『ぼくたちは勉強ができない』147話 感想:背中を向けて君は歩き出した...枯れた頬に伝う誰かの涙
ぼく勉 問147 感想「泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ⑥」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『ぼく勉』を読みました。
既にお読みになられている読者の皆様はご承知の通り、主人公・唯我成幸くんの想い人は5年も前からずっと憧れ続けてきた女の子・武元うるかです。
「俺にとって武元うるかとは何か(問1)」という問いに"愛おしい"という解を出していることからもそれは明らかだったわけですが、しかし、その気持ちに反して動くことができないでいるのは、うるかの夢を邪魔したくないという理由からでした。
才能と努力、色々な人達からの期待。そういうもの全てを背負い、たくさんの気持ちと向き合って一つの方向に進んだうるかの想いを推し量ればこそ、
何があっても俺は
あいつの夢の邪魔だけはしたくない
と思う。それが、武元うるかにとっての一番の幸せなの(だと自分に言い聞かせていたの)だから。前回までのお話としては、そういう文脈だったかと思います。
とはいえ、当然その流れは「本当にやりたいことが『できない』んじゃ決して幸せとは言えないもんな」という本作のテーマに矛盾する。
何がしたくて、何を叶えたいのか。それを決めるのはあくまでも自分自身です。「うるかの幸せ」を決めるのが他でもなくうるか自身であるように、成幸くんの幸せを決めるのも成幸くん自身でなくてはならない。
今週のお話で語られていたのは、そんな「幸せとは何か」についてのお話でした。
成幸くんが自問している2つの命題の内の問1に関しては既に解が出ていて、問2の"幸せとは何か"について悩んでいるのが現状ですよね。想いがあるのに邪魔になりたくないから動けず(=できず)にいる。そういう文脈なので、彼の認識が正される流れでうるかENDに向かっていくんだろうと思います。#ぼく勉 pic.twitter.com/HaVKMpBEKa
— ふわふわ (@huwahuwa014) February 14, 2020
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ぼく勉 問147:「泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ⑥」
例外こそ数あれど、学園を舞台にしたラブコメ作品でテーマとなるのは、基本的に「夢」と「恋」の青春二大要素です。
将来の定まっていない高校生たちの葛藤や成長を描くうえで「進路」は極めて重要な要素であり、この難題に向き合っていく過程を通して主人公とヒロインたちの出会いと交流が繰り広げられていく。
「恋物語」の決着はそんなプロセスの総決算として描かれ、主人公がヒロインたちから何を貰ったのか、ヒロインたちが主人公から何を貰ったのか、その双方が見えてくるお話になる。
そういう"筋書き"と照らし合わせれば、『ぼく勉』はまさしく王道ラブコメの花形を歩んだ作品と言えるのかもしれない。
「人の心に疎かった」理珠ちんが、やりたいことを我慢して動けずにいた成幸くんの背中を押す。
成幸くんの気持ちを"察している”からこそ「あえて告白はしない」し、精一杯の笑顔を向けながら彼を送り出す姿を描くことで緒方理珠が「機械仕掛けの親指姫」からの卒業を完全にやり遂げたという事実を僕らに提示してくれる。
あくまでも構造的に読めば納得ができるし、ストーリーとしては筋が通っているんじゃないかなとも思います。
「心のままに」とは何か
とはいえ、当然のことながら人には「感情」というものがあるわけです。
正直なお話、終盤の『ぼく勉』ワールドには恋愛特有の幸せな息苦しさや胸がきゅんとくる感じが全くなかった。
定められた構造を順守することが悪いとは思わないけれど、「恋物語の決着という最終局面で」登場人物たちが決められたルーティンをこなしていく姿を見せられて本心から感動できていますか?と問われれば正直中々に難しいものがあったと言わざるを得なかった。
「心のままに」動いた結果として成幸くんのことを応援する道を選んだ文乃さん。
覚悟していたこととは言え、全身を貫かれるような痛みがそこにある。
もはや、うるかに会いたくて会いたくて震えている成幸くんに告白をしたところで余計な混乱を招くだけ。成幸くんが「答え」を出した時点で、もう文乃さんに残された選択肢は姉として弟の背中を優しく押してあげることだけだった。
自分の気持ちを伝えることができなかったばかりか、「俺はうるかに会いたい」という魂の叫びを面と向かって突きつけられる。
キーボードを叩きながら軽く死にたくなってくる構図である。けれど、それが文乃さんの選択であるというのならもう受け入れて前に進んで行くしかありません。
自分を幸せにしてくれた人を幸せにしたい。自分の手を取り、やりたいことを応援してくれた彼だからこそ応援してあげたい。そういう気持ちもきっととても大切で尊いものだと思うから。
枯れた頬に伝う涙を精一杯押し込めて。
一歩一歩彼女たちは前に向かって歩き出す。彼が2人を選ばなかったことを後悔するくらい最高に魅力的に。そんな恋物語の決着に涙が止まらなかった問147「泡沫の人魚姫は約束の[x]に濡つ⑥」のエピソードでありました。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。