ぼく勉 問74 感想「時に前任者は艱難たる[x]にも閲するものである」
『ぼくたちは勉強ができない』 最新話 感想 ネタバレ
今週の『ぼく勉』は真冬先生回です!文化祭編が終わってから「理珠ちん→あしゅみー先輩→うるか→文乃さん」ときていたので、ここで真冬先生のターンが回ってくるのは順当でしょう。
で、今週の真冬先生はどんなトラブル事を抱えているのかと思えば、家庭科の先生の代打で調理実習の授業を受け持つことになりました。
そして、見兼ねた成くんが真冬先生のサポート役としてお家で一緒に料理をすることになるというね。もはや当たり前のように真冬先生宅で2人きりになる流れへお話が展開されていくのが凄いですわ...。これが真冬先生回クオリティですよ!
とはいえ、これもまた作品のテーマを考えると面白いのかもしれません。
真冬先生の自宅(=内側)は彼女の「できない」部分が詰まっている場所であり、そこに踏み込むことは、周囲(=外部)から「天才」「完璧」と思われている真冬先生の内側を知っていくことでもありますからね。
「努力」の人である成くんが、「天才」の内側を知り、また「天才」であり孤高の人であった真冬先生が、「できない」自分を認め「誰かと補い合うこと」のできる成くんの考え方に惹かれていく。
異なる教育論を掲げてきた2人が少しずつお互いの距離を縮めていくまでの軌跡。それこそが真冬先生エピソードのキモでしょう。
桐須真冬先生と唯我成幸の想いが交じわる点。そこにこそ「才能」と「努力」を題材にしている『ぼく勉』という作品の一つの終着点があるのだと思います。
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真冬先生のお部屋でLet's cooking!
さて、今週のお話は真冬先生と成くんが一緒にハンバーグを作るところから始まっていくのですが、のっけからフリフリのエプロン姿を披露してくれるとはさすが真冬先生じゃないですか...!毎度「それしか」残っていないお店に突撃する成くんの手腕にも驚愕の念を禁じ得ません。
やっぱりね、真冬先生はずるいと思うんです。冒頭でも言いましたが、まず主戦場が「自宅」というのが強すぎる。年頃の男子にとって、年上の美人お姉さんのお家に行くってのはもうそれだけで「夢」の体現みたいなもんですからね。
言ってしまえば、もうここがラフテルですよ。真冬宅 is ラフテル。部屋には色々なものが散らばっていて実際に「大秘宝(=ブラジャー)」も見つかりましたし、作中で未だその真の姿を知っているのは歴史上でも(多分)成くんだけ。少年読者たちが真冬先生に憧れるのも真理というものでしょう。
し・か・も!
この破壊力ときたもんです。
もはや語彙力が粉砕されるほどのニヤニヤシチュエーション過ぎて読者と成くんの頬が緩む緩む。もうこんなん夫婦じゃん!何で付き合っていないのか不思議なレベルだって。そりゃ美春さんも勘違いするっつーの!
「自然と自宅へ招く」→「手料理(と判定できるかはともかく)を振る舞う」→「髪を結ってくれ」→「共同作業でクッキング」という鮮やかすぎる連コンボを前に年上ヒロインの完成形を垣間見た気がしました。これが真の愉悦か!
年上のヒロインが最後にたどり着く2つの秘伝奥義「①自分の魅力を理解したうえでからかってくる、②無自覚に無防備に大人の女性の魅力を押し出してくる」のうちの②を今週の真冬先生は完全に会得しておりました。
ふむ。やはり真冬先生もまた、許されたヒロインにしか踏み入ることの出来ない究極の聖域へ到達した大天使と言えるのかもしれません。真冬先生のおかげで「新世界」(=年上好き)への扉を開くことになった少年たちが果たしてどれくらいいるのか。わたし、気になります!
努力と才能の交点
というわけで、今週は成くんと真冬先生のイチャイチャ具合が輝いていたお話であるわけですが、物語的には『真冬先生の努力』が印象的に描かれていたこともポイントの一つだと思います。
というのも、前提として「学生」の間って「できない」ことが許されるんです。むしろ、学生というのは「未熟→成長」というプロセスを経る象徴的な存在。3人の「高校生」ヒロインたちや「浪人生」のあしゅみー先輩が「できない」ことに立ち向かっている姿を大々的に描いていることからもそれは明らかでしょう。
しかし、「先生」という職業は基本的には「できる」ことを求められます。たとえば、プロ野球選手が一日素振りを500回やってたとして、それは確かに凄い「努力」だけれど、それを評価してくれる人って案外少ないのです。結局、結果という形で「できる」かどうかが全てになってくる。
実際の高校生が「先生」に対してどういうイメージを持つかはそれぞれでしょうけれど、一般的に言えば「先生」は模範となるべき存在と言えますよね。ゆえに、できて当たり前という評価をされてしまう存在なわけです。
そして、成くんが真冬先生を通して、そういった「教師」の裏側(=努力)を知ることになっていくのは作品として非常に興味深いじゃないですか。
今週のお話の冒頭では、他の教師陣から「さすが桐須先生」と言われ、最後に他の生徒たちから「完璧超人」と評価されている真冬先生だけど、その背景には真冬先生なりの「努力」がきちんとあるのです。それはまた、真冬先生にとって「教師」という道が、彼女の努力の末にたどり着いたものであることの証明でもあるのでしょう。
だからこそ、「努力」の人である成くんと「才能と努力」を知っている真冬先生の2人が織り成す物語には深みが生まれるんだと思います。決して交わらないはずの平行線だった2人が少しずつお互いのことを知り、その努力を知って、徐々にお互いの価値観に向き合っていく。その軌跡が本当に素晴らしい。
以前の感想でも言いましたが、きっと「教育係」としての経験や桐須真冬という人の考え方に触れることで、唯我成幸の目指す道は「教師」になっていくのでしょうし、「過去(=才能)」への後悔があった真冬先生も彼の姿を通して、自身の道(=努力)を肯定できるようになっていくんだと思います。やはりこの関係性がたまらなく好きですわ...。
真冬先生にとって「教師」という道が正しかったのかどうか。その答えはもう、このセリフに込められていると言っていいのかもしれません。
時間や機会の「有限性」。それを最も良く知っているのは真冬先生なのですから。過去に彼女が抱いてきた後悔が、今の桐須真冬先生という「教師」のあり方を支えている。そして、そのあり方に惹かれて「教師」という道を目指す生徒が彼女の前に現れるのでしょう。
それこそが真冬先生関連のエピソードの最終到達点になるのかもしれません。成くんの考えを受け容れて、少しずつ変化を見せる真冬先生の今後に期待したいですね!
というわけで、今週の感想を総括すると......
ハンバーグをぺたぺたする真冬先生が最高にエッチだったな!ってことです。ふぅ...。やっぱり筒井先生は最高ですわ!
髪を「結う」というのも、もしかしたら将来2人が「結ばれる」ことの暗示なのかもしれんな。そういう素敵解釈もアリってことで!
誰と結ばれるのかというラブコメ的な要素はもちろん、主人公・唯我成幸の進路という人生論的な要素でも楽しめる真冬先生回。今後の展開にもとても注目です!
※本記事にて掲載されている情報物は「『ぼくたちは勉強ができない』/筒井大志/週刊少年ジャンプ」より引用しております。