『ぼくたちは勉強ができない』134話 感想:小美浪あすみの変化に見る「幸せに成ること」の意味
ぼく勉 問134 感想「先人のかつてはやがて[x]に色づく」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『ぼく勉』はセンターカラー!
ヒロイン達がそれぞれに一文字ずつ「ぼ」「く」「べ」「ん」「♡」とコメントを繋げてタイトルコールが為されていた今回の扉絵、パステル調の色合いが綺麗なだけでなく、最後の「♡」をあえてアラサー(おい,やめろ...)の真冬先生に担当させているあたりがまた最高に「わかっている」チョイスでした。
恥ずかし気な表情で「♡」のポーズを取り、しかも裸というシチュエーション。もはや、全国の真冬先生ファンが待ち受けに使っていること請け合いな扉絵だったと思いますが、しかし、一体あとどれくらい筒井先生の素敵なイラストを拝むことができるのかと思うとちょっと切ない気持ちもあったりで...。
アニメ2期も順調に展開され、原作もいよいよ佳境に入ってきた『ぼく勉』ラブコメワールド、今週もまた結末を意識したお話が描かれていたように思います。
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ぼく勉 134話:先人のかつてはやがて[x]に色づく
さて。そんなこんなで今週はあしゅみー先輩のお話です。
小美浪診療所で捻挫した足の経過を診てもらっていた成幸くん。ついにギプスが外れ、順調に回復の一途を辿っている模様でした。
そんな彼をからかい、ニヤりと笑うあしゅみー先輩の姿はいつも通りの日常の延長ですが、しかし、このタイミングで「家事代行サービス」があしゅみー先輩の家にやって来るというのは、中々にユニークな展開だったでしょうか。
お父さんが風邪で倒れ、帰国中だったお母さんが代わりに診察を請け負う。それゆえの家事代行サービスのはずが、マチコさんとヒムラさんの参戦によって、完全に「恋愛サポートサービス」へとジョブチェンジを遂げていく。
ふむふむ.......。(満面の笑み)
最も、その全ての元凶となる人物は、 愛娘とその彼氏のイチャイチャを「家事代行天晴れ」などと宣いながら楽しんでいた「父・宗二郎さん」だったというわけではありますが...。
このお父様、今更ながらに変わり者過ぎて、一度病院で診てもらった方が良いのではという感じがしてくるのが凄いですね...。(いや、ここ病院ですけれど...)
あしゅみー先輩の変化
さて。そんなドキドキコメディ成分の多めな今回のお話。
恵方巻を食べるあしゅみー先輩が妙に色っぽくて最高にエロ可愛かったり、
いつの間にかベッドインさせられていて「ムフフ...」な状況に陥っていたり、
完全にマチコさん達にイジり倒される2人の様子がメインでしたが、その一方で、小美浪あすみを良く知る友人としての顔をマチコさんが覗かせていた点は、やっぱりとてもグッとくる素敵なシーンだったと思います。
受験に失敗して以降ずっと張り詰めたままの状態だったあすみ先輩に笑顔が増えていったこと。灰色だった彼女の毎日がカラフルに色付き、楽しそうな表情を少しずつ見せてくれるようになったこと。
それは一見して何気ない『変化』ではあったかもしれないけれど、それゆえにその事実に気付くことのできるマチコさんはやはり彼女の良き『親友』であると言えるのでしょうね。
唯我成幸との出会いを通じて変わっていった小美浪あすみの日常。
2人の間に何があったのか、具体的に聞くなんて野暮なことをせずとも、向けられているその表情がもう全てを物語っていました。
ニヤリと笑いながらいじる、いわゆる「先輩の顔」ではなく、「可愛い女の子の表情」を浮かべながら唯我成幸に接しているあしゅみー先輩の姿........。
そんな「恋する乙女」としての小美浪あすみの様子を外側の視点(=客観的視点)からきちんと描写することが今回のお話の肝だったのではないかなと。そんなことを感じた、問134「先人のかつてはやがて[x]に色づく」の物語でありました。
.........というわけで今回の感想をまとめると、
幸せに成ること
今週の成幸くんがイケメン過ぎて惚れた!ってことですよ。
巷では「ヒロイン」等と言われている成幸くんですが、ここぞってタイミングで男らしさを滲ませてくるあたりが中々に憎らしい(褒め言葉)ところですよね。
きっと結ばれるヒロインもそうでないヒロインもみんなが唯我成幸という男の子に出会ったことで「幸せに成っていく」のだろうなと。そんなことを改めて確信させてくれるエピソードでした。
次週は節分でいよいよ2月に突入するみたいですし、「理珠ちん&真冬先生」がどんな絡みを見せてくれるのか、とても楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。
『咲-Saki-』第209局「来由」感想
咲-Saki- 209局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
今回の『咲-Saki-』はセンターカラーです。
扉絵は高遠原中学時代の和とマホ。第191局のカラー扉が中二の夏を描いたものだったのに対し、今回の回想パートでは優希と和が高校に進学する直前の「中三の冬」の場面が描かれていました。
全中王者の和が強豪校からのスカウトを蹴って清澄に進学を決めた理由は、親友である優希と同じ高校に通うため。父からは東京の進学校へ進むことを強く提案されてもいたけれど、それでも『友達』と共に歩んでいく道を選択した和の想いは、きっと優希にも伝わっていたのでしょうね。
だからこそ、和の可能性が自分の選択によって左右されてしまう事をしのびなく思う。
そんな優希が、
でも...
清澄高校で全国優勝すればしのびなくない
と結論づけ、かつて宣言したその言葉を胸に、今一度この決勝の舞台で強者たちに挑んでいく姿勢を取り戻してみせたこと。
そして「夢 持とうぜ......!!」という彼女の気持ちが、「全国優勝の夢くらい見させてよ」と語った部長の想いとも通じるものであったこと。
そこに「清澄」という高校で優勝を果たすことの意味が込められているようにも感じられて........。
県予選決勝の時のように椅子を大回転させ、原点を思い出した優希。
彼女がここからどのように南場の攻防を闘い抜き、仲間たちへとバトンを繋いでいくのか。勝負は怒涛の勢いでトップへと駆け上がった玄ちゃんの親番からスタートであります。
<前回の感想>
第209局「来由」
〇南2局 1本場 親:松実玄 ドラ:
玄ちゃんの三連続和了で迎えた、続く南2局1本場。
ツモドラ
この手牌からが重なり、4巡目にして「タンヤオドラ3」の一向聴へと手を進めた親の玄ちゃんでしたが、
ほかの3人が要警戒なのに
私の手が遅い.........
どうやら4巡目のタンヤオ一向聴でも手が遅いとの認識らしく、オリるかどうかの検討を迫られることに。
ふむ。もうこの卓におけるスピード感の異常さにはだいぶ慣れてきたつもりでしたけれど、いやはや、4巡目の一向聴で出遅れちゃうってのがもうね、最高にロックですよね。
警戒してもしたりない。首位を奪取することに成功したとは言っても、この卓に座っているのは「あの宮永照と辻垣内智葉」、そして今まさに気持ちを切り替えて攻め込んでくる片岡優希なのですから.......。
ギリギリのめくり合い
しかしそれでもなお、悩んだ末に玄ちゃんが出した結論は「勝負!!」、その一手でありました。
「お姉ちゃん… みんな… 2巡だけ勝負させて!!」
ドラではないとをツモってくることに成功し、残る玄ちゃんの有効牌はと(+両面の)のみ。
だからこそ「2巡」......、後「2巡」あれば、必ずそのドラを両方ともツモって見せる。そんな自信と覚悟を持ち、要警戒態勢の暴風地域へ飛び込んでいく玄ちゃんの勇姿は立派と評して相違なかろうというものでした。
玄ちゃんの読み通り、早々に聴牌を作っていたこの2人。
照もガイトさんも、玄ちゃんの親を切るために点数度外視の最速勝負を仕掛けてきている状況が伺えます。
特にガイトさんは、2巡目の段階で混一色を見切ってを打ち、待ちの両面に受けて待ち構えてまでいたわけですからね。
玄ちゃんが彼女らを警戒していたように、彼女たちもまた玄ちゃんの連荘を最警戒している。実績に関係なく、お互いがお互いの力量を認め合い最高の駆け引きを演じている。
ツモ
そんな三者のハイレベルな攻防の中で、ようやく一向聴まで漕ぎ着ける事ができた優希。
一般的には十分早いものの、やはり南場では
おそらくほかの3人より出遅れてる...
という自身の感覚通り、他の3人に比べるとやはり一歩か二歩出遅れている印象は否めない。
加えて、普通ならの辺張を払いたいこの場面で打を選択させられているのも肝心のが玄ちゃんの元に引き寄せられてしまうため。
がドラである以上「234」の三色手も目無しであり、元より高打点も期待できない。
ゆえにこの4者のめくり合いは、照とガイトさんが先行して玄ちゃんと優希が追いかけるという構図になってはいても、最初から玄ちゃんに優先権があったことは間違いない。
打点的な意味でも。当たり牌を引ける純粋な期待値としても。なぜなら、全てのドラはドラゴンロードたる松実玄へと収束していく運命にあるのだから!
強い。玄ちゃんが圧倒的に強い......。
4人同時聴牌のめくり合いを制し、タンヤオツモドラ3赤2で6000は6100オール!!をツモ和了る。
「2回!ドラを引く!」という2巡前のモノローグそのままに、の2牌を連続で引き入れてくる玄ちゃんのヤバさが光りますね....。
まさかここでもう一度玄ちゃんが他校を突き放す大きな一撃を和了りきってしまうとは正直思ってもいませんでしたし....。
優希たちの反撃はなるのか
さて。この和了りによって点数状況は以下の通りとなりました。
〇現在の点数状況(後半戦南2局1本番終了時点)
1位 阿知賀女子 :131500点
2位 清澄 : 96600点
3位 白糸台 : 91200点
4位 臨海女子 : 80700点
一時はダンラスまで落ち込んでいた阿知賀女子が、気付けば2着と3万5000点もの点差を付けての圧倒的1人浮き状態に!
まだまだ止まらない玄ちゃんの猛攻を止めるチャンスが他校に訪れるのか。
そして、気持ちを切り替えた優希が南場の闘いでミラクルを起こせるのか。
あの石戸霞が「優希の身に起こった変化」について何かを感じ取っている描写があったことからして、「気合い」以上の何かが優希の身に降りかかったのではないかと読み取る事もできますが、果たして...。
それぞれがそれぞれの想いを背負って挑む決勝戦。ツモに宿る意志を楽しみにしつつ、ここからのお話に期待したいところですね。次回は11月15日発売号で掲載予定。
『五等分の花嫁』108話 感想:初恋の終わりと中野四葉の涙!"過去"を振り切って"現在"を歩いていく!
五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『五等分の花嫁』を読みました。
色々と書きたい事が山程ある今回の四葉ちゃん回ですが、まず冒頭で触れておきたいのが単行本第12巻の書影が解禁されていた点。ついに主人公の上杉風太郎がタキシード姿で登場しています。なるほど。ここでの『風太郎』抜擢はやはり、続刊がもう『残り僅か』であることの証左なのでしょうね。
第1巻:五月メインの5人絵
第2巻~第6巻:一花さん~五月まで順に制服姿
第7巻~第11巻:一花さん~五月まで順に花嫁衣裳
第12巻:タキシード姿で指輪(?)を持った風太郎
という具合に描かれてきたこれまでの表紙絵。
順当にいくと「第13巻:指輪を受け取る花嫁」「第14巻:全員集合」で綺麗に収まりそうな気もしますが、そうなると残り15話分で「全122話」、連載時期としては翌年2月頃での完結になるのでしょうか。
「最後の祭り」編もいよいよ四人目の四葉ちゃんまで描かれてしまいましたし、こうして毎週『五等分の花嫁』についてブログ感想を書き続けていられる機会も、場合によってはもう数え切れる程しかないのかもしれません。
なので、最後の最後まで精一杯、自分の書きたいように書いていけたらいいなと。いつもお読みくださっている読者の皆様におかれましては、どうか最後までお付き合いいただけましたら幸いでございます。
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第108話:最後の祭りが四葉の場合②
さて。そんなわけで今週は四葉ちゃん回の後編であります。
学級長の仕事や助っ人の掛け持ちが限界に達し、ついに過労で倒れることになってしまった四葉ちゃん。その少し前に竹林さんと出会っており、そこで2人がどんな会話を交わしていたのか、そもそも竹林さんはどうして四葉ちゃんに声を掛けたのか、前回の内容ではそのあたりが不明点として残ったままでしたが、今回のお話でその辺の疑問に対する回答が描かれていました。
まぁ要するに、
①六年前の京都で四葉ちゃんを除く4人の姉妹たちを見かけていたこと
②風太郎から「写真の子」の話を散々聞かされていたこと
③二乃&五月から京都での出来事を聞き一人逸れた子がいたと知ったこと
の3点から類推し、②で風太郎が語っていた女の子が五姉妹の中にいるのではないかと竹林さんは判断したわけですね。
四葉ちゃんに声を掛けたこと自体は「女の勘」....というより偶然に近い事象ではあったけれど、しかし、風太郎がそこまで言う恩人に一度でいいから会ってみたいと思っていたと。姉貴分としてその存在が気になり、それゆえに姉妹たちとの会話の後で四葉ちゃんのことを探し回っていたと。そういう経緯があったわけですか。
なるほど...。
であれば、勘の鋭い竹林さんの事ですし「風太郎と写真の子」の間にあったであろう特別な感情(=それが「感謝」なのかあるいは「恋」に近い何かだったのかはともかく...)にもおそらくは察しがついていたのでしょうね。
上杉風太郎を前に進ませるきっかけとなったその女の子。
同じ学校に在籍をしていてしかも交流まであったと判明すれば、自ずと「現在」の2人がどういう状況にあるのか気になるものです。第100話で「頑張りなよ風太郎」と言っていたのも頷ける。風太郎にとって五つ子たちは「恋愛事」をも含めた特別な存在。竹林さんのあの台詞は、その理解を根底に置いたエールでもあったのかもしれません。
だからこそ、
がっかりされたくないんです...
上杉さんはずっと正しく努力してきたのに
私は無駄なことに執着した意味のない五年間でした
と語り、「過去」の出来事を風太郎に打ち明けようとしない四葉ちゃんの姿に違和感を抱いて、
それだけですか?
という問いかけが自然と出てきてしまった。
「約束」を守れなかったこと、ただそれだけが理由で打ち明けられなかったんじゃない。伝えてしまうことで「大切なその思い出」が本当に「過ぎ去った過去」のものとして「現在」という時間の中に上書きされていってしまうこと。それが怖かったのではないか。
もしかしたら、竹林さんが四葉ちゃんに問うた言葉にはそういう意味も含まれていたのかもしれない。個人的にはそういう解釈もありなのかなと感じるやり取りだったように思います。
中野四葉が歩いてきた道
とはいえ、「思い出との向き合い方」というテーマに付随して、四葉ちゃんの中に「自分の存在意義を疑問視する」気持ちがあることもまた事実ではありました。
約束を守れなかったこと。姉妹たちに迷惑を掛けてしまったこと。そして、今回の学園祭において倒れてしまったこと。
その全てが中野四葉にとって「必要とされていない自分」を象徴するものだったわけです。だからこそ、これまでに自分がしてきたことを彼女は全否定する。無駄。迷惑。私のせい。並べ立てられた言葉の数々には、自分という存在に対して「嫌悪感」を抱く彼女の心情が如実に表れていました。
でも、結局のところそう思っていたのは本人だけだったわけですよね。
みんな中野四葉の努力を正当に評価している。自分の代わりに舞台に上がってくれた江場部長も、衣装を縫い直してくれた被服部の2人も、彼女に関わった全ての人間が彼女のしてくれた事に対して感謝の気持ちを抱いていたんです。
ゆえに、彼女が頑張ってきたことは「無駄」でも「迷惑」でも「私のせい」なんかでもありません。
中野四葉に助けられ、中野四葉を助けたいと思う人達がいる。それは、彼女の頑張りが「誰かのため」になってきたことの証左です。
失敗もあったかもしれないし、たくさん間違えてもきたのかもしれない。けれど、中野四葉は誰からも必要とされていない人間なんかじゃない。彼女に力を託すために集まってくれた人達の存在がその事実を雄弁に物語っていました。
そして、それは当然『上杉風太郎』にとっても同様なわけですよね。
俺もお前の世話になった一人だ
という台詞。その言葉の直接的な意図としては「出会ってからの1年間」を受けての"感謝"と解釈して相違ないかと思いますが、しかし物語としての実態はそうではないわけです。
六年前の京都での出会い。
竹林さんがそう語っているように、自分のことを「無意味で必要ない人間」だと思っていた風太郎が前に進めたのは四葉ちゃんがいてくれたからでした。あの日の出会いが、あの時の彼女の言葉が、彼に変わるきっかけをもたらした。彼が自分の力で血の滲むような努力を積み上げてきたとは言っても、その事実が揺らぐことはありません。
ゆえに、中野四葉もまた「過去から踏み出して」前に進んで行かなきゃいけない。上杉風太郎がそうしたように、思い出から卒業してきちんと今を生きていかなくてはいけない。この後に続いていくシーンには、そんな中野四葉の強い「決心」が描かれていました。
初恋の終わり、前を向くためのキス
学園祭最終日のとある時刻。
過去と決別し、自分の気持ちに区切りをつけるため──。あの日の出会いを思い起こさせるかのように、階段上から階段下へのシチュエーションを伴って、彼女は彼に呼びかける。
風太郎君。
それは、ずっと言いたくて、それでも口にすることができなかった6年前の呼び名。疲労でうたた寝中だった風太郎に認識されることはなくとも、彼女の中で確かに覚悟が決まったことの表れだったのでしょうか。
6年前に出会った「京都の女の子」として。上杉風太郎と約束を交わした「写真の子」として。かつての「約束」を守れなかったことに対する謝罪を述べ、そして、新しく「誓いの言葉」を宣言する。
もう君との思い出に頼らない
自分で自分の価値を探していくよ
自分と風太郎君を繋いでくれたとても大切な過去の思い出。されど、昨日に帰るのではなく、きちんと明日に向かって歩き出さなくてはならないから──。誰かに必要とされる自分ではなく、自分がなりたい自分を見つけていかなくてはいけないから──。だから、今までの自分と、6年分の思い出にバイバイ!
.........そんな恋しさと切なさと愛おしさの詰まった四葉ちゃんからのキスが最高に泣けて最高に感動的であったなと。
一瞬一瞬の「今」の積み重ねこそが「未来」であり、その「未来」がいつかの「今」になっていく。その「今」を一歩一歩踏みしめていくために──。これから中野四葉がどんな「夢」を掴んでいくのか。その果てにあるゴールを心より楽しみにしております。
最後の思い出づくり
.....という形で今回の感想を締めようかとも思ったのですが、ちょっと書き残しておきたいことがあるので最後にその点について個人的な"感情"を。
今回の四葉ちゃん回後編、個人的に"物語として"は非常に納得のいく展開でした。
四葉ちゃんにとって"過去"は「枷」の象徴であり、それゆえに乗り越えていかなくてはいけない対象でもありましたからね。彼女には、思い出に区切りをつけて新しいスタートを切っていく必要があった。これから先の「未来」に「過去」の想いは連れていけない。「最後の思い出づくり」とはいわば、未練を断ち切るためのけじめ。その結論に異論などありませんし、むしろ、四葉ちゃんエピソードの集大成と呼ぶに相応しい着地点だったことでしょう。
でも、それはあくまでも「理屈の上では」のお話であって、気持ちが追いつくかどうかはまた別のお話です。
だって、結局のところ風太郎にその「想い」が全く伝わっていないんですもん。
四葉ちゃん側の問題として内々に処理され、四葉ちゃんの中だけで完結してしまっている。そして「涙」まで流してしまっている。姉3人のエピソードがあのような形で描かれていただけに、このままでは落差が激しすぎてあまりにもやりきれないではありませんか。
もちろん、そう語るにはまだ早計で、今後「風太郎視点」で語られる「風太郎の場合」があるのではないかという見方もできます。
「昔のことより大切なのは今だろ」というその言葉自体は絶対的に正しくとも、風太郎自身が「過去」を正しく認識していない現状でそんなことを言われても正直「なんだかなぁ」という印象は拭えませんからね。それを思えば、この先の物語で風太郎が写真の子の正体に気付き、四葉ちゃんの想いに気付いていく展開が描かれる可能性もあるのかもしれません。
ゆえに、これはあくまでも現時点で描かれている内容に対しての感想でしかありませんが、もしも春場先生が四葉ちゃんの「過去」だけでなく「恋物語」にも決着をつけたおつもりで今回のお話を描いていらっしゃるのだとしたら、それはあまりにも切なすぎてきついことだなと。そう思わざるを得ませんでした。
なので、「過去」から前に進んだその先の「未来」で、四葉ちゃんと風太郎が「過去」にあった想いを笑顔で語り合ってくれたらこんなにも嬉しいことはないなと、そういう想いで今週のお話を自分は読んでいたんだなと、そんな四葉ちゃんスキーの戯言をここに書き残しておきたいと思った次第です。
「七つのさよなら」で風太郎が過去に区切りをつけ、「最後の祭り」で四葉ちゃんが思い出に区切りをつけた今だからこそ、純粋に風太郎と四葉ちゃんの2人が「今」という文脈の中で「想い」を語り合えるのではないか。風太郎の「選択」がそれで変わることはないにしても、夢や空想の出来事としてではなく確りと風太郎の認識を描き切って欲しい。そんなことを感じた、四葉ちゃんの学園祭エピソードでございました。
....というわけで今回の感想をまとめると、
次週、巻頭カラーで五月回!
次週の五月回がとても期待大!ってことですよ。
ここにきて満を持しての「巻頭カラー」みたいですし、アニメ2期の告知はあるのか、「五月の場合①の扉絵」はどうなるのか。いよいよ大詰め感のある学園祭編ですが、その顛末をしかと見届けていきたい所存ですね。春場先生、最後の最後まで『五等分の花嫁』がたどっていく物語を楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。
『ぼくたちは勉強ができない』133話 感想:今ここにある"青春"と桐須真冬の気持ち
ぼく勉 問133 感想「前任者はそして過ぎ去りし[x]を享受する」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『ぼく勉』が凄い。
第二回の人気投票でジャンプラブコメ史に残る驚異の記録を叩きだした真冬先生ですが、まさかまさか、ここに来てまた更に
3学期も時期的に言えばもう中盤戦に差し掛かった頃であろうと思われる『ぼく勉』ラブコメワールド。2月には「バレンタインデー」(無論、2次試験直前なのでどういう位置付けのイベントになるのかわかりませんけれど)も控えている事かと思いますが、果たして、ここから先どのようにヒロイン達の"気持ち"が描かれていくのか。
今週は、そんなドキドキとワクワク――そして"青春"の予感がたくさん詰まった、桐須真冬先生と唯我成幸くんの物語です。
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ぼく勉 133話:前任者はそして過ぎ去りし[x]を享受する
さて。そんなわけで今週は真冬先生回であります。
まずは冒頭、女子ソフトボール部の練習風景を眺めていた真冬先生のシーンからですが、やはりここで重要なポイントとしては、先輩から「球拾い」を命じられている一年生を見てすかさず救いの手を差し伸べていた点でしょうか。
顧問でもない彼女がそのような行動を取った理由。それは彼女が「優しい」から...というだけではなく、
私が間違えてきた分
生徒たちにはちゃんと青春を
送ってほしい
という想いがあったから。
フィギュアスケートに全てを捧げ、高校生らしい「青春時代」を送ってこなかった真冬先生のこれまで。そこに彼女の感傷が表現されています。過ぎ去ったものへの「後悔」にけじめをつけることができたとしても、「憧れ」自体が消えてなくなるわけじゃない。
だからこそ、真冬先生は生徒たちが楽しい「青春」を送れるように尽力し、全力でそのサポートをしようと考えているわけですよね。「青春」というものが、いかに大切で、いかに尊くて、いかに取り返しのつかないものであるのか。誰よりも身に沁みているがゆえに。
なるほど。やはり真冬先生の物語は"大人ヒロイン"であるからこその深みが感じられて改めて素晴らしいなと思う次第でありました。
今ここにある青春
そして、そんな流れを受けて描かれる展開が「体育倉庫密室ドキドキ大作戦!」になるあたり、流石『ぼく勉』と言ったところでありましょうか。
突然の雨でずぶ濡れになり、近くにあった体育倉庫へと避難をする。
ふむ。もはや、真冬先生はじまったな!
ってなもんでしたよね。
「14,598」だった戦闘力が一気に「100万」まで急上昇した瞬間。ラブコメで密室とくれば、もう閉じこめられて密着するところまでが一つのハッピーセットなわけですから。女子生徒たちが戻ってきてしまって...からの、跳び箱かくれんぼ。期待通り、筒井先生がやってくださいました!
「イチャイチャするに決まってんだろ」
めでたくこれにて『ぼくたちは勉強ができない』(完)。筒井大志先生の次回作にご期待ください。
そして桐須真冬は...
.....とまぁもちろんそれは冗談(描かれている展開そのものは事実ですけれど)なわけですが。
真面目なお話、上記の展開がまさしくそうであるように、「青春」という言葉は、必ずしも"ある一定の期間"のことだけを指して語られるべきものではないってことなわけですよね。
無論、一般的に言えばそれは、中学や高校のような学生時代のことを言うのかもしれない。でも、一般論なんかよりも大切なことは自分の「心の在り方」、たったそれだけなんです。希望を持ち、理想に焦がれ、春を追い求める。そこに年齢による明確な区分けが、果たして必要なのだろうか。
今回のお話は、そんな主張・価値観のもとに生み出されたエピソードでもあったのではないかと。
未だ「春」を迎えられず――それは当然「青春」を享受してこなかった真冬先生自身を表した比喩でしょう――、ずっと「冬」のまま変わりきれていない自分が嫌い。そう語る先生に対して告げられた
俺は好きですよ真冬
という台詞。それは真冬先生自身のことを肯定する言葉であり、同時に彼女の「これまで」を肯定する言葉でもある。
ゆえにこそ、"心象風景"が生み出す幻影として「高校生」の桐須真冬 (=間違えてしまったと思っていた過去の象徴) がそこに描かれていることに大きな意味が見出だせるのではないか。
なぜなら、その演出には「心の在り方」や「自分の気持ち」こそが大事なんだという考え方が確かに込められているのだから。
過ぎた時間は戻らなくとも、今、そしてこの先何度でも「春」はやってくる。
だからこそ、この物語の果てで、桐須真冬が人生の「春」を掴む可能性もまたありうるのかもしれない。
今週のエピソードは、そういう余地を読者に想起させる物語だったのかなと。そんなことを思う、問133「前任者はそして過ぎ去りし[x]を享受する」のお話でありました。
.....というわけで、今回の感想をまとめると、
真冬先生がヒロイン過ぎる件
今週の真冬先生が「過去最高にヒロインしていてヤバかった!」ってことですよ。
もちろん、成幸くんが口にした「好きですよ真冬」という言葉は季節を意味しているのであって「そっちの...真冬?」ではないわけですけれど、しかし一方の真冬先生的には、結構ガッツリとそういう「気持ち」になっていたのではないでしょうか。
「春」への期待と桐須真冬のこれから。果たして彼女の「青春」は彼の「青春」と重なるのか。今後の真冬先生エピソードで彼女の「気持ち」が描かれていく事を期待しております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。
劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』感想: わたしは、あなたが望むメインヒロインになれたかな? 加藤恵と安芸倫也がたどり着いた最高の結末!
『冴えカノ』 感想考察 ネタバレ注意
本日10/26(土)から公開の映画、劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』を新宿の最速上映で観てきました。
映画の感想に触れていく前に少しばかり前説を。
以前からこのブログを読んでくださっている方はおそらくご承知のとおり、僕はラブコメ作品が大好きです。人が人を好きになる。それはとても感情的で情緒的なメカニズムだと思いますが、しかし一つ一つの恋には必ず「理由」があって、「プロセス」があって、「物語」があります。
どうしてその人を「好き」になったのか。 いつから「好き」になったのか。70億もの人が共存する世界で2人の男女が出会い、様々なプロセスを経て「恋心」に気づいていくこと。泣いて笑ってを繰り返して、"想い"を通じ合わせていくこと。そして、その過程で発生する"感情"の揺らぎにドラマが生まれていくこと…。その全部が『ラブコメ』の魅力だと思っています。
劇場版『冴えない彼女の育てかた Fine』において、主人公の安芸倫也は加藤恵を選びました。美少女ラノベ作家の霞ヶ丘詩羽でも天才イラストレーターの澤村・スペンサー・英梨々でもなく、"普通の女子高生である"加藤恵を。どうしてか。
それが今回の映画で描かれていた物語の根幹です。なぜ『安芸倫也』にとってのメインヒロインが『加藤恵』だったのか。なぜ他の誰でもなく、彼女でなくてはならなかったのか。
以下、そういった内容を中心に感想を書いておりますので、是非劇場で視聴を済ませてからお読みくださるようお願いいたします。
(※ちなみに原作ノベルは既読済みですが、今回の映画は原作11巻~13巻の内容にアレンジを加え「オリジナル要素」を盛り込んだうえでストーリーが再構成されていましたので映画の内容準拠で感想を書いています。)
<公式サイト>
『冴えない彼女の育てかた Fine』感想
さて。2度のアニメ化を経てついに劇場版となった本作――『冴えない彼女の育てかた Fine』――は、倫也と加藤さんが高校3年生に進級して夏を迎えたところからお話が始まります。
英梨々と詩羽先輩が大作ゲーム『フィールズ・クロニクル』の開発を目指して超人気クリエイター・紅坂朱音に引き抜かれ、倫也たちのサークル『blessing software』は新体制でゲーム制作を進めていく事になりました。
しかし、一番大切なはずのメインヒロインルートのシナリオ作成が上手く行かず最後の最後でゲーム作りは難航を極めることに。焦りから詩羽先輩に教えを乞おうとする倫也くんですが、最終的にこの状況から
自分にしか書けないものを書けよ
と朱音さんに言われてスランプから抜け出していく展開は、やはり物語としても一つの大きなポイントですよね。
「自分にしか書けないものを書く」ということは即ち、自分だけの「理想を追いかける」ということ。紅坂朱音でも、霞ヶ丘詩羽でも書くことのできない、安芸倫也が望むメインヒロインとの物語。その答えとは何なのか。
そんな流れを経て、加藤さん(=メインヒロイン)と一緒に『これからの物語』を作っていく決断を倫也は固めていくことになります。
ゲーム制作と恋
一方、『倫也が詩羽先輩にキスされた事』を知って嫉妬の感情を見せるなど、冒頭から"ヒロイン"としての風格が凄まじいことになりつつあった加藤さん。
Skypeでシナリオの読み合わせを行っている様子はまさしく『2人で理想の物語』を作っていこうとしている…といった感じで、もはや完全に2人だけの「無限ニヤニヤ」空間が出来上がっていました。
お互いのことを名前で呼び合ったり、駅のホームで手を握ってドキドキしてみたり…。
もうとっくにフラグは立ってる
という加藤さんの台詞通り、もうとっくにフラグは立っていたんですよね。
シナリオ制作と2人の恋物語は言わば「写し鏡」の関係になっていて。更に言えば、「巡璃、主人公を意識するようになる」というゲームのシナリオをなぞるように、加藤さんが倫也のことを次第に意識するようになっていって…。
そこには確かに、主人公に淡い「恋心」を抱く一人のヒロインの姿がある。
「叶巡璃」としてではなく、「加藤恵」として。主人公・安芸倫也に真っすぐ向き合い、『誕生日デート』の約束に舞い上がるメインヒロインの姿がそこには映し出されていました。
すれ違う想い
しかし、事態はここで起承転結の『転』を迎える事になります。
詩羽先輩と英梨々がクリエイターとして関わっている『フィールズ・クロニクル』の制作現場を調整していた紅坂朱音が脳梗塞で倒れてしまったこと。
加藤さんの誕生日当日に被せて降りかかってくるあたりがまた非常に憎らしい展開ですが、何にせよこの事件をきっかけに順調だった2人の想いに少しずつすれ違いが生まれていくことになってしまいました。
でも
私たちのゲームは私たちのチャンスだよね
という加藤さんの想いに対して、詩羽先輩と英梨々の「夢」を守ろうと一時的に紅坂朱音の代役を引き受けようとする倫也。
ここに2人の「気持ち」が良く表れています。倫也が詩羽先輩と英梨々のことを見過ごせないのは、彼女たちに対して「憧れ」を抱いているから。だから、彼女たちの頑張りを無駄にしたくないと思う。尊敬するクリエイターとして、また追い掛ける存在として、2人の夢を守りたい。それが他でもない、倫也の望むこと。
でも、一方の加藤さんからすれば、そんな倫也の選択に当然「葛藤」があるわけですよね。
倫也にとって、あの二人はやっぱりどこまでいっても「特別」な存在なんだということを改めて突きつけられてしまったから。「物語のヒロイン」みたいに笑って主人公を送り出せるメンタリティなんて持てるはずもなく、
ごめんね、倫也くん...
わたし、やっぱり、あなたのメインヒロインになれないよ
という言葉の通り、「安芸倫也が望む物語」を彼女の心は受容できずにいました。
どこまでも『普通』で等身大で。『幼なじみ』でもなければ『特別な能力』があるわけでもない自分。加藤さんが流した涙には、そういう諸々の「悲しみ」や「悔しさ」も内包されていたのではないか。個人的にはそんなことを感じる展開が描かれていたように思います。
加藤恵がメインヒロインになるまでの物語
とは言うものの、その「すれ違い」こそが加藤さんとのメインヒロインルートを更に加速させる分岐点になっていたというのがやっぱり物語としてとても上手いところなんですよね。
すれ違って、嫉妬して、モヤモヤして。そんな様子の加藤さんはもう「フラット」なんかじゃない。冴えないと言われ「感情表現の起伏」が平坦だった彼女も、今やもう怒ったり泣いたりして『普通』に恋をしているんです。『冴えない彼女』は主人公・安芸倫也と出会う事で立派に恋する「メインヒロイン」へと育っていった。それがこの物語の結論。
だからこそ、『冴えない彼女の育てかた』という作品の『結』末として倫也が等身大で『普通』な加藤さんに惹かれていくのはやっぱり必然だったんだと思います。
「三次元よりも二次元が好き」というスタンスを持って現実を生きてきた倫也が、どこまでも素朴でどこまでも普通――つまりそれは三次元らしさの象徴でもある――のまま"メインヒロイン"へと成長していった加藤さんに惹かれていったこと。
強烈な個性や才(=「二次元らしさ」)を持ったヒロイン達――詩羽先輩と英梨々――とではなく、『普通』の女の子・加藤恵と共に現実の中にある『理想』を見つけていったこと。それは、この2人だからこそ辿り着ける、いや、この2人にしか辿り着くことのできない、2人の成長と物語のテーマへ繋がっていく『唯一のルート』だったのですから.........。
<※追記>
無論、「もしすれ違いルートに入っていなかったら加藤さんエンドにならなかったの...?」と言われればそこは微妙な所ですが、しかし少なくとも"最高のメインヒロイン"には至れなかったと思うので、この観点において"転"のパートがメインヒロインルートへと至る分岐点だった事は間違いないと思います。
— ふわふわ (@huwahuwa014) November 4, 2019
「憧れ」と「恋」―「特別」と「普通」―
さて。そんな経緯で恋物語の結末としては、同じ歩幅で歩いていける相手として倫也が加藤さんを選び「幸せなキス」を交わして無事に大団円...!という感じで締めくくりがなされていましたが、その裏できちんと詩羽先輩と英梨々の気持ちにも焦点を当ててくれていた事が個人的にはとても嬉しかったんですよね.......。
2人とも本当に倫也のことを強く想っていて。
もちろん、倫也からすれば彼女たちの存在は手の届かない『憧れの対象』だったのかもしれないけれど、でもその感情を明確に『恋』と区別して考えることは、やっぱりとても難しいことのはずです。
少なくとも小学生の頃の英梨々は憧れの対象などではなく、仲の良い幼なじみであって、同じ夢を志した友達であって、そして「初恋の女の子」でもあったわけですから。
もし10年前、英梨々が倫也とすれ違わずに同じ歩幅で歩いていたとしたら…?もし作家・霞詩子のファンとしてではなくもっと違う出会い方をしていたとしたら…?もちろん、そんなifのルートに意味はないけれど、
彼は間違いなく わたしたちに恋をしていた
という台詞の通り、安芸倫也が憧れ「特別な感情」を抱いた柏木エリと霞詩子は紛れもなく彼女達自身なんです。
柏木エリは澤村英梨々の一部であり、霞詩子は霞ヶ丘詩羽の一部分。だからこそ、倫也は彼女たちに恋をしていたと言える。無論、それゆえに一緒に歩いていけるヒロインとしてではなく、追いかけられる存在として倫也の前を走り続けるヒロインというカテゴリーに収まってしまったわけでもあるけれど、しかし何よりも大事なことは彼女たちがきちんとその事実を認識し、受け止め、そして「未来」に向かって歩きだして行ったことにあるのではないでしょうか。
1対多のラブコメ作品でありながら、結ばれなかったヒロイン達の「恋」にも誠実に向き合って答えを出してくれたこと。英梨々と加藤さんが想いを分かち合うお風呂場のやり取りも最高に素晴らしいシーンでしたし、どこまでも納得のいく物語だったと個人的には思っています。
エンドロールのその先へ
からーの、あのCパートですよ!
『ラブストーリーは突然に』が流れ出した時はもう不覚にも笑ってしまいそうだったのですが、その後の倫也と加藤さんのイチャイチャ具合 (しかも加藤さんの薬指に指輪がありましたよね...!) が半端ないのなんのって。初期の頃を思い返すと、もう感慨深過ぎて涙が止まらなくなってくる勢いでした。
あの春の日、桜舞う坂道で出会うところから始まった安芸倫也と加藤恵の物語。
エンドロールのその先で、これから2人がどんな未来を歩んでいくのか。そんな「胸がキュンキュンする」名作を生み出してくださった、丸戸先生、深崎先生、そして映画制作スタッフの皆様にこの場を借りて改めて感謝の言葉を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!
<感想記事(第2回)>
※本記事にて掲載されている情報媒体は「丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA ファンタジア文庫刊/映画も冴えない製作委員会」より引用しております。