ふわふわびより

劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』感想: わたしは、あなたが望むメインヒロインになれたかな? 加藤恵と安芸倫也がたどり着いた最高の結末!

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映画『冴えカノ』 感想

『冴えカノ』 感想考察 ネタバレ注意

 

本日10/26(土)から公開の映画、劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』を新宿の最速上映で観てきました。

 

映画の感想に触れていく前に少しばかり前説を。

 

以前からこのブログを読んでくださっている方はおそらくご承知のとおり、僕はラブコメ作品が大好きです。人が人を好きになる。それはとても感情的で情緒的なメカニズムだと思いますが、しかし一つ一つの恋には必ず「理由」があって、「プロセス」があって、「物語」があります。

 

どうしてその人を「好き」になったのか。 いつから「好き」になったのか。70億もの人が共存する世界で2人の男女が出会い、様々なプロセスを経て「恋心」に気づいていくこと。泣いて笑ってを繰り返して、"想い"を通じ合わせていくこと。そして、その過程で発生する"感情"の揺らぎにドラマが生まれていくこと。その全部が『ラブコメ』の魅力だと思っています。

 

劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』において、主人公の安芸倫也加藤恵を選びました。美少女ラノベ作家の霞ヶ丘詩羽でも天才イラストレーターの澤村・スペンサー・英梨々でもなく、"普通の女子高生である"加藤恵。どうしてか。

 

それが今回の映画で描かれていた物語の根幹です。なぜ『安芸倫也』にとってのメインヒロインが『加藤恵』だったのか。なぜ他の誰でもなく、彼女でなくてはならなかったのか。

 

以下、そういった内容を中心に感想を書いておりますので、是非劇場で視聴を済ませてからお読みくださるようお願いいたします。

 

 

(※ちなみに原作ノベルは既読済みですが、今回の映画は原作11巻~13巻の内容にアレンジを加え「オリジナル要素」を盛り込んだうえでストーリーが再構成されていましたので映画の内容準拠で感想を書いています。) 

 

 

 <公式サイト>




 

 

冴えない彼女の育てかた Fine』感想

 

さて。2度のアニメ化を経てついに劇場版となった本作――『冴えない彼女の育てかた Fine』――は、倫也と加藤さんが高校3年生に進級して夏を迎えたところからお話が始まります。

 

英梨々と詩羽先輩が大作ゲーム『フィールズ・クロニクル』の開発を目指して超人気クリエイター・紅坂朱音に引き抜かれ、倫也たちのサークル『blessing software』は新体制でゲーム制作を進めていく事になりました。

 

しかし、一番大切なはずのメインヒロインルートのシナリオ作成が上手く行かず最後の最後でゲーム作りは難航を極めることに。焦りから詩羽先輩に教えを乞おうとする倫也くんですが、最終的にこの状況から

 

 

自分にしか書けないものを書けよ

 

と朱音さんに言われてスランプから抜け出していく展開は、やはり物語としても一つの大きなポイントですよね。

 

「自分にしか書けないものを書く」ということは即ち、自分だけの「理想を追いかける」ということ。紅坂朱音でも、霞ヶ丘詩羽でも書くことのできない、安芸倫也が望むメインヒロインとの物語。その答えとは何なのか。

 

そんな流れを経て、加藤さん(=メインヒロイン)と一緒に『これからの物語』を作っていく決断を倫也は固めていくことになります。

 

 

ゲーム制作と恋

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2人きりのゲーム制作

 

一方、『倫也が詩羽先輩にキスされた事』を知って嫉妬の感情を見せるなど、冒頭から"ヒロイン"としての風格が凄まじいことになりつつあった加藤さん。

 

Skypeでシナリオの読み合わせを行っている様子はまさしく『2人で理想の物語』を作っていこうとしている…といった感じで、もはや完全に2人だけの「無限ニヤニヤ」空間が出来上がっていました。

 

お互いのことを名前で呼び合ったり、駅のホームで手を握ってドキドキしてみたり…。

 

もうとっくにフラグは立ってる

 

という加藤さんの台詞通り、もうとっくにフラグは立っていたんですよね。

 

シナリオ制作と2人の恋物語は言わば「写し鏡」の関係になっていて。更に言えば、「巡璃、主人公を意識するようになる」というゲームのシナリオをなぞるように、加藤さんが倫也のことを次第に意識するようになっていって

 

 

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加藤さんの恋心

 

そこには確かに、主人公に淡い「恋心」を抱く一人のヒロインの姿がある。

 

「叶巡璃」としてではなく、「加藤恵」として。主人公・安芸倫也に真っすぐ向き合い、『誕生日デート』の約束に舞い上がるメインヒロインの姿がそこには映し出されていました。

 

すれ違う想い

 

しかし、事態はここで起承転結の『転』を迎える事になります。

 

詩羽先輩と英梨々がクリエイターとして関わっている『フィールズ・クロニクル』の制作現場を調整していた紅坂朱音が脳梗塞で倒れてしまったこと。

 

加藤さんの誕生日当日に被せて降りかかってくるあたりがまた非常に憎らしい展開ですが、何にせよこの事件をきっかけに順調だった2人の想いに少しずつすれ違いが生まれていくことになってしまいました。

 

 

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すれ違う想い

 

でも

私たちのゲームは私たちのチャンスだよね

 

という加藤さんの想いに対して、詩羽先輩と英梨々の「夢」を守ろうと一時的に紅坂朱音の代役を引き受けようとする倫也。

 

ここに2人の「気持ち」が良く表れています。倫也が詩羽先輩と英梨々のことを見過ごせないのは、彼女たちに対して「憧れ」を抱いているから。だから、彼女たちの頑張りを無駄にしたくないと思う。尊敬するクリエイターとして、また追い掛ける存在として、2人の夢を守りたい。それが他でもない、倫也の望むこと。

 

 

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加藤さんの葛藤

 

でも、一方の加藤さんからすれば、そんな倫也の選択に当然「葛藤」があるわけですよね。

 

倫也にとって、あの二人はやっぱりどこまでいっても「特別」な存在なんだということを改めて突きつけられてしまったから。「物語のヒロイン」みたいに笑って主人公を送り出せるメンタリティなんて持てるはずもなく、

 

ごめんね、倫也くん...

わたし、やっぱり、あなたのメインヒロインになれないよ

 

という言葉の通り、「安芸倫也が望む物語」を彼女の心は受容できずにいました。

 

どこまでも『普通』で等身大で。『幼なじみ』でもなければ『特別な能力』があるわけでもない自分。加藤さんが流した涙には、そういう諸々の「悲しみ」や「悔しさ」も内包されていたのではないか。個人的にはそんなことを感じる展開が描かれていたように思います。

 

 

加藤恵がメインヒロインになるまでの物語

 

とは言うものの、その「すれ違い」こそが加藤さんとのメインヒロインルートを更に加速させる分岐点になっていたというのがやっぱり物語としてとても上手いところなんですよね。

 

すれ違って、嫉妬して、モヤモヤして。そんな様子の加藤さんはもう「フラット」なんかじゃない。冴えないと言われ「感情表現の起伏」が平坦だった彼女も、今やもう怒ったり泣いたりして『普通』に恋をしているんです。『冴えない彼女』は主人公・安芸倫也と出会う事で立派に恋する「メインヒロイン」へと育っていった。それがこの物語の結論。

 

 

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加藤さんの元に帰ってくる倫也

 

だからこそ、『冴えない彼女の育てかた』という作品の『結』末として倫也が等身大で『普通』な加藤さんに惹かれていくのはやっぱり必然だったんだと思います。

 

「三次元よりも二次元が好き」というスタンスを持って現実を生きてきた倫也が、どこまでも素朴でどこまでも普通――つまりそれは三次元らしさの象徴でもある――のまま"メインヒロイン"へと成長していった加藤さんに惹かれていったこと。

 

強烈な個性や才(=「二次元らしさ」)を持ったヒロイン達――詩羽先輩と英梨々――とではなく、『普通』の女の子・加藤恵と共に現実の中にある『理想』を見つけていったこと。それは、この2人だからこそ辿り着ける、いや、この2人にしか辿り着くことのできない、2人の成長と物語のテーマへ繋がっていく『唯一のルート』だったのですから.........。

 

 

<※追記>

 

 

「憧れ」と「恋」―「特別」と「普通」―

 

さて。そんな経緯で恋物語の結末としては、同じ歩幅で歩いていける相手として倫也が加藤さんを選び「幸せなキス」を交わして無事に大団円...!という感じで締めくくりがなされていましたが、その裏できちんと詩羽先輩と英梨々の気持ちにも焦点を当ててくれていた事が個人的にはとても嬉しかったんですよね.......。

 

 

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2人の想い

 

2人とも本当に倫也のことを強く想っていて。

 

もちろん、倫也からすれば彼女たちの存在は手の届かない『憧れの対象』だったのかもしれないけれど、でもその感情を明確に『恋』と区別して考えることは、やっぱりとても難しいことのはずです。

 

少なくとも小学生の頃の英梨々は憧れの対象などではなく、仲の良い幼なじみであって、同じ夢を志した友達であって、そして「初恋の女の子」でもあったわけですから。

 

もし10年前、英梨々が倫也とすれ違わずに同じ歩幅で歩いていたとしたら…?もし作家・霞詩子のファンとしてではなくもっと違う出会い方をしていたとしたら…?もちろん、そんなifのルートに意味はないけれど、

 

 

彼は間違いなく わたしたちに恋をしていた

 

という台詞の通り、安芸倫也が憧れ「特別な感情」を抱いた柏木エリと霞詩子は紛れもなく彼女達自身なんです。

 

柏木エリは澤村英梨々の一部であり、霞詩子は霞ヶ丘詩羽の一部分。だからこそ、倫也は彼女たちに恋をしていたと言える。無論、それゆえに一緒に歩いていけるヒロインとしてではなく、追いかけられる存在として倫也の前を走り続けるヒロインというカテゴリーに収まってしまったわけでもあるけれど、しかし何よりも大事なことは彼女たちがきちんとその事実を認識し、受け止め、そして「未来」に向かって歩きだして行ったことにあるのではないでしょうか。

 

1対多のラブコメ作品でありながら、結ばれなかったヒロイン達の「恋」にも誠実に向き合って答えを出してくれたこと。英梨々と加藤さんが想いを分かち合うお風呂場のやり取りも最高に素晴らしいシーンでしたし、どこまでも納得のいく物語だったと個人的には思っています。

 

 

エンドロールのその先へ

 

からーの、あのCパートですよ!

 

ラブストーリーは突然に』が流れ出した時はもう不覚にも笑ってしまいそうだったのですが、その後の倫也と加藤さんのイチャイチャ具合 (しかも加藤さんの薬指に指輪がありましたよね...!) が半端ないのなんのって。初期の頃を思い返すと、もう感慨深過ぎて涙が止まらなくなってくる勢いでした

 

 

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最高の恋物語にありったけの感謝を!

 

あの春の日、桜舞う坂道で出会うところから始まった安芸倫也加藤恵の物語。

 

エンドロールのその先で、これから2人がどんな未来を歩んでいくのか。そんな「胸がキュンキュンする」名作を生み出してくださった、丸戸先生、深崎先生、そして映画制作スタッフの皆様にこの場を借りて改めて感謝の言葉を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!

 

 

<感想記事(第2回)>

 

 


 ※本記事にて掲載されている情報媒体は「丸戸史明深崎暮人KADOKAWA ファンタジア文庫刊/映画も冴えない製作委員会」より引用しております。