信頼」のそれであって、「恋心」ではないと思っています。少なくとも自覚して隠しているようには見えませんし、あの時点で風太郎とキスをする動機(=意志)が五月にあったとも考え難い。それは先週や今週のお話からも読み取れる通りですので、「五月=花嫁」の可能性はこれまで以上に乏しくなったようにも思えるでしょう。
でも、そんなフラットな状態にいる五月の様子を示しておきながら、2人きりのウォータースライダーにドキドキしたり、無自覚に手を握ってしまっていた事に動揺を覚えたりしている様子が描かれていることもまた事実なんですよね。
一花さんには「約束ですよ!本当に手を握ってくださいね!」なんて言っていたのに、当の風太郎に対しては「子供扱いしないでください!」と強情を張る。その前後のやり取りを鑑みても、やっぱり言葉では形容し難い感覚が五月の中で無自覚に芽生え始めているようにも見えるわけです。
ゆえに、それが花嫁ルートに繋がりうるのかどうかはさておき、五月もまた「恋」を経験していく可能性はある。そんな予兆が実際に描かれてもいますし、風太郎の手を握っていたことに「はっ」としている描写を見ても、"含む"ところが何もないとは思えません。
風太郎が自身の「気持ち」に向き合い始めたように、本人さえも気付いていない「感情」を胸の内に宿し始めているかもしれない五月。
そのまま「相談役」としての関係性に収まるのか、はたまた「恋心」へと育っていくのか。一番「恋愛感情」に対してお堅いスタンス(=不器用なスタンス)を有している五月だからこそ、後者だったらとても面白くなりそうだなと個人的には思っていますが、いずれにせよ、似たもの同士の2人が今後どのような関係を築いていくのかは楽しみにしたいところです。
それぞれのスタンスと過去の秘密
一方、一花さんと四葉ちゃんのスタンスが中々に切ない感じで描かれていた点も印象的なポイントの一つでした。
風太郎へと積極的に迫っていく様子がない辺りに彼女達が一歩引いたところから風太郎の事を想っている様子が伺えるわけですが、一花さんも四葉ちゃんも置かれている状況(=心境)としては非常に似通っているんですよね。
罪悪感から来る姉妹たちへの遠慮があって、それゆえに「過去」のことを打ち明けることが出来ずにいて..。そんな2人を見て「過去のことは洗い流したように見えます」「彼とは無関係だったということでしょうか?」などと思い至る五月さんですが、当然そんなはずもないわけです。
その事実は、今週の三玖の姿が全てを物語ってもいて、 想いを封じ込めようとしている四葉ちゃんや一花さんとは対照的に、勇気を出して「告白」をした三玖の表情はとても綺麗に輝いているのですよね。
自分をきちんと見せたことで、世界の見え方も一変する。心の在り方次第で見える景色はいかようにも変えられるのです。後ろ向きだった三玖がこういう変化を示したことは、告白の返事に関係なく、彼女の成長を見守ってきた一読者としてやはり感慨深いものがありました。
だからこそ、四葉ちゃんや一花さんも同様に、勇気を出した人にしか見られない景色を見て欲しいなと願わずにはいられません。
風太郎と寄り添って生きていく未来であれ、風太郎から卒業して生きていく未来であれ、きちんと「秘密の痕」を共有し合って欲しい。今週のお話はそんな事を改めて考えさせられる回だったように思います。
...というわけで、今回の感想をまとめると、
今後の五月に期待
今週の五月さんがとてもとても扇情的だったなってことですよ!
風太郎も徐々に「恋愛」を意識し始めていますし、ここからお話が一気に動いていきそうな気も。
四葉ちゃんと風太郎の2人が日焼け痕を共有していて、かつ五月が握っていた部分のみが秘密の痕になっている点も意味深ですので、過去や零奈関係の事情が今後の物語にどう影響を与えていくのかにも期待したいところですね。来週も楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。