ぼく勉 問114 感想「機械仕掛けの蛍は[x]の淡雪に焦がる①」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ注意
今週の『ぼく勉』を読了。
ついにクリスマスが到来しました。そして、このタイミングで満を持して描かれるのが理珠ちんの長編エピソードであります。なるほど...。文乃さんスキーたちが待ち焦がれていた「成幸くん&文乃さん クリスマスデート計画」の野望はここで潰えたわけですか....。
「林間学校」のファーストキスに始まり、「文化祭」でも成幸くんと一緒にいる時間が多かったですし、何だかんだで理珠ちんって、キッチリ要所をおさえてくる印象があるんですよね。
もちろん、それが結末にどう影響するのかという話ではありませんが、1年に一度きり(=高3スタートの『ぼく勉』では事実上一度きり)のイベントで大事な役どころを果たしてくれる彼女が、このクリスマスを通して一体どんな成長を遂げていくのか。今回はそんな期待感を持ちつつ、お話を振り返っていきたいと思います。
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ぼく勉 114話:機械仕掛けの蛍は[x]の淡雪に焦がる①
さて、今回もまたいつも通りサブタイトルから目を向けていきましょう。
機械仕掛けの蛍は[x]の淡雪に焦がる①
これが今回の長編のサブタイトル。
"蛍"と"雪”を絡めているあたり、「蛍雪」をキーワードにしていることがわかりますが、同時に「焦がる」というワードも気になります。機械仕掛けの蛍(=理珠ちん)が[x]の淡雪に焦がるという構図。中々に意味深ですよね。
まぁ、彼女が焦がれているものは一体何なのか、というところをこれまでの物語から推し量るなら当然、「他人の気持ちを理解すること」でしょう。人の感情に疎いがゆえに人付き合いが苦手。そんな自分に彼女が悩みを抱えていた事は今までのお話でも繰り返し描かれてきた通りです。
そういった事情を踏まえるとやはり気になってくるのは、文乃さんと理珠ちんが友達になった経緯ですよね。
二人が初めて出会ったのは「高1の春」。教育係(=真冬先生)をつける....という理由で学園長室に呼び出されたことをキッカケに2人は知り合ったわけですが、「人付き合いが苦手」な理珠ちんがそのまま文乃さんと仲良しになれたのかというと、きっとそうではなかったのでしょう。
文乃さんが「昔は色々あったよねー!」と言っていることを鑑みても、2人の間にもちょっとしたディスコミュニケーションや距離感が発生していた可能性はありそうだなぁ...と。
まぁ、高1の冬には既にお店の宣伝を手伝うくらいの仲になっているところからして、そのあたりのハードルもそう長く続くものではなかったのだとは思いますが、このタイミングで掘り起こされているあたり、おそらくこの長編における一つのキーにはなってきそうですね。
同じ「天才」でありながら、正反対の分野に秀でていた2人。それでも彼女達は、同じ想いを持つ者同士として「理解者」になりあえる2人でもある。もしかしたら理珠ちんは、人の感情の機微に聡い文乃さんに羨ましさを感じていたのかもしれない。
いずれにせよ、お互いがお互いのないものを持っている2人ですから、「特別さ」を感じるのはさもありなんという感じではあります。2人の過去がどういう風に描かれるのか楽しみですね。
理珠ちんの祖母とクリスマス
また、今回のお話におけるもう一つの注目ポイントとしてはやはり、彼女の「祖母の存在」でしょうか。
毎年、クリスマスになると手作りのボードゲームを贈ってくれたというお祖母ちゃん。もうだいぶ前に他界してしまっているとのことですが、クリスマスコスの衣装もお祖母ちゃんの手作りをずっと修繕して使ってきたのだとか。
きっと、ボードゲームに多大な興味を持ったこともお祖母ちゃんからの影響なのでしょうし、理珠ちんがお祖母ちゃん大好きっ子だったことが垣間見える、何ともジーンとくるお話ですよね。
そんなお祖母ちゃんが作ってくれた「宝物」を成幸くんに見せる理珠ちん。
彼女曰く、「これを見せるのは文乃以外では成幸さんが初めてです」とのことですが、これはもう要するに、彼女にとって成幸くんがそれだけ「特別な存在」になっているということの表れに他ならないわけです。
大切なお祖母ちゃんのことを大切な人に知って欲しい。自ら前のめりになって自分の「気持ち」を語る。そこに、緒方理珠の「好き」がある。
ああそのことでしたら
成幸さんと2人きりになりたかっただけです
そんな流れで放たれるこのセリフ。あまりにも破壊力が高すぎるというものですよ...。
問103のエピソードにおいても、自分の"気持ち"を自覚したうえで「意識的に」その意志を前に出しながらも隠していた彼女ですが、今回もまた同じ構図でしたよね。
「2人きりになりたかった」という本心と「なーんて冗談です」というごまかし。そして、「私も好きです 好き....なのだと思います」と言いつつも「皆さんのことが」と語尾に付け加える言い回し。
こういう一連の描写にも彼女が「感情」というものを理解し、そこに発生している「恋心」に様々な想いを巡らせている様子がわかる。
そういう文脈を考えれば、「感情が理解できない」という彼女の悩みは少しずつ克服・改善がなされているようにも見えるでしょう。
しかし、彼女はなおも「私は...私が嫌いです」と語っているんですよね。
なぜ、自分の周りにいる人達はこんなにも自分によくしてくれるのか。そこに嬉しさを感じ、自分もそんな人たちのことを「好き...なのだと思います」と感じている彼女ですけれど、一方で、もしかしたら彼女は、素敵な友人達に対してある種の負い目や引け目を感じてもいるのかもしれません。
空気が読めずに人付き合いが上手くいかなかった自分。感情の機微に疎く、相手の気持ちを汲み取った上でのコミュニケーションが苦手な自分。そんな過去の様々な失敗が彼女の「自己肯定感の低さ(=私は...私が嫌いです)」のルーツだったわけですが、同時に、人の感情を少しずつ理解出来るようになったことで見えてきた戸惑いがあるのかなと。
そんな背景を想像すると、お祖母ちゃんとの思い出や文乃さんとの出会い、つまりは彼女の過去 (=ルーツ) がキーになっていくのも個人的に頷けるような気はしますね。
もちろん、まだ詳細な部分は推測の範囲を出ませんが、いずれにしてもこの長編は、彼女が「友達」という存在に対して抱いている感情を一つ高いステップにあげるお話になるのではないでしょうか。
...というわけで今週の感想をまとめると、
サンタコスの文乃さん可愛すぎる問題!
サンタコスの文乃さんが最高に可愛かったなってことですよ!
クリスマスデート計画は無念にも潰えてしまいましたが、理珠ちんのエピソードを通して文乃さんとの出会いも描かれていきそうですし、来週も非常に楽しみですね。果たして「恋心」の進展にも繋がる長編になるのか。全力で注目しております。
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。