五等分の花嫁 50話 「七つのさよなら⑫」 感想
五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『五等分の花嫁』を読了しました。
前回からの流れを踏まえても、今週のお話がとても重要なエピソードになるだろうということは想像に難くなかったのですが、そんな予想もなんのその。遥か上を行く面白さを叩きつけられて現在進行形で脳がやられております。あぁ、本当にこの作品は面白すぎるよ...!(魂の叫び)
そんな心境のなか、幾ばくかの冷静さを携えながら感想を書いていくのは至難の業ではありますが...、なるべくいつもどおり書いていきたいと思います。今回の物語では、「過去」と別れ、「未来」へと向かっていくフータローと五つ子たちの「気持ち」、そして「覚悟」が印象的に描かれていました。
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素直な気持ちをぶつけ合って!
前回、自分たちの元から去ろうとするフータローに対して「決意」の表情を浮かべていた五つ子たち。そして、今回先陣を切ってフータローに「素直な気持ち」をぶつけたのは二乃でした。
これにはおそらく意味があります。彼に直接「あなたが必要です」と言った五月でも、誰よりも真っ直ぐな好意を示してきた三玖でもなく、二乃が五つ子を代表して、フータローへ想いを語った理由。そこに今週のお話のポイントがある。
というのも、今回の物語の核はやっぱり「素直な」気持ちなんですよ。要するに、これまでなかなか「素直」になれなかった二乃が、今度はフータローの『心の扉』を開く役割を担う構図になっているのです。「七つのさよなら」編が二乃の成長をテーマにしてきたことを踏まえれば、まさにこれはその集大成とも言える描写ですよね。
その証拠に、今回の物語の前半でフータローが家庭教師を辞任する理由として挙げていたものは、全て「理屈」で語れるもの(=「素直な気持ち」と対になるもの)しかありませんでした。
「二度のチャンスで結果を残せなかった」「だったらプロに任せるのが正解だ」。それはもちろん、彼が姉妹たちのことを考えて出した結論ではありますが、そこには他ならぬ「彼自身の気持ち」が含まれていないんです。
つまり「どうしたいか」ではなく「どうあるべきか」で語っているから、彼が必要だという「気持ち」で動く彼女たちと、フータローの間にはすれ違いが生まれてしまうのですね。
そんなフータローに対して、自分の言葉で「素直な感情」をぶつける二乃の姿がとてもいじらしいじゃないですか.......。
「ここまでこれたのは全部あんたのせい」「最後まで身勝手でいなさいよ」。一見すると素直ではないように思えるこの言葉の中に、彼女の精一杯の「素直」が詰まっている。どこまでも彼女は、彼女らしいままに、成長を遂げたんだなぁ...というのがわかる本当に素晴らしいシーンだったと思います。あぁ、本当に今週の二乃は可愛すぎるよ..!(悶絶)
彼と彼女がこれから歩いていく道、”新しい物語”
また、今回のお話で注目すべきは、やはり彼女たちが「新しい家」を借りていたことでしょうか。全く予想していなかったというわけでもありませんが、正直この展開の美しさには圧倒されました。
ここ数週の感想でも書いてきたとおり、フータローが家庭教師の任を降りるという決断をしたこの一連のエピソードには、彼と彼女たちの結びつきを「外的要因(=義務、仕事としての家庭教師)」から「内的要因(=気持ち)」へとシフトさせるという狙いがあったんだと思います。それは今週の二乃の姿を見ても明らかでしょう。
しかし、そこから更に「新しい家」という要素を描くことで、気持ちだけではない、彼女たちの「覚悟」を示してきたわけですね。
「七つのさよなら」が掲げる”過去”から”未来”へというムーブメントの中に「中野家(過去)」→「新しい家(未来/巣立ちの象徴)」が加わった。テーマを重視しながら思い切りの良いストーリーメイキングを繰り広げる、実に春場先生らしい展開です。
そして....、前回の感想でも言及しましたが、「大切なのはどこにいるかではなく五人でいること」というセリフをこういう形で活かしてくるのが本当に凄いと思うんですよ。七つのさよなら編をこう締めてくるのか...!と驚愕しきりでした。
というのも、このセリフって、二乃と五月の「家出騒動」とフータローの「辞任問題」を経て、”一緒にいること”の大切さを改めて彼女たちが痛感してきたからこそ活きてくる描写でもあるんですよね。
大切なのは”みんな”でいることであって、場所は関係ない。”みんな”がいる場所こそが、自分たちの帰る場所。お母さんが言っていたからではなく、一度バラバラになった彼女たちだからこそ、心からその言葉の持つ意味を理解することができる。きっと、この点もまた長編シリーズが内包する大きなテーマの一つだったのではないでしょうか。
過去へのさよならと「未来」を選んだフータロー
加えて、今回の描写の中でこれまた面白いなと思ったのが、川へと転落したフータローを助けるために5人全員が飛び込んでいくシーン。個人的にとても印象深い描写でした。
無論、このシーンを描いた理由は、42話における零奈との対比関係を示すためでしょう。
池に落ちたフータローへ「さよなら」を告げた零奈に対し、今回は5人全員がフータローの元に飛び込んだ。要するに、「さよなら」と対になる彼女たちの想い(=フータローと一緒にいたいという気持ち)を表現する描写として、川に飛び込むという行動が描かれたわけです。
じゃあ、一方のフータローはどうなのか。
そこが今回の物語のキモでもあったわけですが、まさか零奈から渡された「彼女の正体に繋がる手ががり(=過去の象徴)」を振り切って、二乃を助けるという展開にしてくるとは...。「過去」への未練を断ち切り、しっかりと「これから」を選択したフータローの姿は、もう感無量としか言いようがないほどのインパクトがありました......。
しかし、考えてみればやっぱりこうなる以外の展開はなかったのだとも思います。だって、「写真の子」は初めて彼を必要とし、彼の隣に立ってくれた人でしたけれど、今の彼にはもう心から自分を必要としてくれる人たちが5人もいるのですから...。
だから、もう大丈夫。5年前の”思い出”にきちんと区切りをつけて、「これから」は5人と一緒に新しい”思い出”を作っていける。きっと、零奈へ「さよなら」を告げたフータローの表情には、そんなメッセージが込められているのでしょう。
ずっと見つめ続けてきた「過去」のしがらみ。そこから解き放たれ、前を向き始めた彼は、五つ子たちと一体どんな「未来」を歩んでいくのでしょうか。それを思うと、楽しみで仕方ありませんね!
二乃が掴んだもの、その気持ちについて
というわけで、色々と感想を書いてきましたが、最後に少しだけ、二乃について触れていきましょうか。今週のキーマンはやはり二乃だと思いますから!
そもそも「七つのさよなら編」という長編ストーリーを経て、二乃は一番大きな変化を遂げてきた子でした。
印象的な点を言えば、「過去」との向き合い方が変わったし、それに伴って髪型も変わった。今回、あそこまで「飾らない気持ち」を剥き出しにしながらフータローに向きあっていく姿を見せたことにしても、昔の彼女であればありえなかったことでしょう。
そして、極めつけはやはりフータローに対する「気持ち」の変化です。
溺れているところをフータローに助けられ「ドキドキ」が止まらなくなっている二乃の姿は、明らかに「信頼」という枠を越えた感情の芽吹きを予感させるもの。どう見ても...なシーンであることは言うまでもないですよね。
とはいえ...、今回の一件は、彼女にとってスタートラインでもあります。要するに本番は「これから」。五月は少しばかり例外ですが、『五等分の花嫁』という作品において、それぞれが抱えていた悩みにきちんと向き合い、フータローと信頼を結ぶことは、あくまでも彼女たちが今後抱いていく「特別な感情」への入り口なんですよね。
ゆえに、三玖や一花さんがそうであったように、その『心の扉』の先にある恋心とどう向き合っていくのか、それこそが今後の二乃エピソードの主題になっていくのでしょう。花火大会の頃には掴みきれなかった「気持ち」をようやく掴んだ二乃がこれからどう変わっていくのか、わたしとても気になります!
...というわけで、今週の感想を総括すると.....
今後描かれていく”新しい物語”に期待大!
三玖は今週も最高に可愛かったなってことです!
「成功は失敗の先にある」、フータローが語ってきた言葉はやはり彼女の中でいつまでも生き続けていくんですね。こういう好きな人に対する「真っ直ぐさ」こそが彼女の魅力の根幹なんだなぁ...というのを再認識させられる回でもありました...。
さて、これで全12話をかけて紡がれてきた「七つのさよなら」編も無事に大団円でしょうか。
「過去」を抱きしめて、いつか、かけがえのないの思い出へと変わっていく、「未来」へのスタートを切った彼と彼女たち。お互いの大切さを再確認した彼らが、「これから」どんな明日を歩んでいくのか。ここからが本当のはじまりですね!
※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。