『五等分の花嫁』118話 感想:五月は何に気付きその気持ちをどう昇華させたのか
五等分の花嫁 最新話 感想 ネタバレ注意
五月のモヤモヤがテーマとなっていた前回の『五等分の花嫁』。
「五月の思い出」というサブタイトル(先週の感想でも指摘しましたがまたもや頭文字に「五」のつくサブタイトルがきていますね)のとおり、今回もまた五月の心情にスポットが当てられていました。
中野五月にとって上杉風太郎とは一体どういう存在なのか。気付いた気持ちと晴れていく心。思い出を連れて、これから先彼女たちが向き合っていく「未来」とは――。
そんな、6人の恋物語に確かな「意味」が提示されていた第118話のエピソード、早速振り返っていきたいと思います。
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第118話:五月の思い出
さて、お話は前回の続きからです。
風太郎と五月が隠れ潜む真っ暗な教室で再びの対話を果たすことになった四葉ちゃんと二乃。「誰が選ばれても祝福したかった」と語っていたはずの二乃がどうして四葉ちゃんに対して厳しい姿勢を取るのか。
そのあたりの理由が気になっていた中、この局面で二乃が「四葉ちゃんの抱えてきた後悔の象徴」に切り込んでいくところがまた趣深いですよね。
姉妹たちに何も言わずに突っ走り、一人自分の道を歩もうとした過去の四葉ちゃん。
そんなスタンスをずっと疎ましく思っていたという二乃の台詞が、自分らしさを求めて暴走し一つの大きな「失敗」を犯してしまった四葉ちゃんに重くのしかかる。
姉妹たちの想いを知りながら恋心を隠し続けてきたことも。五つ子の輪から一歩身を引き「支える側」として立ち回っていた四葉ちゃんが風太郎に選ばれたことも。失恋したばかりの二乃が受け入れるには、中々に重たい事実ではあるのかもしれない。
けれど、それでも「お付き合いを認めて欲しい」と四葉ちゃんが語るのは、この恋が自分と風太郎2人だけの問題だとは思っていないからなんですよね。
その意味において、この先のステップをどう進んでいくのか決めるのは他でもない風太郎と四葉ちゃんです。二乃が言っているように「私なんて無視して勝手に付き合えばいい」わけであって、そもそも第三者の許可が必要なことでもない。選ばれた側が選ばれなかった側に「認めてほしい」とお願いをすることが酷だというのも全くもってその通りだと思います。
ただ、それらを踏まえてなお向き合うことから逃げずに「認めて欲しい」と思えるのは、姉妹たちの想いを受け止める「覚悟」が四葉ちゃんの中で固まったからに他ならないわけですよ。
姉妹たちが風太郎と過ごしてきた「これまで」を無視せず、きちんとそこにあった思い出を受け止める。その上で「私が上杉さんをどれだけ好きなのか」「その想いの強さを」姉妹たちに認めてもらう。
たとえそれが何年・何十年という歳月を要する険しい「茨の道」であっても、姉妹たちの想いに負けないくらい強い想いが自分の中にあるんだってことを見ていてほしい。
風太郎に対する「好き」と姉妹たちに対する「好き」。
2つの「愛」を携え「永遠のライバル」である姉妹に譲れない想いをぶつける四葉ちゃんの姿。
そして、そんな四葉ちゃんからの宣戦布告に真っ向から立ち向かい、妹の「覚悟」を受け容れて一つの「区切り」をつけていく二乃。
数年後に控える「結婚式」を迎えた時、2人がこの日のやり取りを思い出して一体何を想うのか。
そんなことを妄想をしたくなる二乃と四葉ちゃんのお話でありました。
五月が気付いた気持ち
一方、四葉ちゃんと二乃のやり取りを通じてモヤモヤ状態から解放されることとなった五月。
2人の姿から彼女がどんな"気付き"を得たのかと言えば、おそらく以下の3点ですよね。
①上杉風太郎に"恋"をしていたこと
②その気持ちを否定する必要がないこと
③その"恋"が自分の未来をより輝かせてくれること
積み重ねてきた信頼と尊敬はいつしか「恋」と呼べる感情を連れてきて。そんな状態の自分にモヤモヤし「私は なんて悪い子なんでしょう...」と思えてきて...。
けれど、そうじゃない。これまで上杉くんと過ごしてきた時間もそこにあった「思い出」や「気持ち」も全部全部大切に抱えたまま進んでいけばよかったんだ。無視して否定する必要はない。それを「四葉」と「二乃」が教えてくれた。
失恋の痛みや切なささえも糧にして、「これまで」の思い出を「これから」に繋いでいく。
上杉くんと出会えたことに後悔なんてないのだから。結ばれたヒロインだけではなく、想いを結べなかった者たちの向こう側にある未来をも照らしていく「恋の記憶」。
そんな、何事にも代えがたい「宝物」をきちんと受け止めて、五月がどんな「女性」になっていくのか。
「恋愛」に否定的な意見を持っていた五月が紆余曲折の末に自身の感情を自覚し「勝ち負けを超えた恋愛の全てを肯定する」に至ったこと。とても胸に沁みる素晴らしい展開だったなと思います。
大切な思い出と御守りに込めた想い
さて。最後に気になった点についての言及を。
今回のお話で第42話以降長らく謎のままになっていた伏線が一つ回収されることになりました。
風太郎が家庭教師としての立場に自信を喪失していたあの日、五月(=零奈)が御守りの中に忍ばせていた彼宛のメッセージ。
結局、風太郎がその中身を知ることは最後までなかったわけですが、しかし文脈から類推すると「第7話で風太郎&らいはと一緒に撮ったプリクラ写真」をその中に入れていたと解釈するのがおそらく妥当ではありますよね。
「あなたは一人じゃない」という気持ちを込めて「ずっと友達」と書かれたそのプリクラを中に入れた。
そのプリクラは言わば「親愛」の証であり2人の関係を示すもの。「自分を認められるようになったらそれを開けて」と告げた上でそれを渡している以上、中に"対象となる物品"が入っていることが当然ながら大前提となる。
ただ、五月のスマホにも同様のプリクラが貼られていることから、少なくとも五月が2枚以上そのプリクラを持っていないとこの説は成り立たないんですよね……。
第7話を読み返すと五月がらいはから複数枚貰っているようには見えないので、この点はちょっと解釈に苦しむところではあるのかなと。
もちろん、本筋は「恋の記憶=一生の宝物」という構造を補強するための暗喩表現だと思うので、その点さえ描ければ後は読者のご想像にお任せしますってことでも僕は十分だと思ったりはしていますが。
似た者同士の風太郎と五月が、悩みながらも見つけたそれぞれの恋。切なさを感じつつも立派にヒロインしていた五月の成長に感慨深くなる回でした。残るお話もあとわずかになってきましたが、次週も楽しみにしております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『五等分の花嫁』/春場ねぎ/週刊少年マガジン」より引用しております。