『咲-Saki-』第216局「大差」感想
咲-Saki- 216局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
照の支配が続く先鋒後半戦のオーラス。
既に2着の玄ちゃんと照の点差は60400点にまで及んでおり、7連続和了を達成した今もなお照の連荘は止まる気配を見せない。
全国有数の猛者が集結した決勝戦においても別格としか言いようがない、比類なき壁としての宮永照を果たして3校がどう攻略し乗り越えていくのか。
引き続き、オーラスの激闘を見ていきたいと思います。
<前回の感想>
第216局「大差」
〇南4局 6本場 親:宮永照 ドラ:不明
前回、徹底的な照からの狙い撃ちを受け、辛くも跳満の直撃を取られてしまった2着の玄ちゃん。
2回戦と準決勝に続いて収支は原点を割れ、その点差以上に絶望的な力量差が存在することも実感させられてきた。
しかし、それでも涙をこらえて前を向こうとするその姿こそがこの団体戦を通じて玄ちゃんが成長してきたことの1番の証なのかもしれない。
どれだけヘコまされてもめげなかった花田煌のように。ボロボロになりながら何度もチャンピオンに挑んだ園城寺怜のように。
たとえ辛くても泣きそうでも諦めることだけはしたくない。最後まで前を向き、自分のベストを尽くして仲間にバトンを繋いでいく。準決勝の時だってそうだった。それで結果的にチームとしての1位を掴むことも出来た。
団体戦だからこそのプレッシャーもあるけれど、団体戦だからこそ支え合い力を貰えることもある。これは個人戦ではない。個の力で宮永照に勝てずとも、チームとして負けないための役割を果たす必要がある。
あぁ....。これこそが団体戦の醍醐味ですよ。
チームで繋ぐ一勝を描いてこそ団体戦を描く意味がある。誰一人個人戦に出場していないことからも分かる通り、阿知賀女子は一人の絶対的なエースを精神的支柱に据えている学校ではない。
だからこそ、チームのみんなを信じているからこそ、ここで松実玄がすべきことはもうただ一つ。宮永照の連荘を喰いとめること。たとえ何万点差であろうともこの事実だけは揺らがない。そしてそれは当然、照以外の3校とも同様の結論となる。
が、しかし.............
それでも宮永照が止まらない!
三校の決意をよそに、それでもお構いなく和了りを狙いにくる王者の打ち筋。
もはや本当にめちゃくちゃな強さである。全国2位の荒川さんが「宮永照はヒトじゃない」と言っていたけれど、臨海のエースで全国3位のガイトさんでもここまで大差が付いてしまう程とは正直想定以上だった。
飛びぬけた力は人を孤独にする。かつての衣がそうであったように照もまた似たような感覚を抱えていたりするのかもしれないね。
例の「私は麻雀 それほど好きじゃないんです」発言も含めて、照の心中はやはり作品として最も気になるところ。
団体戦の過程で結論が出るかは分かりませんが、「①照にとって宮永咲とは何か ②照にとって麻雀とは何か」あたりの内容がきちんと描かれてくれたら嬉しいなと思います。
ついに辻垣内智葉が動く
さて。そんなこんなで6本場はリーチを掛けた照がそのまま倍満をツモ和了り、これで照の和了りは8連続。
ツモ
巡目はわからないけれど、メンタンピン一発ツモ三色一盃口で8600オールというのは流石の照にも苦しさが出てきた感じかな。
この次はドラなしで三倍満以上の手を作らなくてはならないし、今のようにリーチ一発ツモで打点を押し上げるにしてもほぼ清一色系統の手に頼らざるを得なくなる。
そうなると「四暗刻・大三元・国士無双」あたりを狙った方が確率的には高いまであるので、長らく続いたチャンピオンタイムも次の局が全員にとって勝負所になるのかもしれません。
全国三位のプライドにかけて、辻垣内智葉が最強のチャンピオン宮永照を止めるのか。
玄ちゃんがドラを縛り、優希が速攻の鳴き仕掛けでプレッシャーをかける。準決勝の時のようなわかりやすい共闘が成立していなくても、宮永照を止めるという共通の目標に向かって全員が勝負に出ようとしていることが活路になる。
〇現在の点数状況(後半戦南4局6本場終了時点)
1位 白糸台 :174000点
2位 阿知賀女子 : 79200点
3位 臨海女子 : 75600点
4位 清澄 : 71200点
この点数状況での一発逆転はもう発生しえないけれど、最後まで戦う気持ちを捨てないガイトさんたちがどんな方法で照を追い込むのか。次回のお話を楽しみにしております。
次回は6/5発売号で掲載予定。
『咲-Saki-』第215局「包囲」感想
咲-Saki- 215局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
インターハイ決勝先鋒後半戦の最終局。
怒濤の連続和了で単独首位に立ったラス親の照は、続く南4局4本場も親の続行を宣言し妹の咲さんを彷彿とさせる嶺上開花を和了ってみせた。
四暗刻単騎待ちを崩してまで選んだ大明槓からの鮮やかな親満。ガイトさんの役満を察知していたがゆえの立ち回りでありながらも、嶺上開花を照が和了ったことについてはやはり何かしらの意図が込められているのかもしれない。
1年の頃から照を見てきた菫さんでさえ印象に薄いのなら、普通に考えても嶺上開花を照が和了った事例は多くなかったはず。
なのに、なぜこの場で照は嶺の上に花を咲かせたのか。単なる偶然がもたらした奇跡でしかないのか、あるいは照の抱えてきた何らかの想いが卓に現れた結果なのか。
打ち手の境遇や想いに牌が応える。そういう物語を描いてきた『咲-Saki-』の背景を考えれば、”始まりの役"である嶺上開花を照が和了ったことに偶然以上の何かを見るのは至極自然な解釈だと思う。
麻雀を通してならお姉ちゃんと話せる気がする!
と言っていた事からもわかる通り、宮永咲は姉との「対話」を目指してここまで勝ち上がってきた。そしてその過程で麻雀の楽しさを今一度思い出し、大切な仲間たちもできた。
そういった作品の背景を踏まえると、現在の宮永照が麻雀を楽しめているのかという疑問点が一つのテーマになっていくのかもしれない。
「宮永咲――!!照を助けてくれるのか――」という菫さんの台詞を踏まえても、照の抱えている問題が「彼女自身の過去(=宮永姉妹が一時的に麻雀から離れていた理由)」に起因しているだろうことは間違いないのだから。
原点と頂点をつなぐ闘いの中で徐々に描かれていく宮永姉妹の物語。様々な想いが交錯する決勝戦の熱き戦いを引き続き見ていきたいと思います。
<前回の感想>
第215局「包囲」
〇南4局 5本場 親:宮永照 ドラ:
さて。前局の嶺上開花で照の和了りは6連続に達し、既に2着の玄ちゃんとの点差は21400点。
加えてここから先は最低でも跳満以上(積み棒込みで19500点以上)の和了りが想定されるため、これ以上の連荘だけは何が何でも避けなくてはならない。
しかし、この局面での跳満直撃は先々の戦いを考えてもチームとして大損害であり、リスクとのバランスを計算した立ち回りが必要になってくることもまたれっきとした事実。
誰かが止めなければ確実に和了られてしまう状況とはいえ、宮永照を相手に勝ち目の薄い手で勝負を仕掛ける行為は完全に悪手でしかない。
ドラ3つの4向聴では心許なさがあった為か、序盤は様子を見つつ真ん中寄りの牌から処理していく無難な方針を取ろうとしていた玄ちゃんの脳裏に2本場の強烈な振り込みイメージがよぎる。
もはや、目の前にいる相手に常識が通用しないことは痛いほど実感させられてきた。
和のように何があろうとデジタルの範囲からブレない信念を持って動けるわけではないし、目の当たりにした奇跡の数々を確率論の内側で認識するというのは流石に不可能の一言に尽きる。
0.001%でも起こり得るなら起こってもおかしくない現象として捉える必要があり、その全てにケアを効かせてオリるためには「100%振り込まない完全安牌の現物」を処理していくしかない。
照と同じ牌を合わせ打ちで落としていき、ひたすら回避行動を繰り返す。そんな流れで場が進んで行く中、完オリ行動の過程で発生する「お約束のムーブ」がここから先の状況を一変させていくことになるわけであります。
決勝先鋒戦の行く末
照の捨て牌に合わせ、切りの順で完オリを遂行(流石に一巡目は上家合わせの切りが正解だったと思うけど...)してきた玄ちゃん。
しかし、5巡目でドラのをツモり、オリていたのに気付けば「大物手を聴牌...!」というまさかの事態が起こってしまうことに。
ツモ ドラ
抱えている半分の牌がドラで構成されているタンヤオドラ7の倍満手。
玄ちゃんの元に全てのドラが引き寄せられ、他家には一枚もいかない。そういう能力である以上「ここでついに完全安牌がなくなって宮永さんの影を踏むことができなくなった」という状況になりやすいのは当たり前で、そのうえドラを捨てることができない制約まで考慮すると、玄ちゃんがオリとして捨てられる牌は必然限定されてしまう。
玄ちゃんの切れる6種類の牌()の内、比較的マシと言えるのが「既に2枚切れている」か、もしくは「一巡前に上家の優希が捨てたのスジ便りで」か....というところで、後は安牌を引いてくることに祈るしかなかった。
しかし、5巡目に、6巡目にを落として耐え凌ぐも安牌を引けず、ドラのと中央寄りのが順に重なった結果、切れる牌の選択肢として残ったのは「」のド真ん中4種類のみ。
完全安牌どころか危険牌しかない状況下で、果たしてどれを切るべきか。直前の切りをどう捉えるかにもよるが、どうせ全て危険なら聴牌を維持できる「」のどちらかを切るのが確かにベターではある。
を残せば断么九ドラ8に一盃口まで付いて10翻。ツモれば三倍満まで見えるため、ここはもう魂の切りで良い。たとえ振り込むことになっても、これ以外に選択の余地なんてなかったのだから。そう思える局面だった。
ロン
が、開かれた照の手牌を見て最初から退路が完全に断たれていたとわかる流れになっていたのがあまりにも強火過ぎて、もはや軽く戦慄。
「」の4種類全てが照の当たり牌であり、ロン以外はどんな和了り方でも跳満が確定している手牌。
ドラで手が圧迫されてしまう玄ちゃんのマイナス面が浮き彫りになっていた一局とはいえ、ここまで完璧に狙い撃った形の支配を発揮されてはもうどうすることもできない。
〇現在の点数状況(後半戦南4局5本場終了時点)
1位 白糸台 :148200点
2位 阿知賀女子 : 87800点
3位 臨海女子 : 84200点
4位 清澄 : 79800点
この跳満の直撃で完全に3コロ状態と化した先鋒戦の闘い。
全国2位の荒川さんが「ヒトじゃない」と形容する照の圧倒的な強さは、やはり全国3位のガイトさんを以ってしても止まらない次元にあるのか。それとも、最後の最後で全国最上位プレイヤーとしての意地を見せつけてくれるのか。
ここから先は「倍満(8回目)」「三倍満(9回目)」「役満(10回目)」と続いてしまうデッドラインの攻防戦。三校がどのように宮永照を止めるのか、最高のドラマを楽しみにしております。
次号は休載で、次回は5/15発売号で掲載予定。
『ぼくたちは勉強ができない』154話 感想:恋の終わりと恋の始まり!線香花火に想いは照らされ.....
ぼく勉 問154 感想「[x]=機械仕掛けの親指姫編④」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
ひょんなことから孤島で2人きりになってしまった成幸くんと理珠ちん。
2人とも泳げないため潮が引くまでは身動きが取れず、この場で一晩を過ごそうという流れになりました。
約束された王道のラブコメ展開が紡がれていく中で、2人の距離がどのようにして縮まっていくのか。楽しみにしつつ、早速感想を書いていきたいと思います。
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ぼく勉 問154:[x]=機械仕掛けの親指姫編④
さて。そんなわけで今回で理珠ちんルートも4話目です。
率直なお話、このルートは相対的に見てもエンディングまでの障害が最も少ないと思われるルートの一つで、実際ここまでの展開もかなりイチャイチャ濃厚接触風味(あくまでも相対的なお話ですので、葛藤がゼロと言っているわけではありません)で描かれてきました。
理珠ちんサイドは「絶対に振り向かせてみせる」の意気込みで彼にアプローチを行っているし、この世界線における成幸くんには他に気になっている子がいたり...なんてこともない。
従って、成幸くんが理珠ちんのことを恋愛対象として認識すればそれでもうグッドエンディングに至る条件は満たされることになり、「留学による離別を懸念していたうるか」や「友達の存在に葛藤してきた文乃さん」と比べてマイルド寄りな雰囲気になるのは、好みはともかく納得の展開と言える。
とはいえ、「好きな人と両想いになっていく」ということは、一見して当たり前のように思えても実際にはとても勇気のいることだったりもするわけですよね。
相手が何を考えていて、一体どんなことを想っているのか。
たとえ"言葉"に出したとしてもその全てを正確に汲み取るのはとても難しいことで、だからこそ、一人歩きする「ゲーム」というワードが2人の関係をより曖昧な方向へシフトさせる現状に繋がってしまっている。
これは「ゲーム」なんだよな?
俺らの...関係って 今...
流石に成幸くん側も強く意識はさせられていて、それでもあと一歩の距離を縮め切れていないのは、『これは「ゲーム」なんだよな?』という意識から脱却できていないから。
物語の起承転結を踏まえれば、ここから残りの一歩を埋める「キッカケ」がキッチリ描かれていくのだと思いますが、果たしてどんな展開が待っているのか。引き続き、楽しみにしたいところです。
恋の始まり、恋の終わり
さて。そんな理珠ちんルートの最中、久しぶりに武元うるかさん(回想)の御登場です。
このルートにおけるうるかは最後まで告白できずに留学先へ旅立ったと既に語られており、今回はその理由がクリスマスの日に2人の会話を目撃してしまったことだと判明しました。
本気の恋と勇気ある姿。
うるかもまた理珠ちんと同じように本気で恋をしていた。だからこそこのゲームがただのゲームではないとわかるし、「遊びなんかじゃないよ」と言い切ることもできる。
けれど、蛍のように深く恋焦がれる友人の姿を前に、5年間ずっと踏み出せなかった自分との違いを痛感したということなのでしょうか。
あたしにはたぶん できないかなぁ...
.....という言葉から感じられる彼女の切ない気持ち。
ヒロイン同士の気持ちを衝突させない方針を好む『ぼく勉』らしい台詞ですし、こういうテイストに関してあれこれ言うのも今更ですが、まぁやっぱり切なさはありますよね。
うるかルートではできた「告白」が違うルートではできない。
様々な前提が変わり、歴史修正が行われている状況なのも理解していますが、仮に誰かが動くとそれ以降どのヒロインも身を引くしかないという現象が全ての世界線で適用されるのなら、正直「一対多のラブコメ」としてあまり上手い手法だとは思いません。
わざわざifのルートとして個別の恋愛を描いているのに「早い者勝ち」みたいなリアルさを感じてしまうのは味気ないですし、個別ルートが前提の世界でエンドヒロイン以外の女の子たちにも触れるのならあまり一辺倒な展開にはしてほしくないなと。
なので、次の文乃さんルートではもう少しヒロインたちの間で丁寧に気持ちの交流が描かれてくれることに期待しています。
「打ち上げ花火」を見たあの日から始まり、長続きを象徴する「線香花火」のような恋に繋がっていく。誰もが幸せを願っているし、時には譲りたくない想いだってある。そんな本気の恋が花咲く展開を楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。
『咲-Saki-』第214局「単騎」感想
咲-Saki- 214局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
照の猛攻が続いている先鋒後半戦のオーラス。
怒涛の連続和了で一気にトップへと駆け上がり、続く南4局4本場も照は親の続行を宣言して連荘の姿勢を崩さない。
何とかして点差の拡大を抑えたいと三校が仕掛ける中、ここで優希とガイトさんが照に先んじて良形の聴牌を掴む流れに。
長らく続いてきた先鋒戦もいよいよこの局で決着となるのか、それともまだここから大波乱が待ち受けているのか。そんな期待値MAXの流れで迎えた珠玉の第214局、早速振り返ってまいりましょう。
<前回の感想>
第214局「単騎」
〇南4局 4本場 親:宮永照 ドラ:
さて。前局にタンヤオ七対子の3500オールをツモってトップに浮上した照の連続和了カウントは現時点で既に5回目。
ここから先は確実に親の「満貫」以上が飛び出す計算となり、ここで食い止めることができなければ照の大量リードがほぼ確定してしまう。
従って、失点を抑えるためには「他家への差し込み」も立ち回りの一つとして有効となるのだが、当然ながら事はそう簡単にはいかず、ここで四校の思惑が絶妙に絡み合い、場は壮絶な状況を生み出すことになる。
玄ちゃんの牌姿
ツモ 打
まずは現在2着の玄ちゃん。
この場でを切れば聴牌にたどり着けはするものの、次巡でドラのが重なる可能性を考慮に入れた場合、打よりもガイトさんの現物でもある打の方が総合的に見て確かにベターではある。
ここでドラの「or」を切れば優希の安手喰いタンに差し込める.....という読みは玄ちゃんからするとやや厳しめにも見えるし、そもそもドラ切りは諸々の条件を鑑みても極めてリスクが高い。
ゆえに、玄ちゃん視点で言えば、役なしの嵌張待ちを選ぶよりも打の方が合理的な一手だった。そう判断しての選択と読める。
ガイトさんの牌姿
ツモ 打
しかし、この局面でガイトさんが倍満手から「四暗刻単騎待ち」に手を伸ばしたことで、結果論ながらも玄ちゃんの選択が裏目を引く形になってしまうのが『咲-Saki-』の面白いところ。
次巡で玄ちゃんがドラの「or」を重ねた場合、流れ的に余ったを打つ可能性が非常に高く、結果、ガイトさんのスッタンに振り込む形になる。
やはりガイトさんの読みレベルは玄ちゃんや優希の数段上で、特に攻撃面で絶妙な読みを発揮するガイトさんの立ち回りは、防御面で超人的な読みを見せる姫松の洋榎ちゃんとは対照的なのかもしれない。
このまま次巡に四暗刻を和了りきり、4着から一気にガイトさんがトップ浮上の大逆転劇を演出する。
そんなお膳立ても見えてきた中で、ここから更なる奇跡が四角い宇宙に舞い込んでいくことになるわけであります。
宮永照と宮永咲をつなぐもの
宮永照の牌姿
ツモ 打
ヤバい………。ガチのワクワク展開が実現してしまって何なら語彙力がヤバい!
世界を知る2人が同時に役満をテンパり、極限の闘いに身を投じる。
まさしくエースの名にふさわしいギリギリの一騎討ちで、どちらが先に当たり牌を引いてくるのか、天国と地獄がそこで二分され、この局面を制した方が先鋒戦の覇者となる。
全国1位の照と全国3位のガイトさんによるガチンコ役満バトル。
客観的に見れば先にテンパイをしたガイトさんに分があることは明らかで、流れ的にも玄ちゃんのツモ番が来た段階でガイトさんの役満が炸裂する運びだった。
場決めの席次が「優希 ⇒ 玄ちゃん ⇒ ガイトさん ⇒ 照(ラス親)」の並びになっており、照の次巡ツモの前に玄ちゃんへのロン.......もしくはガイトさん自身がツモるで完全にオーケーなため、ここは流石にガイトさんが優勢だろうと。そう思っていた。
しかし!
この絶対的に不利な状況を鮮やかにひっくり返す照の立ち回りがここから描かれることになる。
玄ちゃんのツモ番に回る直前、下家の優希からこぼれたを喰い取り、まさかの大明槓コール。
その照の打ち筋にオーディエンスが驚愕の様相を呈する中、優希は宮永照の向こう側に妹の咲さんをダブらせる。
まさか………まさか………。
そう思いつつも、この状況で咲さんの影が映し出されたことの意味はもう一つしかない。
一巡の遅れを埋める王牌からの追加ドロー。それを可能にする大明槓の発声。必然、導きだされる役の名は……………。
嶺上開花!
あぁ……。役満対決すらもダミーに過ぎず、『咲-Saki-』を象徴するこの和了りがここで華麗に咲き誇る。
『咲-Saki-』本編(阿知賀編含む)において"嶺上開花"という役は極めて特別なもので、主人公の咲さん以外が和了った事例は連載14年間で「①合宿中のマホ ②Bブロック準決大将戦のネリー」の2回(※両方とも咲さんが同卓しているのもポイント)だけだった。
だからこそ、ここで照がこの役を和了ってくるとは思ってもいなかったし、ましてや咲さんを彷彿とさせる「五筒開花での責任払い」をやってのけるだなんて、もう天才の諸行としか思えない。
宮永照と宮永咲。そして、離れ離れになった姉妹をつなぐ思い出の麻雀役。
そうだね 咲
森林限界を超えた高い山の上 そこに花が咲くこともある
おまえもその花のように 強く
やはり作品の根底と宮永姉妹を貫くテーマはこの「嶺上開花」という役に帰結するのかもしれない。
原点と頂点。始まりと決勝。
照がこの大舞台で"嶺上開花"を和了ってみせたことの意義については、きっとこの先の展開で順に明かされていくのだと思う。
菫さんが咲さんに救いを求めていた第172局の描写からもわかるとおり、他者の本質を見抜く孤高の怪物としての宮永照を真に救い出せる存在は、やはり妹の宮永咲をおいて他にいないのだから。
果たして、照はどんな気持ちでこの役を和了り、対する咲さんは照の和了りに何を想ったのか。
いよいよ大詰めとなりそうな決勝先鋒戦の闘い。宮永姉妹の物語にも想いを馳せつつ、次回のお話を楽しみに待ちたいと思います。
〇現在の点数状況(後半戦南4局4本場終了時点)
1位 白糸台 :128700点
2位 阿知賀女子 : 107300点
3位 臨海女子 : 84200点
4位 清澄 : 79800点
次回は4/17発売号で掲載予定。
『ぼくたちは勉強ができない』153話 感想:恋とは何か?好きとは何か?教えてくれたのは君でした!
ぼく勉 問153 感想「[x]=機械仕掛けの親指姫編③」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
理珠ちんの可愛さがカンストしまくっているここ数回の個別編。
水着選びと海水浴を別々の回で描く貪欲なストーリー構成はもちろんのこと、この世界における緒方理珠の積極性も中々に半端ではありません。
水着姿を晒すことにさえ露骨に抵抗感を示していた初期の頃とは一転し、好きな人に自分を見てもらうための行動を自ら進んで取るようになった。
そして、その変化の源泉には当然「恋」という感情が関与していて、そんな気持ちを教えてくれたのは唯我成幸という男の子との出会いでした。
だからこそ、緒方理珠の恋物語の終着点として「恋心とは何か」「結ばれるとは何か」という命題(=問い)が描かれることは、文脈的に考えてもマストなのだと思います。
前回の感想でも書いた通り、自分の気持ちを自覚した彼女に残った課題が「唯我成幸の気持ちを知ること」である以上、機械仕掛けの親指姫編のゴール地点もそのあたりの内容が鍵になると見て間違いないでしょうから。
自分の気持ちを自覚し、「自分が本当に求めているものが何なのか」を知った緒方理珠。
正直なお話、僕はifルートに入る前の高校生編でこういう展開を一人ずつちゃんと描いて欲しかったと思ってきましたし、花火のジンクス次第で世界線が変わるだとか、うるかルートを走り切るために他ヒロインとの決着を流れ程度にしか描かないだとか、そういう描き方は正直僕個人としてはあまり好みではありません。
友達の恋を応援する。大切な人の恋を応援する。そういう気持ちは間違いなく美しいことだけれど、それでも、個々のヒロイン達に対して平等に機会が与えられず、やれることもやり切れないまま"大人になるしかない"展開に持っていかれることにはひどく違和感があったし、ストーリー上の都合を強く感じてしまったからです。
彼女たちを「キャラクター」として消費しようとは思いたくないし、あくまでも一人の「人間」としてみたい。本気になって楽しんだり、悩んだり、時にはぶつかったり。そういう、ちゃんと「人間」やってるなと感じられるお話がやっぱり僕は好きなんです。
ゆえに、高校生編で描き切れなかったヒロインたちの「人間らしい部分」「本当の気持ち」が描かれていくことをifのルートでは期待しています。
たとえifであろうとも、成幸くんと彼女たちが一体どんな恋の物語を見せてくれるのか。積み上げてきたもの、物語を構成する縦軸、そして…一番大切な気持ちのやり取り。その全てを踏まえて、メインヒロインと主人公唯我成幸のハッピーエンドを最高なものとして描き切って欲しい。
そんな淡い願望を抱きつつ、今週もまた気になった点について簡単に振り返っていきたいと思います。
<関連記事>
ぼく勉 問153:[x]=機械仕掛けの親指姫編③
さて。そんなわけで今週は海水浴編です。
緩い日常回を展開しつつも重要な会話が随所にちりばめられており、冒頭から色々と書きたいことが数点あったはずなのですが、4ページ目を開いた瞬間に全ての思考が溶けました。
まさか、ここで大学生文乃さんが最強の水着コーデを完成させて降臨なさるとは……。ジャンプを手に取った瞬間に感じた圧倒的なオーラはこのためだったのか………!
可愛い…………
さすがはミス太陽系代表の古橋文乃さんである。高校生時点でアルティメットビューティフルの極みでしたが、女子大生となった御姿も女神そのものです。
いくら理珠ちんメインのルートとはいえ、この世に流通している「可愛い」の約8割(※僕調べ)を担う宇宙一の大天使・古橋文乃さんが登場しないことには何も始まりませんからね。
この世界における文乃さんの認識がどう変わっているのかは推測しかできませんが、うるかの存在を気に留める描写は流石にこのルートだとノイズにしかならないと思いますので、おそらくは理珠ちんの積極的な姿勢を見て応援しようという立ち位置で関わってくるのでしょう。
また、そう考えると文乃さんの個別ルートがどういう風に展開されていくのかも少し気になるところです。
「①:問69の文化祭花火で手を繋ぐ ⇒ ②:①の事象により長編に変化が発生する ⇒ ③:②を前提とし関係性に変化が生じる ⇒ ④:大学生編に至る」
という流れで理珠ちん編は描かれていると予測がつきますが、文乃さんが自身の気持ちを完全に自覚したのは長編よりもそれなりに後の「問136」の時点でした。
だとすると、長編を一部改変してどうこうみたいな展開にはならず、問136のエピソードで「すき」という言葉が伝わっていた世界線、あるいは……もっと違う何かになる可能性もあるのかもしれませんね。
いずれにしても、高校生編では描かれなかった文乃さんの本心がきちんと成幸くんに伝わること、「家族」というピースが根底に敷かれている中で文乃さんが大好きなお母さんから大切な言葉をもらっていること。
そういった諸々の積み重ねがしっかりと活きてくる、完全無欠のグッドエンディングを見せてくれたら嬉しいなと思っています。
好きという感情を教えてくれたのは...?
一方で、主人公の唯我成幸くんといえば、持ち前の鈍感力をいかんなく発揮し、無自覚なまま女の子を感傷的な気持ちにさせてしまうのであった……。
ストーリーのフォーマット的にある程度は仕方がないわけですが、ここにきて人の気持ちを理解できていないのがむしろ唯我成幸の方だと突きつけてくる展開になっているのが何とも面白いですね。
理珠ちんが提示した「ゲーム」の裏側にある真の気持ち。
それは単なる興味本意の感情などではなく、一年という時間の積み重ねの末に見つけた大切な気持ちです。
「ゲーム」という体裁を保って提案を持ちかけたのは彼にその気持ちをわかってもらえないからであって、勝ち負けを決めたいがために「ゲーム」をやっているわけじゃない。
振り向いてもらいたくて。好きになってもらいたい。
この「ゲーム」はそういう想いを前提にして成り立っている。だからこそ、ただの「ゲーム」という体裁のまま「勝ち負け」を決めること自体に"意義"はなく、彼女がこの「ゲーム」を仕掛けた理由、その裏側にある気持ちを彼が自覚することで2人の両想いは完成する。
ずっとゲームに負け続けてきた彼女が物語の最後に「勝利」を飾り、そのうえでゲームに勝つことよりももっと大事なものを2人の手で掴んでいく。
そんな熱いラストに期待したくなりますが、果たしてこの先どうなるのか...。次週も引き続き海水浴編という事で、文乃さんの登場も楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。