五等分の花嫁 57話 「最後の試験が五月の場合」 感想
五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
”私の夢”のために...
今週の『五等分の花嫁』を読了しました。もう本当にこの作品は面白すぎるよ...。
読んだ後に「これ、本当に20ページしかなかったの!?」となるくらい毎週密度の濃いストーリーを展開してくるので読後の満足度が尋常じゃありません。これほどまでに作品世界に没入してあれこれと物事を考えたくなる作品って個人的にそう多くはないんですよね...。
特に今回の”最後の試験”シリーズは、これまでのストーリーの中で積み上げてきた背景を軸にして、各ヒロイン達の抱える想いが丁寧に描かれているので、とりわけそう感じさせられるのかもしれません。今週の五月のお話も最高に熱いの一言でした。
ついに”夢”のスタートラインに立った中野五月の物語。ずっとお母さんに”憧れ”てきた彼女が、いかにして自分だけの”夢”を見つけていったのか。今回はその点について触れていきたいと思います。
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中野五月がずっと憧れてきた「お母さん」について
「私はお母さんのようになれるのでしょうか...」。
時は1月14日。お母さんのお墓参りへ来ていた五月は、一人そう呟いていました。
やはり既に彼女たちのお母さんは亡くなってしまっていたんですね。そして、五月は毎月14日の月命日になるとお母さんの墓前にお花を手向けに行っている、と。なるほど、とても五月らしいですし、こうして毎月近況をお母さんに報告しているのだと思うと、とても目頭が熱くなるじゃありませんか.......。
しかし一方で、これは五月が「お母さん離れ」出来ていないことの表れでもあります。もちろん、お墓参りに行くこと自体は悪いことじゃない。むしろ、行為自体はとても素晴らしいことでありましょう。
でも、五月は少しばかり「お母さん」という存在に捉われがちな面がありました。
41話でも「だから私は母の代わりとなって みんなを導くと決めたのです」と言っていたように、これまでの五月はずーっと、お母さんの背中を追い続けてきたんですよね。だから、「お母さんが先生としてどんな仕事をしていたのか知りたい」と言う。他でもなく、「お母さんのように」なるために。
以前の感想でも書いた部分ではありますが、やはりこれこそが五月が抱える問題でもあったと思うんです。
無論、今回かつてのお母さんの教え子でもある下田さんが言っていた通り、”憧れる”ことは悪いことではありません。実際に、下田さん自身も五月たちのお母さんに影響を受けて、自分の道を決めた人なわけですからね。誰かが誰かに影響を与えていくこと。それ自体は問題じゃない。
では、五月の何が問題なのかというと、もちろんお母さんの「代わり」になろうとしていることでしょう。要するに、最も大切なことは、そこに中野五月としての想いが一体どれだけ含まれているのかという部分なわけですね。
今回は下田さんという新たなる登場人物を投入することで、この点が克明に描かれていたように思います。五月にまつわるお話として、とても重要なところなので、少しこの部分について掘り下げていきましょうか。
”憧れ”は今、自分だけの”夢”になる!――中野五月がなりたいものについて
「お母さんのように」なりたい。そんな、子供の頃(五年前)からずっと抱き続けてきた五月の”憧れ”の念を下田さんはきっちり見抜いていました。
”夢”と”憧れ”。それは、言い換えれば「自分」と「他者」とも言えるのかもしれません。”夢”は自分が持つもので、”憧れ”は他者に対して抱くもの。そこにはやはり明確な境界線があるんですね。
極端なお話、お母さんのようになるだけなら、下田さんも語っている通り「先生」という職業を目指す理由はないのです。
美人でカッコよくて他者を惹きつけるような人になる方法は他にいくらでもあるし、逆を言えば「先生」になったからと言ってお母さんのようになれるわけじゃない。
むしろ、五月がお母さんのように鬼教師になれるとは思えないじゃないですか。そこからしてもう中野五月は中野五月でしかないということが示唆されているわけですよね。
じゃあ、何が正解なのか。いや、この場合、試験のように明確な正解なんて存在しないのかもしれないけれど、でもだからこそ、無数に存在する答えの中から五月が自分だけの答えを導きだしていくことに大きな意味があるとも言えるのでしょう。
だが その中にも先生の”信念”みたいなもんを感じて
いつしか見た目以上に惚れちまってた
そして、今回五月が出した答えは、きっと自分の中に『信念』を持つこと。すなわち、自分だけの『夢』を持つことでした。かつての、お母さんがそうであったように。
要するに、お母さんの背中を追うのではなく、自分だけの”夢”に向かっていくことが、結果的に「お母さんのように」なることに繋がっていたわけです。それは、お母さんの中にある『信念』に惹かれたと、下田さんが言っていたことからも明らかですよね。
だからこそ、五月は語ります。「あの時の気持ちを大切にしたい」のだと。このシーンはもう何とも言葉では形容しがたいレベルに素晴らしいシーンでした...。
お母さんが「先生」だったから「先生」になるんじゃない。誰かに勉強を教えることで「ありがとう」と言ってもらえる。誰かの力になって、誰かに「必要とされた」時の気持ち。自分の中にあるそんな想いを大切にしていこう。それが中野五月が教師になりたい「理由」。たどり着いた答え。
もう、最高に痺れましたね。お母さんの背中を追いかけるという意味での「お母さんのように」ではなく、自分の中にある気持ち(=信念)に従って先生を目指すことが「(結果として)お母さんのように」なっているという構図。もはや神回という言葉では片付けられないほどシナリオが光っていてひたすらに感服するばかりでありました。
そして、やはり中野五月にとって上杉風太郎は彼女の人生を語る上で、とても大きな存在になっていくのだろうということがわかるお話でもあったのだと思います。
きっと、フータローに出会わなければ、五月は自分の中にある気持ちに気付くことは出来なかったはずですから。ゆえに、彼女がフータローから教わったことは「勉強」だけではなく、お母さんとの向き合い方であり、もっと言えば、生き方そのものとも言えるのでしょう。
それを踏まえると、やっぱり中野五月という少女はヒロインでありながら『五等分の花嫁』という作品の中で上杉風太郎とはまた違う役割を与えられた主人公のようにも思えるなぁ...と。これが五月を未来の花嫁候補だと感じさせる大方の理由にもなっているんですよね。
もちろん決めつけて読んでいるわけではありませんが、何よりも『五等分の花嫁』という作品が内包している「家族」という重要なテーマを一挙に引き受けているのが五月なので、その点は気になるところ。お母さんにしてもお父さんにしても、必ず五月を軸にして物語が描かれていますし。
まぁ、カップルが成立するだけのお話ならそこまで気にはならないのでしょうけれど、この作品は最終的に結婚まで行くことが確定している、即ち、新しくフータローと「家族」になっていくヒロインが選ばれるわけなので、五月の立ち位置に特別性を感じるのは物語的に自然なのかもしれませんね。
これからの展望
というわけで、”最後の試験”シリーズも、順当に行けば、残すは2人のみということになりました。
一花さんと二乃。中野父への繋ぎを考えれば、トリは五月になるような気もしましたが、この2人が残ったということはここからはもちろん恋愛方面のお話が描かれていくことになるのでしょう。
で、そこへ行くと前回の感想でも書いた通り、個人的な大トリ予想は一花さんですが、肝心なのはどんな内容になるかなんですよね...。希望的な観測で言えば、「三玖の告白」の件を唯一知っている一花さんが三玖の点数を超えてくる、または同点という展開を予想しているんですが、果たしてどうなるのか。
また、今回新たに登場した下田さんの存在も気になるところ。
姉妹たちのお母さんについて知っており、五月の”夢”にも大きな助言を与えてくれた存在であることに加えて、「上杉」「中野」「下田」という名前の並びを匂わせる人ですからね。ストーリー的に見ても超重要な人である予感しかしませんよ....。
まぁ、真っ当に予想するなら、この人が中野父の言っていたプロの家庭教師ということになるのでしょう。
「塾講師」と一口に言っても、マンツーマン授業だってあるので「家庭教師」と言えなくもないですし、物語的に意味のない描写を入れるとは思えないので、今回五月と連絡先を交換したことがきっと次の物語に繋がる要素になるのだと思いますし。
「赤点回避」「三玖の告白」「新たな家庭教師」。様々な要素と人間関係が複雑に絡み合う、”最後の試験”シリーズですが果たしてどんな決着を見せるのか。いよいよ大詰めですね。一花さんと二乃の勇姿に全力で期待しております!
というわけで、今週の感想を総括すると....、
今週の五月が可愛すぎる問題
今週の五月は最高に可愛かったなってことです!
「めちゃ美人」なお母さんに似ていると言われて照れる五月の可愛さとか、さらりとバレンタインデーの日に大切な人と一緒に大切な人のお墓参りをしてしまう運命力の強さとか、もう色々とね...五月先生半端ないですわ!
お母さんへの”憧れ”を、自分の”夢”に昇華させた五月。「子供」から「大人」になるためのスタートラインに立った五月のこれからの活躍が楽しみですね。こんなに続きが気になるラブコメ漫画に出会えた幸運に本当に感謝しかない...。早く来週来てください~!(魂の叫び)
※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。