「ラブライブ!シリーズ」の第4作目となる『ラブライブ!スーパースター!!』。
「外伝」としてシリーズに新しい風を吹き込んだ『虹ヶ咲』の雰囲気とも異なり、レジェンドスクールアイドルの系譜を受け継いだ少女たちの青春が本作では描かれてきました。
いざという時になると声が出ない。「好き」なのに歌えない。ステージ上で何もできなかった記憶、音楽科の受験失敗。過去の挫折が積み重なり、燻る想いを抱え続けてきた主人公の澁谷かのんは、スクールアイドルに憧れて海を渡ってきた情熱人・唐可可との出会いによって再び青春を取り戻します。
「好き」なことを頑張ることに、おしまいなんてあるんですか...?
好きなものに対してどこまでも純粋で真っすぐな可可の言葉。この問いかけから本作は始まりました。
もちろん、実体験として痛みを知るかのんの言葉にも相応の重みがつきまとっています。
周囲からの失望、自分への落胆。夢を見ても掴まえられず、これまでにも辛いことは沢山味わってきた。だからヘッドホンで耳を塞ぎ、好きなことから背を向ける。もう傷つきたくない。そんなかのんの想いを咎めることは、誰にできるものでもないでしょう。
しかし、かのんだって本当は「歌っていたい」んですよね。だって「歌が好き」だから。そして彼女は「好き」の気持ちを大切にできる人。スクールアイドルを始めたいという可可の夢を応援するため、反対の意を唱える恋に身を乗り出して抗議をした行動からもその姿勢が強く読み取れます。
ゆえに、そんなかのんだからこそ、可可は一緒にスクールアイドルをやりたいと思った。「スバラシイコエノヒト」というだけであれば、かのんの事情を知ってなお可可がここまでかのんを強く誘ったりはしなかったはずです。
自分の「好き」を応援してくれたかのんだから一緒にいたい。自信が持てないと言うのなら、かのんが歌えるようになるまで今度は自分が全力で応援する。そんな可可の強い叫びは、たとえヘッドホンを付けていたって遮れない程かのんの心に強く響き渡った。
いくら傷ついても、「夢」を終わりにできない。絶対にしちゃいけない。ましてやこの「夢」は、誰かの「夢」と強く"結び"つき繋がっているのだからーー。
第9話:君たちの名は?
そんな熱い導入で始まったスパスタも今回でついに9話目です。
かのんと可可の2人で立ち上げたスクールアイドル部は「代々木フェス(3話)」で新人特別賞を記録し、その後も平安名すみれの参戦(4話)、幼なじみである千砂都の正式加入(5-6話)、葉月恋を絡めた学校問題(7-8話)が順に描かれ、晴れて5人のメンバーが揃う運びになりました。
そして今回新たに浮上してきたのが、グループ名をどうするのかという問題についてです。「名は体を表す」ではないですが、自分たちの活動を客観視する意味でも確かにこれは無視できない要素でしょう。
自分たちがどういう存在で、何をしたいグループなのか。「ラブライブ!」にエントリーをするのであればなおのこと、今後の方針をきちんと考える必要がありそうです。というわけで、先代・先々代たちも通ったこの命題が今回のお話を巡る大きなポイントになっていました。
なぜスクールアイドルをするのか
そもそもかのんたちがスクールアイドルを始めたきっかけとは何だったのか。
~スクールアイドルを始めた最初のキッカケ~
澁谷かのん:スクールアイドルを通してもう一度歌いたい
唐可可:スクールアイドルが大好きだから
嵐千砂都:かのんちゃんの力になりたい
平安名すみれ:有名になりたい
葉月恋:母の想いを継ぐ、学校を盛り上げたい
実際にかのんも9話の中で言っていますが、振り返るときっかけそのものは個々にバラバラなんですよね。
何なら明確に「スクールアイドル」自体を目的化していたのは、スクールアイドルをやるためにはるばる上海からやってきた可可くらい。すみれに至っては、(少なくとも始まりは)手段としての意味合いが強かったようにも思いますし...。
とはいえ、これは別におかしいことでも悪いことでもありません。動機自体に優劣なんて本来ないからです。「歌が好きだから」「誰かの隣に立ちたいから」「有名な存在になりたいから」。どれも立派な動機であり、頑張る意味はそれぞれ違っていて当たり前。
そう、たった一つ重要なことは、それでもなお彼女たちは繋がっている、想いが結びついているという事実の方なんですよね。
だからこそ、彼女たちの名前は「Liella!」。
輝きが繋がっていく、結ばれていくという意味を持つ私たちだけの名前。スクールアイドルが好きという可可の想いがかのんを再起させ、かのんの想いがすみれ・千砂都・恋の3人をスクールアイドルに引き寄せた。
まさしくこの5人に相応しい名前で、かのん自身が自分の願い(自分たちはこうである/あるいはこれからもこうでありたいという想い)に乗せて名付けたことに大きな意義が込められていたように感じます。
かのんたちが目指すもの
更に今回もう一つ熱いなと感じたのが、9話の終盤でかのんが語った
スクールアイドルをとおして、いろんな色の光で結ばれていくといいなって思ったんだ。赤だったり、青だったり、緑だったり。繋がったり結ばれていく中で。私たち自身想像もしないようないろんな色になっていく。
という台詞。凄く「ラブライブ!」らしくて僕は好きです。
未来のことは誰にもわかりません。だから何色にだってなれるし、気持ち次第でどんなことにも挑戦していける。挫折を知るかのんだからこそ、より一層深みが出る言葉でもあります。
あえて直接的な言い方をしてしまうと、「ラブライブ!」という大会そのものはあくまでも彼女たちの青春や夢を映し出すための一つの手段や枠組みでしかないと個人的には思っています。正直それ以上でもそれ以下でもない。
ゆえに、過去も先代も先々代も関係はありません。レジェンドスクールアイドルたちが成し遂げてきたからといって必ずしも大会で優勝する必要はないし、彼女たちらしい物語が見れればそれでいいとさえ思います。
「これっていうイメージがない」「特徴がない」。クラスメイトたちがそう指摘するのは当然でしょう。まだ彼女たちの青春は始まったばかりなんだから。真っ白なキャンバスに何を描くのかはこれからの彼女たち次第。だから青春は楽しいものなのです。
みんなの想いをスクールアイドルに乗せて。澁谷かのんと「Liella!」にしか描けない青春の色を僕らに見せつけて欲しい。改めてそう感じたお話でした。来週も楽しみです。