咲-Saki- 212局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
宮永照と辻垣内智葉。「1年前」の世界ジュニアで"相棒"として共に闘った背景を持つ2人の交流が今回の冒頭にて少し描かれていました。
王者・宮永照のトレードマークでもある連続和了。圧倒的な力で和了りを重ねていくそのスタイルはまさしく"最強"の名を冠するチャンピオンに相応しいものですが、一方で制約が全くないのかといえば無論そういうわけでもなく…。
既に阿知賀編で指摘されている「打点制限(=前局の点数より高い打点での和了に限られる)」に加えて、今回新しく「最初の和了りの打点を極力低く仕上げる必要がある」という条件の存在が判明。
なるほど……。
となると、今まで描かれてきた連続和了の初弾が基本的に「1000点~1500点」の範囲に収まっていたのは、それが能力の基本仕様だったという話ではなく、照がそうなるように意図して仕上げていたということになるのでしょうかね。
「積み棒を抜いた点数で前の局より少し高い手を和了るとその次の局のツモが良くなる」。この能力を最大限に活かすための反動として、あえて1回目の和了りを安手にする必要があったと。
もっとも、
じゃあ2000点以上でいきなり和了るときは
というガイトさんからの問いに「仕方がないときだね」と返していることを見るに、あくまでもツモ運上昇の恩恵が出にくくなるだけで、"連続和了"自体が出来なくなってしまうとかそんなことはないみたいではありますが。
唐突な「ポニーテール(ポニー照)」姿を始め、色々反則的な破壊力を持ったチャンピオンの輝き。先鋒決勝戦「最大の正念場」となる壮絶な闘牌がどのように描かれていくのか。順に見ていきたいと思います。
<前回の感想>
第212局「決断」
〇南3局 2本場 親:辻垣内智葉 ドラ:
さて。番狂わせに次ぐ番狂わせの末、点数移動の激しい乱打戦の様相を呈してきた先鋒戦の闘い。優希の2半荘連続「天和」、玄ちゃんのドラ爆連撃、ガイトさんの技アリ和了。それぞれが持てる力を十全に発揮し、ついに場は「オーラス手前」の南三局2本場まで到達しました。
しかし、本当の闘いは文字通り「ここから」。死力を尽くして稼いできた点棒を守って後続の仲間にバトンを渡すには、この先に立ちはだかる大きな壁を越えなくてはならない。
それが宮永照。前人未踏の強さを誇る高校生1万人の頂点。彼女の前に道はなく、彼女が歩いた軌跡こそが道になるとさえ思わせる最強のチャンピオン。そんな彼女が残り2局となったこの終盤でついにその牙を解放する。
ロン ドラ
2巡目の門前という超スピードで優希から2600を和了。
しかも捨牌にあるをツモ切りしていることから配牌の時点で既に聴牌をしていた模様で、そこから「ダブリーを掛けず」2巡目にあえて「を切ってタンヤオを捨てている」事実を踏まえると、明らかに能力の制約を気にして打っていたことがわかる。
高打点で和了ることも出来た状況下で意図的に2翻に仕上げた照のプレイング。つまりそれは、彼女がこの1局だけではなく「連続和了」を用いてここから連荘の山を築こうとしていることの意思表示でもあって……。
そんな一触即発な流れを背負い、いよいよ「照のラス親」である南4局へ戦況が移っていくことになるわけであります。
チャンピオンの反撃
〇南4局 親:宮永照 ドラ:不明
決勝先鋒戦を締めくくるオーラスオブオーラス。
白糸台以外の三校の至上命題は当然「宮永照の連荘」を阻止することであり、もはや形にこだわってはいられない。あらゆる手立てをもってチャンピオンを止める。それが三者の共通認識。それは誰もがわかっている。
だが……、
ロン
この局も照は2巡目で三色のみ3900を出和了り、一向に止まる気配を見せない。
切りでの三面張にタンヤオも付く形だった中、2巡目にを切った上で単騎に切り替えを行い、
やを選ばずを切っていることもまた、ガイトさんからを引き出すための撒き餌だったという技巧ぶり。
その打ち回しは、一見して和の指摘どおり部長の「悪待ち」と似ているようにも感じられるけれど。実際には読みの強いガイトさんの裏をかいて狙い撃つための仕掛けであって、照が「分の悪い賭け」を選んだわけではない。
「確実に和了るための単騎」。剛胆に和了りを積み上げているように見せながらも、繊細で巧みな打ち回しを行う照のテクニカルな一面を描写することが立先生の目的だったのかもしれない。
他家の強さ(=予想を超えてくる人の意思)をリスペクトし、そのうえで読み勝つ。そんな、壮絶な準決勝を経てまた一つ高みへとのぼった照の"猛攻"がそう簡単に止まるはずもなく、
ツモ
次局の一本場も華麗に2100オールをツモ和了り、一気に2着まで駆け上がることに成功。
〇現在の点数状況(後半戦南4局1本場終了時点)
1位 阿知賀女子 :119100点
2位 白糸台 : 96700点
3位 清澄 : 96500点
4位 臨海女子 : 87700点
そして、追う阿知賀女子との差もいよいよ「22400点」となり、親満直撃でトップ交代さえ見えてきたこの状況下で場は南4局2本場を迎えようとしていました。
止まらない宮永照
〇南4局 2本場 親:宮永照 ドラ:
一方、王者の猛追に危機感が募っていく中、「ドラだけで和了りの形になる2向聴の配牌」を掴むことになった玄ちゃん。
早々に1副露した照の動向を警戒しつつも、
ドラ
この牌姿からをツモって一向聴を作り、勝負に出ることを決断。
自分が和了らなければ、どのみちチャンピオンに和了られてしまう。照の連荘を止めるためには絶対に誰かが和了らなくてはならず、しかもそのチャンスが次いつ訪れるのかわからない。
既に3連続で和了りを許してしまっており、次にチャンピオンが和了るのは最低でも「40符3翻の2本場で8300点以上」の手。だからこそ、この絶好のチャンスで引くわけにはいかない――。
そんな玄ちゃんの思考は至って正常なものではあったものの、
「ナイスファイト玄… 悪くないよ」
「悪いのは」
「今の相手だ――」
いかんせん、相手が全く正常ではなく、不運にも配牌からポツンと浮いていたで照から直撃を取られてしまうことに。
勝負するもしないも2巡目の単騎聴牌なんて避けられるはずもなく、もはや赤土さんの言う通りもう相手が悪いとしか言いようがない。
そのうえ、照の手にドラのが含まれている(描写ミスの可能性もゼロではないかもしれませんが)ということは即ち、彼女の「ドラ支配」が破られてしまったということでもある。
<※12/22追記>
一昨日発売のヤングガンガン掲載の「咲-Saki- 212局」に訂正があります。
113ページの宮永照の手牌ですが、
牌の絵柄が萬子になっている部分、本来筒子が正解です。
(単行本では修正します)http://www.sciasta.com/ritz/ (立先生HP更新)
どうやらドラのが含まれていたのは作画ミスだった模様。和了形は「ドラなし筒子の一通ホンイツ」っぽいですね。
あまりにも圧倒的で目を疑う程に強い宮永照の麻雀。そんな彼女を相手に取り、果たしてガイトさん・優希・玄ちゃんの3人は無事に先鋒戦を終えることができるのか。いよいよ大詰めとなる決勝先鋒戦の闘い、準決勝以上のドラマとカタルシスが味わえる展開を楽しみにしております。
....という流れで次号から4回分の休載をはさみ、次回は3/6発売号で掲載予定。この状況から2ヶ月以上最新話が読めないのは正直辛いですが、年明けの2020年も変わらずに『咲-Saki-』を楽しんでいきたいですね。立先生、2019年も本当にお疲れ様でした。