ふわふわな日記

『ラブライブ!スーパースター!!』第10話 感想:平安名すみれが掴んだ栄冠と光

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#10 チェケラッ!!

 

待ちに待ったすみれのセンター回、正直かなり楽しみにしていました。千砂都や恋を取り巻くエピソードが2話構成で描かれていただけに、4話の加入エピソードに連なるすみれの物語を待ち望んていた人も多かったことでしょう。

 

書き出しから物凄くストレートな感想ですが、すみれは凄く人間らしい子なんだと思います。いつか自分もスーパースターのように真ん中で輝く存在になりたい。そんな想いで「ショウビジネス」の世界へと飛び込んだ結果、十数年間端役として主役を眺めることしかできなかった苦い記憶がすみれの心に刻まれていきました。

 

だからこそ……だとは思うのですが、彼女にとってセンターは"特別な場所"であると同時に、いつしか「自分では手の届かない場所」「自分が立つことは許されない場所」を象徴するモノになってしまっていたのですね。

 

「夢を叶えたい、真ん中に立ちたい」という憧れの感情が"光"なら「私にはできない...」という恐怖心が彼女を俯かせる"影"の部分。今回はそんな「光」と「影」の両面で揺れるすみれの姿にスポットが当てられた回でした。

 

 

 

<前回のラブライブ!スーパースター!!>

 

第10話:チェケラッ!!

 

かのんの機転でグループ名が決まり、いよいよ「ラブライブ!」の地区予選に挑むことになったLiella!の面々。

 

地区予選のお題となった「ラップ」についての話題でかのんたちが盛り上がる中、どこか冷めた表情で4人のコミカル劇を眺めていたすみれの表情が序盤からしっかりと切り取られていました。

 

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一歩引いた地点から眺めるすみれ(第10話より)

 

ややメタ的な見方かもしれませんが、ずっと端からセンターを眺めてきたすみれのコンテクストを踏まえると、輪の中心でワイワイやる姿ではなく、外側から傍観する立ち位置を取ってしまう彼女の姿が映し出されていた点には作劇上の意図が見て取れるかもしれません。

 

かのんからの推薦で地区予選のセンターに任命された際の反応も、輪の中心から一歩引いた場所に自然と身を置いてしまうスタンスも。そのひとつひとつが物語っているとおり、センターで輝く自分の姿を一番想像できていなかったのは他でもないすみれ自身だったのです。

 

 

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私がセンター!?!?(第10話より)

 

 

平安名すみれの影と光

 

少しお話が前後してしまうのですが、今回のすみれ回を通して提示されていた可可の帰国を巡る展開も物語を動かす大きな起爆剤になっていましたよね。

 

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可可が抱える約束(第10話より)

 

可可にはどうしても勝たなければいけない理由がある。勉強ばかりでやりたいことがなかったという可可は、サニーパッションを見て「これだ!」と思ったと3話で語っています。自分の気持ちや感じたことを自由に歌ってみたい。そんな彼女に同じくらいの衝撃を与えた出来事がかのんとの出会いでした。

 

かのんと一緒にスクールアイドルがやりたい。このメンバーで「ラブライブ!」という最高の舞台に立ちたい。そんな思いを持つ今の可可にとって「Liella!」というグループはいわば「代わりのないもう一つの家」とも呼べる場所になっているのかもしれません。

 

だからこそ可可は常にスクールアイドルに対して真剣に向き合っています。そんな彼女から見ると、これまでのすみれがスクールアイドル活動に対してやや積極性を欠いていると感じてしまったことも理解できる話。

 

実際のところ今のすみれはプレッシャーから逃げようとしてしまっています。自分は晴れ舞台のど真ん中には立てない星の下に生まれた存在。どこかでそう見定め、誰よりも焦がれ続けてきたはずの夢を、一番信じられていないのはすみれ自身でした。見つけて欲しいのに、思わず身を隠す。この矛盾した振る舞いが、挫折によって屈折したすみれの人格をよく物語っています。

 

 

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もがくすみれの姿に可可は何を思ったのか(第10話より)

 

けれど、すみれも本質的には「本気で努力が出来る人」「真剣に何かに取り組める人」なんですよね。グループ内で突出して際立つものがなくとも、すみれのパフォーマンスが総合的に見て高いレベルにあるのはショウビジネスの世界で鍛え上げこれまで積み重ねてきた努力ゆえ。

 

公園の噴水に同期して、このままの自分では終わりたくないというすみれの感情が発露される光景を目の当たりにした可可の心情はもう語るべくもありません。センター衣装の件を見てもわかる通り「スクールアイドルに一番大切なのは気持ちデス!」と語る可可が、夢の実現に向けてもがくすみれの姿を見て何も感じないわけがないのですから。

 

同情でも何でもない。必死に殻を破ろうとしているすみれの"真剣"な姿勢に彼女の中で燻っている「光」を可可は感じ取ったのだと思います。

 

 

手を伸ばさなければ掴めない

 

一方、可可の想いとは裏腹に、結女の生徒たちからセンターを変えた方が良いと言われ、すみれは更に下向きな感情へと沈み込んでしまいました。

 

『気負い過ぎ』てしまうーーつまるところ"自信"がないということを見透かされてしまったのですね。思いなくして輝きはありませんが、その思いがポジティブなものでなければ人に夢を見せるアイドルとしてはやはり致命的。

 

誰よりも選ばれたいと願っているはずなのに、「結局最後に自分は選ばれないんだ」という現実を思い知らされ飲み込むのが怖い。そんなトラウマに支配されていたすみれを強く求めたのが、誰よりもスクールアイドルを愛してやまない可可だった、というのが今話における最大のポイントでしょう。

 

 

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栄冠の証であるティアラ(第10話より)

 

絶対に勝たなければならないステージで可可がすみれをセンターに選ぶ。

 

可可とすみれのこれまでの立ち位置、更には可可の置かれているひっ迫した状況ゆえに、同情なんて生易しい気持ちですみれを求めてはいない、可可の真剣さが伝わります。

 

他のメンバーではきっとこの役目は担えませんでした。優しすぎず甘すぎず、自分の気持ちに嘘をつかない真っ直ぐな可可だからこそ不安に駆られていたすみれの心を掬い上げることができる。

 

そしてすみれもまた可可がどれだけスクールアイドルに本気なのかをやはり知っているんですよね。子供のように好きなことに真っすぐ夢中になれる可可の姿が羨ましかったし微笑ましいとも思っていた。言葉にこそしませんが、5話ですみれが可可を見ながら浮かべた微笑みはそういう類のものだったと思うのです。

 

 

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可可を見て微笑むすみれ(第5話より)

 

そして「ショウビジネス」の世界へ初めて飛び込んだ頃のすみれもまたこの「はじまりの気持ち」を確かに持っていたはずなんです。

 

あの頃からたくさん経験を積んできたし、いっぱい努力もしてきた。だからこそ怖いし、積み上げてきたものが否定される瞬間の悲しみをすみれは痛いほど味わってきました。

 

でも、この場所でなら、自分を必要だと言ってくれる「Liella!」という場所でなら、もう一度あの頃のように輝きに向かってまっすぐ走り出せるのかもしれない。届いて....、届いて....。そう念じながら力いっぱい手を伸ばしたすみれは、彼女がずっと求めてやまなかった1番を象徴するティアラをついにその手で掴み取りました。

 

 

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自ら掴んだ栄冠(第10話より)

 

道化じみた仕草の奥に、凄く切実なものを抱えて生きてきたこれまでのすみれ。自分が輝ける場所を、一緒に走ってくれる仲間を手に入れた彼女の表情を見て、あぁ......ようやくすみれの夢が叶ったんだねと、誰もが胸を熱くさせたことでしょう。

 

敗者としての殻を破り、栄光のセンターステージを最高の形でやり遂げたすみれは、一番の証であるティアラを外し可可に『ありがとう』を伝えます。弱さも必死さも暗い影も全部受け止めてくれたアナタには、等身大の自分としてちゃんと感謝を伝えたい。飾りつけの言葉で自分を護ってきた平安名すみれの確かな成長の表れです。

 

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かけがえのない仲間(第10話より)



ここまで物語を見てきて、「Liella!」というグループは本当に名前通りに想いを結ぶことで共に成長し合っていくチームなんだなと、改めてそう思わされてしまいました。

 

かのんと千砂都の関係も、可可とすみれの関係も。互いの存在に影響され、互いの姿から学びを得る。これが「Liella!」のカタチ。こうなると恋にも熱いエピソードを期待したくなりますが、恋は学校と強く結びついている子なのでこの手のお話はもう少し先になるのかもしれません。

 

自分の「好き」を「夢」のままでは決して終わらせない。平安名すみれが掴んだ"ノンフィクション"に胸が熱くなる最高のお話だったと思います。

 

 

かのんとLiella

 

最後に少しだけ物語の外側も交えて主人公のかのんにまつわる小話を。

 

今回はセンターとしてすみれが輝くまでのお話が描かれていましたが、かのんをワントップにしたストーリー展開にせず"クゥすみ"がお互いを対象化する中で成長を遂げていく構成になっていた点もやはり見どころの一つでしたよね。

 

かのんは周りが良く見えているがゆえに課題解決能力が高いタイプの主人公なので、臆病になってしまうすみれの気持ちにも理解を示せるし、熱いエンジンを持った可可の背中をそっと押せるお姉さん気質な素養も持ち合わせている。これが「Liella!」のリーダー澁谷かのんの魅力なのかもしれません。

 

 

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Liellaのお姉さん的リーダー(第10話より)

 

前に出過ぎることなく時には場の調整役に徹するかのんの在り方。

 

「かのんをセンターにしすぎない」「かのんを人間関係の中心軸に置きすぎない」という配慮としても非常に新鮮な見せ方だったと思いますし、それでいて、負け続けてきたからこそ生まれたすみれの"影"を、同じく挫折を知るかのんがどっしり受け止めてメンバーたち(主に可可ですね)を諭していく展開は個人的にかなり納得できるものでした。

 

そんな「Liella!」のお姉さん的主人公であるかのんが、次回の第11話でどう過去のトラウマと決着をつけるのか。メンバー達からかのんに働きかける展開も期待したいところですが果たして……。次週を座して待ちたいと思います。

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