『ぼくたちは勉強ができない』144話 感想:唯我成幸の気持ちと恋愛物語における「区切り」の意味
ぼく勉 問144 感想「泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ③」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
文乃さんによるキス未遂が引きとして描かれていた前回の『ぼく勉』。
この状況から一体どんな展開になっていくのかとドキドキしていた中、いざ今週号のページを開いて広がってきた光景は「ぼく勉」ラブコメワールドを象徴する優しい世界でした。
文乃さんが自発的にうるかと理珠ちんに気持ちをぶつけるでもなく、「遠慮」を取り払うための舞台装置としてキス未遂事件が描写され、文乃さんが2人の優しさに触れることで自身の認識を改めていく。
作品的に言えば「らしさ」があって良いのでしょうし、実際これくらいストレスフリーな展開の方が気楽に読むことができるのかもしれませんけれど、それでも個人的にはもう少し厚みのあるお話を読んでみたかったなと思う展開ではありました。
どこまでも武元うるかというヒロインは優しくて良い子で。真っ先に「実はあたしこの前 成幸に告白したんだ」と打ち明けたのもうるかだった。
「うるかと成幸くん」の恋物語が長編のメインテーマになっているだけでなく、友情ストーリーの締め役を担っていたのもうるか。そのあたりの事情を踏まえても、流石にもう「うるかエンド」は揺るがないのでしょうね。
同じ男の子を好きになってしまった女の子たちの気持ち。
文乃さんが2人の恋を大切にしてきたように、2人もまた文乃さんの恋をきちんと受け止める。「大切な友達」と「譲れない恋」の同居に涙しつつも、「心のままに動いてよ」と約束し、幸せをみんなで追いかけていこうと誓い合う。
そんなヒロインたちの葛藤が描かれていた中で、主人公の成幸くんが最後にどんな「答え」を出すのか。早速、今回のお話を見ていきたいと思います。
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さて。うるかの告白から始まった長編も今回でついに3話目ですが、しかし全体を貫くメインテーマは依然として変わりません。
成幸くんが今の状況に対して何を想い、そしてどんな結論を出すのか。既にうるかが気持ちを打ち明けている以上、残るは当然「成幸くん側の気持ち」こそが物語の焦点になる。
そんな文脈の中で、
これから海外で活躍するようなアスリートの方にとって...
れ...恋愛とか恋人の存在とかって
邪魔になったりするものなんでしょうか...
という想いを彼が美春さんに語っていることの意味を考えれば、まぁこの先の展開は自ずと見えてきますよね。
武元うるかが歩んでいく「水泳選手」としての道。
そこには、持って生まれた才と色んな人たちからの期待を背負い、たくさんの感情に向き合って一つの方向に進んだうるかの想いがある。だからこそ、彼女から勇気を貰い、彼女を尊敬する一人として邪魔にはなりたくない。それが成幸くん自身の「気持ち」であり、そして課されている問の答えになる。
「自分にとって武元うるかとは何か?」という主体的な問題と「武元うるかにとって一番の幸せとは何か?」 という相手を主体とする問題の双方に向き合っていくこの流れ。
「やれること全部やりきるまでは好きな人なんていない(問90)」という信条のもとに告白の返事を求めなかったうるかと、そんな彼女の将来を誰よりも大切に考える成幸くんの想いを交わらせるルートはもう一本しかない。
かつて「約束」をした、
今は死ぬ気で水泳がんばるから…っ。
だからずっと…ちゃんと見ててねっ!
の言葉どおり、うるかがその道を走り切った末に成幸くんの一番になる。そんな展開が予想されますが、果たしてこの先どうなるのか...。次週以降の展開に注目したいところです。
気持ちに区切りをつけていく
……というメインシナリオの傍らで声もなくその気持ちに区切りをつけていたヒロインが一人。
なるほど……。
その感情が"恋"なのかどうかはともかく、もし自分が高校生だったら…と考えてしまうくらいには、真冬先生もまた成幸くんに対して「募る想い」を抱いていたと。
それが"年齢の壁"というどうしようもない理由で「心のままに動く」ことさえ許してもらえず、当然成幸くん側にその気持ちが伝わることもない。
もちろん成幸くんの優柔不断な姿が見たいわけではありませんが、それでも彼の認識があまりにも他のヒロインたちに向いていなさすぎるのが切ないなと思いますね。
このままうるか以外のヒロインが何もせず一方通行なままにその恋を閉じていくのだとしたら、正直最後まで読んでいくのはかなりしんどいなと言わざるを得ない。
だからこそ、彼女たちが向き合ってきた葛藤を成幸くんがしっかり受け止めて、きちんと卒業させてくれることを願ってやみません。
成幸くんと培ってきた時間や想いを成幸くんとの間で描き切る。そんな光景が見られることを願いつつ、成幸くんがどんな「答え」にたどり着くのかを見届けたいと思います。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。