『彼女、お借りします』164話 感想:家族じゃなくても分け合える......和也の告白とちづるの涙

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彼女、お借りします 164話 感想

彼女、お借りします 164話(最新話)感想 ネタバレ注意

 

千鶴と和也の一日デートもついに大詰めです。

 

服屋で洋服をプレゼントしたところから始まり、「千鶴の好きな映画」「オシャレなお店でのランチ」「ハイタッチを交わしたボルダリング「大盤振る舞いの蟹ディナー」....等々、千鶴に楽しんでもらうためのプランを不器用ながらも考え和也は今日という一日を盛り上げようとしてきました。

 

そして、一方の千鶴もまたそんな和也の"気遣い"を無下にしないために純粋にこのデートを楽しんできたわけですよね。

 

誰もが羨む「理想の彼女」とその「お客」として、お互いに想うことはあれど「核心」には触れず、進みつつも踏み込まない距離感が2人の間には存在していた。

 

その根底には「客の自分にできる事はここまで」という和也の躊躇いと「人に頼ることが苦手」な千鶴の性格が織り交ざっていて、2人とも「レンタル」という繋がりを必要以上に意識してしまっている現状が読み取れる。事の良し悪しはともかく、ラブコメ物語としてはそんな2人の微妙な関係性に若干以上の「もどかしさ」を感じていた....というのが正直な本音ではあったわけです。

 

 

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震える肩(第163話より)

 

しかし、そんな枠組みの中にあって、ついに和也の"想い"ちづるの"弱さ"が溢れ出す展開が今回描かれることに。

 

借り物としてではない彼女の本当の「夢」を知り、その一部に関わる形で共に一本の映画を作るまでの間柄になって。「水原千鶴」という一側面の彼女ではなく「一ノ瀬ちづる」として彼女の幸せを心から願うようになった。

 

だからこそ、肩を震わせて俯く彼女の姿を見て、思わず理屈で考えるよりも先に想いが溢れ出してくる。

 

 

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和也の想い(第164話より)

 

誰よりも強くて、しっかり者で、いつだって精一杯に生きている「憧れの彼女」。

 

情けない自分をちゃんと叱ってくれて、そばにいるだけで勇気が貰えて、キレイで優しい「理想の彼女」。

 

そして、周囲に迷惑を掛けないよういつも笑顔で、本当に悲しい時だけはほんのちょっとだけ泣いてしまう「等身大の彼女」。

 

その全てが「一ノ瀬ちづる」であり、そんな彼女こそが"理想の彼女"なんだと。だからこそ、辛い時にまで我慢をして「理想の彼女」を演じようとしなくていい。泣きたい時には泣いたっていい。

 

自分の憧れた「理想の彼女」はそういう女の子だから。そういう部分も引っ括めて「一ノ瀬ちづる」に惹かれたのだから。それが和也が伝えたかったこと。思わず溢れ出た胸の内にある本心。

 

 

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ちづるの涙(第164話より)

 

そんな和也の"告白"を描いた流れから、全6ページ12コマを豪快に使って「ちづるの涙」を表現していた一連のシーンがもう今週の全てではないでしょうか。

 

強い自分であろうと「鉄の鎧」を身に纏ってきた彼女がようやく他者に心を開き、頼れる存在として和也の胸の中で涙を流す。

 

 

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思い出と想いは生き続けていく(第163話/第164話より)

 

小百合さんが勝人とちづるの存在に支えられて生きていたように、「幸せ」も「喜び」も「悲しみ」も「困難」も.....その全てを分かち合って生きていける「大切な誰か」が傍にいてくれること。

 

そして、大切な家族を失ってしまったちづるにも「彼女の力になってくれる人」「頼りにしていい人」がいるんだということ。

 

「夢は必ず叶う」という勝人の想いと「女優として生きた」小百合さんの背中はちづるの胸の中でいつまでも生き続けていくし、その灯火(人生の比喩でもある線香花火の描写がとても秀逸でした....)を受け継いだちづるがこれからの人生を「大切な誰か」と共に歩もうとしている。

 

3年という連載期間を経て紡いできた千鶴と和也の物語が今ここでようやく「一つの到達点」にたどり着いたのだと。そんなことを強く感じた第164話のお話でした。

 

 

 

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集大成(第164話より)

 

 

 

家族じゃなくても分け合える

 

さて。そんな感慨深い展開であった今回のお話ですが、一方で和也が抱き締め返さなかった点は正直賛否が分かれそうではありますよね。

 

 

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今はまだ抱き締め返せない(第164話より)

 

順当に考えてここまできて「それはないよなぁ....」と思ってしまうのが男目線の実情ではあるんですが、2人の関係が停滞している原因は決してちづる側だけにあったわけではないので、今後は自己肯定感の低い和也側の意識(自分は「彼氏」ではなく「お客」でしかないという意識)に焦点が当たっていくのかなとは思います。

 

初めての彼女が麻美ちゃんだったり、次に出会ったヒロインが千鶴だったり、比較的「芯の強い」ヒロインとの交流から始まった経緯が関係しているためか、和也って自分の不甲斐なさみたいなものを人一倍意識している節もありますから……。

 

 

 

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家族じゃなくても分け合える(第98話より)

 

まぁ、瑠夏ちゃんや墨ちゃんのように和也のことを優しく肯定してくれるヒロインのおかげで少しずつ前に進んでいるのが『かのかり』ワールドの良いところだと思っているので、他ヒロインとの関係も含めてここからのお話を楽しみにしていきたいなと。

 

「家族じゃなくても分け合える」という本作の根底にある極めて重要なテーマを和也に気づかせてくれたのも墨ちゃんなので、「墨ちゃん=キューピット=天使」という説を唱えつつ、来週の展開に期待しております。

 

 

 


 ※本記事にて掲載されている情報物は「『彼女、お借りします』/宮島礼吏週刊少年マガジン」より引用しております。