咲-Saki- 214局(以下、咲-Saki-本編最新話感想のため未読の方はネタバレ注意)
照の猛攻が続いている先鋒後半戦のオーラス。
怒涛の連続和了で一気にトップへと駆け上がり、続く南4局4本場も照は親の続行を宣言して連荘の姿勢を崩さない。
何とかして点差の拡大を抑えたいと三校が仕掛ける中、ここで優希とガイトさんが照に先んじて良形の聴牌を掴む流れに。
長らく続いてきた先鋒戦もいよいよこの局で決着となるのか、それともまだここから大波乱が待ち受けているのか。そんな期待値MAXの流れで迎えた珠玉の第214局、早速振り返ってまいりましょう。
<前回の感想>
第214局「単騎」
〇南4局 4本場 親:宮永照 ドラ:
さて。前局にタンヤオ七対子の3500オールをツモってトップに浮上した照の連続和了カウントは現時点で既に5回目。
ここから先は確実に親の「満貫」以上が飛び出す計算となり、ここで食い止めることができなければ照の大量リードがほぼ確定してしまう。
従って、失点を抑えるためには「他家への差し込み」も立ち回りの一つとして有効となるのだが、当然ながら事はそう簡単にはいかず、ここで四校の思惑が絶妙に絡み合い、場は壮絶な状況を生み出すことになる。
玄ちゃんの牌姿
ツモ 打
まずは現在2着の玄ちゃん。
この場でを切れば聴牌にたどり着けはするものの、次巡でドラのが重なる可能性を考慮に入れた場合、打よりもガイトさんの現物でもある打の方が総合的に見て確かにベターではある。
ここでドラの「or」を切れば優希の安手喰いタンに差し込める.....という読みは玄ちゃんからするとやや厳しめにも見えるし、そもそもドラ切りは諸々の条件を鑑みても極めてリスクが高い。
ゆえに、玄ちゃん視点で言えば、役なしの嵌張待ちを選ぶよりも打の方が合理的な一手だった。そう判断しての選択と読める。
ガイトさんの牌姿
ツモ 打
しかし、この局面でガイトさんが倍満手から「四暗刻単騎待ち」に手を伸ばしたことで、結果論ながらも玄ちゃんの選択が裏目を引く形になってしまうのが『咲-Saki-』の面白いところ。
次巡で玄ちゃんがドラの「or」を重ねた場合、流れ的に余ったを打つ可能性が非常に高く、結果、ガイトさんのスッタンに振り込む形になる。
やはりガイトさんの読みレベルは玄ちゃんや優希の数段上で、特に攻撃面で絶妙な読みを発揮するガイトさんの立ち回りは、防御面で超人的な読みを見せる姫松の洋榎ちゃんとは対照的なのかもしれない。
このまま次巡に四暗刻を和了りきり、4着から一気にガイトさんがトップ浮上の大逆転劇を演出する。
そんなお膳立ても見えてきた中で、ここから更なる奇跡が四角い宇宙に舞い込んでいくことになるわけであります。
宮永照と宮永咲をつなぐもの
宮永照の牌姿
ツモ 打
ヤバい………。ガチのワクワク展開が実現してしまって何なら語彙力がヤバい!
世界を知る2人が同時に役満をテンパり、極限の闘いに身を投じる。
まさしくエースの名にふさわしいギリギリの一騎討ちで、どちらが先に当たり牌を引いてくるのか、天国と地獄がそこで二分され、この局面を制した方が先鋒戦の覇者となる。
全国1位の照と全国3位のガイトさんによるガチンコ役満バトル。
客観的に見れば先にテンパイをしたガイトさんに分があることは明らかで、流れ的にも玄ちゃんのツモ番が来た段階でガイトさんの役満が炸裂する運びだった。
場決めの席次が「優希 ⇒ 玄ちゃん ⇒ ガイトさん ⇒ 照(ラス親)」の並びになっており、照の次巡ツモの前に玄ちゃんへのロン.......もしくはガイトさん自身がツモるで完全にオーケーなため、ここは流石にガイトさんが優勢だろうと。そう思っていた。
しかし!
この絶対的に不利な状況を鮮やかにひっくり返す照の立ち回りがここから描かれることになる。
玄ちゃんのツモ番に回る直前、下家の優希からこぼれたを喰い取り、まさかの大明槓コール。
その照の打ち筋にオーディエンスが驚愕の様相を呈する中、優希は宮永照の向こう側に妹の咲さんをダブらせる。
まさか………まさか………。
そう思いつつも、この状況で咲さんの影が映し出されたことの意味はもう一つしかない。
一巡の遅れを埋める王牌からの追加ドロー。それを可能にする大明槓の発声。必然、導きだされる役の名は……………。
嶺上開花!
あぁ……。役満対決すらもダミーに過ぎず、『咲-Saki-』を象徴するこの和了りがここで華麗に咲き誇る。
『咲-Saki-』本編(阿知賀編含む)において"嶺上開花"という役は極めて特別なもので、主人公の咲さん以外が和了った事例は連載14年間で「①合宿中のマホ ②Bブロック準決大将戦のネリー」の2回(※両方とも咲さんが同卓しているのもポイント)だけだった。
だからこそ、ここで照がこの役を和了ってくるとは思ってもいなかったし、ましてや咲さんを彷彿とさせる「五筒開花での責任払い」をやってのけるだなんて、もう天才の諸行としか思えない。
宮永照と宮永咲。そして、離れ離れになった姉妹をつなぐ思い出の麻雀役。
そうだね 咲
森林限界を超えた高い山の上 そこに花が咲くこともある
おまえもその花のように 強く
やはり作品の根底と宮永姉妹を貫くテーマはこの「嶺上開花」という役に帰結するのかもしれない。
原点と頂点。始まりと決勝。
照がこの大舞台で"嶺上開花"を和了ってみせたことの意義については、きっとこの先の展開で順に明かされていくのだと思う。
菫さんが咲さんに救いを求めていた第172局の描写からもわかるとおり、他者の本質を見抜く孤高の怪物としての宮永照を真に救い出せる存在は、やはり妹の宮永咲をおいて他にいないのだから。
果たして、照はどんな気持ちでこの役を和了り、対する咲さんは照の和了りに何を想ったのか。
いよいよ大詰めとなりそうな決勝先鋒戦の闘い。宮永姉妹の物語にも想いを馳せつつ、次回のお話を楽しみに待ちたいと思います。
〇現在の点数状況(後半戦南4局4本場終了時点)
1位 白糸台 :128700点
2位 阿知賀女子 : 107300点
3位 臨海女子 : 84200点
4位 清澄 : 79800点
次回は4/17発売号で掲載予定。