『ぼくたちは勉強ができない』109話 感想、夢見た未来と変わらない原点!小美浪あすみが”なりたい自分”とは...!?
ぼく勉 問109 感想「砂上の妖精は[x]に明日を描く③」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『ぼく勉』を読了。
いやー、あしゅみー先輩の長編、実に面白いですね。色々な表情の先輩が見られて本当に最高です。彼女がこれまでにどんな想いを抱えながら頑張ってきたのか。その人となりや道のりがこれまで以上に情感を伴った形で描かれていて、今週も非常に心打たれる内容でした。
先週の段階では、「子供」から「大人」になっていこうとしている彼女が、「子供」の頃の思い出を胸に、「外の世界」への一歩を踏み出していく....という方向性のストーリーになっていくのかな...と考えていましたが、ちょっとわからなくなってきましたね。
彼女の「夢」・彼女が「なりたいもの」の本質は一体どこにあるのか。今週はその点を考えながらお話を振り返って参りましょう。
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このしんりょうじょは
あしゅみがまもるから!!
さて、そんなこんなで今週のお話は先輩の回想シーンから。
これまでにも描かれてきた通り、彼女の原点はこの「診療所」にありました。規模は小さくとも、いつも患者さんたちの笑顔で溢れていたその場所。その思い出の場所こそが、何を以ってしても代替不可能な、これまでの彼女にとっての”全て”だったのです。
憧れの父のように「患者に寄り添える医者」になりたくて...。遠くの地で活躍する母の代わりにその場所を守りたくて...。その想いがあったから、十余年間もの間、たとえそこにどれだけ辛いことがあっても、彼女は「医者」を目指して走り続けることができたわけです。
........なのに、それなのに、その道が今まさに閉ざされようとしている。子供の頃から目標としてきたゴール地点が目の前から消失しようとしているのです。であれば、今の彼女が自分の進むべき「明日」を描けないでいるのも無理からぬこと。
そんな状況の彼女に成幸くんが提案したのが「お医者さんごっこ」でした。
前回の感想でも触れましたが、この提案の目的は当然、「患者のための医者になりたい」という彼女の”夢”に今一度火を点けることですよね。
どうして、彼女は「医者」になりたいと思ったのか。また、現在のあすみ先輩が一番”なりたいと感じているモノ”はなんなのか。その本質に触れることで、彼女の「やりたいこと」に向かっていく気持ちを奮い立たせたい。これまでの成幸くんのスタンスを考えれば、そんな意図があることは疑う余地もありません。
そして、そういった背景を踏まえると、成幸くんが意図した通り、彼女は子供の頃から憧れ続け、ずっと思い描いてきた「医者」としての姿をきちんと示した...ということになるのでしょう。
幼い頃からずっと目標にしてきた父のように、患者さんひとりひとりに寄り添いながら診察を行うあすみ先輩のあり方。その先に広がっている患者さん達の笑顔を見ながら、彼女の脳裏にはこれまでの「思い出」が去来してくるわけですよね。
あぁ、この光景が自分の目指していた道なんだって。これこそが自分のやりたいと感じていたことだったんだって。「お医者さんごっこ」を通して、そういう想いを彼女に再確認してもらうことが成幸くんの目的の一つだったわけですから、その点に関しては成功していたと言えそうです。
なりたい自分を追い掛ける
しかしここで問題になっているのは、その想いをバネにもう一度「医者」を目指して走り出して欲しい...と背中を押したかった成幸くんの意に反して、先輩が彼の提案を「最後の思い出」作りとして捉えてしまっていることなんですよね。
自分の「夢」は、医者になることではなく、この小さな診療所の医者になることなんだと。自分にとってこの診療所こそが世界の全てなんだと。聴診器を当て、自分の胸に問いかけても、その答えは変わらない。だから、もう「なりたい自分も」「行きたい場所も」描けない。それが彼女の胸に残った想いでした。
この小さな診療所が アタシにとって世界の全てだった
ガキの頃からそれは今も 何も変わらないずっとだ
まぁ、これはもう、さもありなんというものでしょう。
だって、十余年間もの間、ずっと彼女はこの椅子に座る未来を描いてきたのですから。簡単に方向転換なんて出来るわけがありません。彼女にとって「なりたい自分」「行きたい場所」はここにある。憧れの場所で鼓動を早くしている彼女の姿が何よりもその想いを証明しています。
もちろん、お客さんが減っていて、診療所に明日がないことも頭では理解している。それでも彼女の心に灯った「夢」に対する想いは燃え尽きていないはずです。落ち込んで下向きになって諦めようとしているけれど、彼女の胸の内には「患者のための医者になりたい」という強い想いが確かに残っているわけですよね。
であれば、『ぼく勉』という作品は、「やりたいこと」に対する想いを「できない」と嘆く物語ではないのですから、やりたいことを追い掛けるためにはどうすればよいのかを考えることが正道でしょう。そして、その問いの先にある答えはもう一つしか残ってはいないはず。
そう、その答えこそが.....ベッドインでした...!
..........って、なんなんですかこの展開は...!笑
なんというか、流石にこの流れでこのシチュエーションは面白すぎるでしょう。もうここまで来たら、「最愛の星」編がそうであったように、自分の「気持ち」をお父さんに再度理解してもらう方向でお話が動いていくんじゃないかなぁ...とか思っていたのに、うーん、成幸くんは一体何を考えておられるのか.......笑。
文乃さんの時は大好きな星空を見上げることで、彼女に上を向いて貰おうとしていた彼ですけど、「お姫様抱っこ→ベッドイン」には一体どんな意図があるのでしょうね。先輩が「おおおおおお!?」と悲鳴を上げている点もかなり気になるところです。
かすみさんの存在と砂上の妖精が描く明日
さて。最後に、母・かすみさんについて少しばかり所見を。
上述したように、ここまでのストーリーの流れを見ると、やっぱりあしゅみー先輩の想いは診療所を継ぐことにこそありますので、テーマ的にも単に「診療所を諦める...」という方向には向かわないのではないか、というのが個人的な印象なのですが、一方で、成幸くんが「かすみさんの在り方」から何かしらヒントを得ているような雰囲気があるのも確かなんですよね。
「お医者さんごっこ」の一件を鑑みても、彼女にはもう確かに「両親から受け継いでいるもの」があるわけですから、診療所という「形に拘らなくとも」彼女の胸にはいつもこの診療所がある、だからもう大丈夫、という着地も十分に考えられる気はします。
ただ、「夢の実現」という物語のテーマを鑑みると、やはり何かしらの形で「診療所の存続」を方向に収束するのではないかなぁ...とは個人的に思ったりもするわけで...。ここら辺の落としどころが掴めないまま、2週間続きを読めないのが中々に歯痒い...というのが正直な感想なのですが、次回以降どうお話を纏めてくれるのか、筒井先生の御手腕に期待したいところです。
....というわけで、今週の感想を総括すると、
あしゅみー先輩の心音にも注目です!
次回のあしゅみー先輩の「心音(=ドキドキ)」に注目したい!ってことですよ。
今回は、キラキラしていた「あの頃の診療所を思い出して」胸の高鳴りが止まらなくなっていた彼女ですけど、これは、この長編の最後で成幸くんに対する恋のドキドキが鳴り響いてしまう事の前フリだったりするのでしょうか。
きっと、その時に描いているキャラが一番好きになるんでしょうね。
まぁ、今週のジャンプに掲載されていたインタビューを見るに、まだ筒井先生的には誰エンドにするのかを決めておられないようですから、今後、あしゅみー先輩が成幸くんに惹かれていく展開も可能性としては大いにありえるのでしょう。(筒井先生は文乃さんの2つ結びがお気に入り.....メモメモ)
もちろん、「恋」に大きく関わらなくとも、それぞれの「夢」を叶えていくことが『ぼく勉』という作品が内包している一大テーマなので、成幸くんに対して「恋」の矢印を向けない距離感で関係性を築いていくヒロインがいてもそれはそれで”スペシャル”な立ち位置にはなるのかなと思ったりもしますが。
いずれにせよ、ひとまずは、今回の長編が4話構成なのか、はたまた5話構成なのか、現時点ではどちらの可能性もありそうですので、2人の偽恋関係がどうなるのかも含め、次回以降のお話を楽しみにしたいですね。令和一発目の『ぼく勉』に期待しております!
<完結編>
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。